相続財産管理人日誌27

今回も本ブログをご覧いただき、ありがとうございます。

 

弁護士の鳥光でございます。

 

相続財産管理人についての27回目の記事となります。

 

今回は、被相続人の債務に関する調査についてです。

 

相続財産管理人の業務において、相続債務の調査方法は2つあります。

 

1つは、知れたる債権者に対するものです。

 

これは、被相続人の遺品などから判明する債務です。

 

例えば、被相続人の自宅の郵便ポストに、未払いの公共料金の請求書が入っている場合、請求元の電力会社やガス会社などに残債の金額を照会することで、債務の存在と債務額が判明します。

 

具体的な請求書がない場合でも、国税(被相続人の住所地を管轄する税務署)、住民税・固定資産税・都市計画税等(被相続人の住所地を管轄する市役所等)、国民健康保険・国民年金等(被相続人の住所地を管轄する市役所・年金事務所等)には照会を行い、滞納がないかは確認します。

 

併せて、逆に還付金の有無も確認し、有る場合には相続財産として回収します。

 

2つめは、相続債権者に対する請求の公告を行った際に、届け出によって判明する債務です。

 

被相続人の自宅等から発見した資料のみでは判明しない債務については、この方法によって調査をします。

 

相続財産管理人が選任されるケースのうち、被相続人が債務超過に陥っていた場合、債務の調査は特に重要になります。

 

債務超過ケースは、相続人がもともと不在ということは少なく、たいていは相続人が存在していたものの、全員が相続放棄をしています。

 

相続放棄に至る過程において、相続人は、被相続人宛ての貸金業者等からの請求書等を発見しています。

 

そのため、通常、一部の債務は判明します。

 

自宅不動産に抵当権が設定されていることもあるので、乙区を見ることで債権者がわかることもあります。

 

場合によっては、CICやJICCへ問い合わせ、債権者を調査することもあります。

相続財産管理人日誌26

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相続財産管理人業務に関する、26回目の記事となります。

 

今回は、建物売却までの間の火災保険加入についてです。

 

相続財産の中に、自宅建物が含まれている場合、売却換価までの間は、現状を維持する必要があります。

 

特に特別縁故者が存在する可能性がある場合、1年以上、自宅建物の換価をしないというケースもあります。

 

建物周辺に燃えやすい廃棄物があったり、乾燥する時期をまたいだりする場合、火災が生じる可能性も否めません。

 

火災が起き、近隣の住民の方などに被害が生じた場合、損害賠償責任が発生することも考えられます。

 

そこで、売却換価するまでの間、火災保険に加入するという対応をすることがあります。

 

被相続人の資産がそれなりにある場合で、かつ死亡からあまり時間が経っていない場合、もともと加入していた火災保険の期間が続いていることもあります。

 

この場合には、保険加入者の名義を相続財産管理人に変更するという手続きをとります。

 

被相続人が債務超過の状態であるなど、自宅不動産以外にめぼしい財産がない場合や、被相続人死亡から長期間が経過している場合、火災保険に加入していない(または保険期間が切れている)ことがあります。

 

この場合には、改めて相続財産管理人による火災保険加入が必要になることもあります。

 

なお、保険会社側としては、相続人不存在となっている空き家を対象とする火災保険は、極めて稀なケースです。

 

そのため、例外的な審査等が必要になることがありますので、保険会社等の窓口担当者の方へ、しっかりとした情報提供をすることが大切です。

相続財産管理人日誌25

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今回は、相続財産管理人の業務についての25回目の記事となります。

 

前回の空き家の売却に関連し、売却までの間の空き家の管理についてお話しします。

 

近年では、市町村等が空き家の管理のために相続財産管理人の選任を申立てるケースも増えており、この場合には自宅不動産が相続財産に含まれる形になります。

 

債務超過ケースでない場合、自宅不動産を売却するまでは、相続財産管理人の選任から1年以上かかることもあります。

 

この間、相続財産管理人は不動産が傷んだり、近隣の方に迷惑が掛からないように管理する必要があります。

 

特に春~夏にかけては、気温が上昇し、敷地内に雑草等が増えます。

 

虫が発生することもあります。

 

また、梅雨やゲリラ豪雨、台風などによって家屋にダメージが発生することもあります。

 

そのため、私は6月あたりからは、頻繁に不動産を訪れ、状況の確認をします。

 

特に気を付けていることは、虫の発生です。

 

具体的には、蜂と毛虫です。

 

いずれも、刺されたり触れたりすると、人体に悪影響があります。

 

近隣の方に迷惑がかかってはいけないので、発見したら駆除する必要があります。

 

調査中に自分が虫に襲われる可能性もあるため、たとえ夏であっても、長袖長ズボン、手袋、帽子を装着します(幸いコロナ禍の影響もあり、マスクもしているので、顔も覆えます)。

 

殺虫剤も持参していきますが、蜂が相手の場合は吹きかけません。

 

近くに蜂の巣があると、殺虫剤に刺激されて大群で襲われる可能性もあるためです。

 

蜂の巣があった場合は、門塀にその旨を示し、近隣の方に注意を促すとともに、専門業者等に連絡して駆除します。

相続財産管理人日誌24

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相続財産管理人の業務についての24回目の記事となります。

 

今回は、空き家の処分の方針についてです。

 

相続人不在となった相続財産の内容は、ケースバイケースであり、全く同じものは存在しません。

 

もっとも、相続財産管理人が選任選任されるケースは、類型的には、不動産、特に空き家が存在していることが多いと思われます。

 

近年では、市町村が空き家問題対策のため、相続財産管理人選任の申立てをすることもあります。

 

空き家処分の方法、時期について、明確な決まりはありません。

 

基本的には、売却、換価し、売却金の中から管理費用等を控除して、最終的には国庫へ納めるという形になります。

 

売却時期については、特別縁故者が存在する可能性が見込まれる場合には、特別縁故者の申出期間が完了するまで、空き家を売却しないということもあります。

 

特別縁故者が家屋の取得を希望する場合があるためです。

 

売却の方法についても、様々な方針が考えられます。

 

いわゆるゴミ屋敷のように、汚損が酷く、空き屋以外の財産からは清掃費用が捻出できないような場合は、現状有姿で売却するということが考えられます。

 

当然売却価格は下がりますが、高額な清掃費用の負担がなくなるので、結論としては回収できる金額に大きな差は生じないという理論になります。

 

買い手についても、検討が必要です。

 

一般的には、より良い条件で売却するために、宅建業者の方に依頼して、広く買い手を募ります。

 

もっとも、住宅地にある空き屋については、隣地の方が購入を希望することが多々あります。

 

そのため、隣地の方にお声がけすることもあります(裁判所によっては、これを推奨していることもあります)。

相続財産管理人日誌23

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弁護士の鳥光です。

 

相続財産管理人の業務の23回目の記事は、相続財産管理人選任申立て時の財産調査についてです。

 

被相続人の自宅に入ることができるなど、ある程度被相続人の財産に関する情報の調査ができる場合、最低限、現金、預貯金、(ある場合)不動産、負債の情報を裏付ける資料を探します。

 

現金については、まず財布があれば、その中身を見ます。

 

卓上金庫などがある場合、空けることができるのであれば、現金がないか確認します。

 

預貯金については、通帳、カードを探し、被相続人が口座を有している可能性のある銀行を割り出します。

 

残高については、申立時のものが取得できれば良いに越したことはありませんが、あまり重要ではありません。

 

通帳の最終記帳日が古い場合は、金融機関によっては、相続財産管理人でないと記帳できないということもあります。

 

不動産については、権利証等があれば良いですが、無い場合には住所から地番を調査し、登記を取得することができます。

 

負債については、被相続人の家に貸金業者等からの請求書がないか調べます。

 

ある程度預貯金がある場合、滞納状態にならずに銀行引き落としになっていることもあります。

 

CIC、JICCの調査まで行えれば良いですが、相続人が不在の場合には困難であると考えられます。

 

また、水道光熱費、通信費に関する情報もあれば、取得しておきます。

 

そのほか、自動車を持っていることが明らかである場合、車検証や購入時の契約書などを探します。

相続財産管理人日誌22

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22回目の相続財産管理人の業務の記事は、相続財産管理人選任申立てについてです。

 

相続財産管理人は、被相続人の利害関係人により、管轄の家庭裁判所に対して、相続財産管理人選任申立てを行うことによって選任されます。

 

申立ての際には、申立書のほか、戸籍謄本類や、被相続人の財産・負債の一覧表(目録)を提出します。

 

被相続人の財産・負債については、判明している限りで問題ありませんが、できるだけ詳細に調査、一覧化した方が、相続財産管理人選任後の処理が円滑に進みます。

 

私が申立代理人となる場合には、依頼者の方から、お持ちの資料等を(差し支えない範囲で)すべてご提供いただき、可能な限り財産・負債状況を整理してから申立てを行います。

 

この方が、相続財産管理人が選任された後、最終的な解決までの時間を短縮できる可能性が高まるためです。

 

もっとも、相続財産管理人選任申立てをする頃には、被相続人が死亡してから長い時間が経過してしまい、財産に関する情報が散逸していることもあります。

 

また、被相続人の自宅の鍵がなく、財産に関する情報の調査が困難であるということもあります。

 

特に、申立権者である利害関係人が、被相続人の親族でない場合(債権者や市町村など)には、このようなことが起きやすいです。

 

財産・負債の調査が難しい事情がある場合には、その旨を予め説明しておくと、円滑な初動対応ができるようになります。

相続財産管理人日誌21

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弁護士の鳥光でございます。

 

今回は、相続財産管理人の業務についての21回目の記事となります。

 

相続財産の調査や裁判所の手続きが一通り終わると、しばらくは、相続人とされる方が名乗り出るのを待つ等の期間があります。

 

その間も、財産の動き等がないかについては、注視が必要です。

 

不動産がある場合は、時折現場を確認し、必要な措置を行うべきです。

 

雑草などの植物が茂ってしまうと、近隣の方に迷惑がかかることがありますので、必要に応じて刈り取るなどの対応をします。

 

自宅など、建物がある場合、台風や地震などでダメージを受けることがあります。

 

破損個所がないか定期的に確認し、簡単な破損であればテープなどで補強する、大きな破損であれば業者を手配するなどの対応が必要です。

 

害虫の発生にも注意が必要です。

 

特に蜂や毛虫など、危険な虫が発生していないかを確認します。

 

私は、定期的に庭や家の中に殺虫剤を撒くようにしています。

 

もっとも、蜂がいることが明らかな場合については、殺虫剤をかけるとかえって危険であるため、専門の方に相談しています。

 

そのほか、玄関ドアや門などに、相続財産管理人の管理下にある旨の貼り紙等をしている場合は、汚損していれば取り替えます。

相続財産管理人日誌20

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弁護士の鳥光でございます。

 

今回は、相続財産管理人の業務についての20回目の記事となります。

 

前回に引き続き、祭祀財産等についてお話しします。

 

被相続人の方が遺されたお墓、お仏壇、ご位牌、ご遺骨等は、祭祀財産という枠で扱われるため、通常の相続財産とは性質が異なります。

 

これらの財産の面倒を見る方がいらっしゃらない場合、被相続人と関係があったお寺さんなどと相談し、墓じまいをする、永代供養をしてもらうなどの措置が必要になります。

 

もっとも、本来的には、これらにかかる費用は、相続財産から当然に支払うものではありません。

 

しかし、現実的には、祭祀財産を放置するわけにもいきません。

 

そこで、実務上は家庭裁判所と協議をし、可能であるならば相続財産から永代供養費等を支出する許可をもらうということもなされます。

 

被相続人のご自宅等を捜索し、お墓のあるお寺さん等の資料を探します。

 

資料が見つかったら、そのお寺さん等に連絡を取ります。

 

そこで、墓じまいができるか、永代供養はできるか等の相談をし、できる場合には費用等も聞きます。

 

あまりに費用が高い場合、裁判所の許可がおりなかったり、そもそも相続財産からでは賄えなかったりするので注意が必要です。

 

具体的な段取りが決まりましたら、見積書等をもらい、事情説明と合わせて、裁判所に対して、費用支出のための権限外行為許可審判申立てをするという流れになります。

相続財産管理人日誌19

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弁護士の鳥光でございます。

 

今回は、相続財産管理人の業務についての19回目の記事となります。

 

今回と次回に渡り、祭祀財産等についてお話しします。

 

相続財産管理人選任申立ての要件の一つに、相続人が不在であると考えられる場合というものがあります。

 

相続人が不在というのは、大まかに、法定相続人になり得る人がいないか、法定相続人がいたが全員相続放棄をした、という場合です。

 

法定相続人がいたケースにおいては、葬儀を済ませ、ご遺骨はお墓に安置されていることが多いです。

 

法定相続人がなり得る人がいないケースにおいては、孤独死などのことが多く、市町村等がご遺体の処理をされていることがあります。

 

このような場合、まずご遺骨の所在を確認しておく必要があります。

 

ご遺骨などの祭祀財産は、厳密には相続財産ではありません。

 

しかし、現実的には放置するわけにはいきませんので、相続財産管理人が最終的な措置をすることが多いです。

 

ご遺骨の所在が判明したら、預かっている人に連絡を取り、一旦引き取ることになります。

 

また、被相続人のご自宅に、ご先祖様やご親族様のお仏壇やご位牌があることもあります。

 

これらについても、ただちに無価値な動産として処分するわけにはいきませんので、措置を考える必要があります。

 

次回は、祭祀財産の処理について、説明します。

相続財産管理人日誌18

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弁護士の鳥光です。

 

相続財産管理人日誌第18回目は、不動産の境界確認についてです。

 

被相続人が土地を有していた場合、最終的には売却換価するか、どうしても買い手がつかない場合には国庫に納めるという形になります。

 

そして、債務超過ケースでなく、特別縁故者が存在する可能性が考えられる場合には、売却換価等の処分をするまで、相続財産管理人選任時から1年以上の期間を要することもあります。

 

その間、被相続人の土地と隣接する土地にも動きが生じることがあります。

 

具体的には、隣接する土地が売買されることがあり、その際に境界確認の依頼がなされることがあります。

 

具体的には、隣接する土地の関係者が土地家屋調査士に境界調査と確定を依頼し、その土地家屋調査士から相続財産管理人に対して、境界確認の依頼がなされます。

 

基本的には、スケジュール調整をして、現地に立ち会って境界の位置を確認します。

 

境界確認は、相続財産管理人側にもメリットがあります。 

 

将来的に、被相続人の土地を売却する場合には、境界確認に関する資料が必要になります。

 

被相続人の不動産が古いものである場合、家屋内等を捜索しても、境界確認書を発見できないことがあります。

 

売却前に調査することもありますが、時間も手間もかかります。

 

そこで、前もって隣地側の負担で境界確認をし、境界確認書を取得しておくことで、被相続人の土地の売却が円滑に進められます。

相続財産管理人日誌17

今回は、相続財産管理人日誌、第17回目となります。

 

相続財産管理人弁護士としての日々の活動を記していきます。

 

相続財産管理人に選任されると、裁判所より、相続財産管理人選任官報公告がなされます。

 

相続人や受遺者がいる場合、これを見て相続財産管理人に連絡をするということがあります。

 

一方、相続財産管理人側でも、受遺者(遺言によって財産を遺贈された人)がいないか、確認をしま

す。

 

なお、法定相続人に関しましては、相続財産管理人選任申立ての際、戸籍上の相続人がすべて不在であること、または相続人になり得る人がすべて相続放棄済であることを、資料を以て疎明されていますので、よほどのことがない限り、別に存在するということはありません。

 

受遺者は、通常、自筆証書遺言か、公正証書遺言によって指定されます。

 

まず自筆証書遺言については、基本的には自宅を捜索する以外の方法はありません。

 

もし他の人が持っている場合には、官報を見て名乗り出てくれることを待つしかありません。

 

公正証書遺言の場合、あまり古いものでなければ、公証役場にて検索が可能です。

 

まず、行きやすい公証役場に連絡をし、予約を取ります。

 

そして、相続財産管理人選任審判書、自身の身分証明書を用意し、公証役場で手続きをすれば公正証書遺言の検索ができます。

 

なお、公正証書遺言の検索は無料で行うことができます。

相続財産管理人日誌16

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相続財産管理人弁護士としての活動につきまして、第16回目のお題は、近隣の方とのコミュニケーションです。

 

相続財産管理人選任の申立てをした人が元相続人や親類の人である場合は、被相続人に関する情報を多く得られることが多いです。

 

逆に、申立人が元相続人や親類でない場合は、被相続人に関する情報があまり得られません。

 
具体的には、被相続人の債権者や、空き屋管理のために市町村等が相続財産管理人選任の申立てをした場合です。

 

そのような場合は、自宅訪問の際、近隣の住人の方へヒアリングをすることがあります。

 

私は、実際にこれを行ったことで、被相続人が自動車を保有していたことや、その所在地を知ることができました。

 

また、町内会長の連絡先を教えてもらえたことで、町会費の滞納があることも調査することができました。

 
そのほか、様々な資料のご提供もいただくことができたので、近隣の方との関係を良好に保つことはとても大切だと感じました。

 

近隣の方へいきなり声をかけると怖がられる可能性もありますので、相続財産管理人選任審判書のコピーや、弁護士の身分証明書等を手元に用意し、身分を明らかにしながらお話をするとスムーズにヒアリングができます。

相続財産管理人日誌15

今回は、相続財産管理人日誌、第15回目となります。

 

相続財産管理人弁護士としての、日々の体験談を記していきます。

 

相続財産の中に自宅建物がある場合、早いタイミングで捜索を行うことになります。

 

一番の目的は、相続財産に関する情報の調査です。

 

現金や通帳、株式・投資信託に関するレポート、保険証券、自動車の鍵や車検証、高価な動産(金のインゴットなど)、貸金業者との間の金銭消費貸借契約書、公共料金の請求書などを探します。

 

これらを手掛かりとして、財産目録の作成を開始します。

 

同時に、必要であれば清掃をします。

 

腐敗物がある場合は、処分が必要です。

 

私が捜索した家屋には、通電した冷蔵庫があったため、中身を処分しました。

 

また、水回り等には、殺虫剤を散布しておきます。

 

通電している場合は、万一の火災発生を防ぐため、ブレーカーを落とします。

 

電気をつけた方が捜索は楽ですが、ホコリ等に火が付くと非常に危険であるため、安全を優先します。

 

家屋を捜索する際、私は次の装備を持っていきます。

 

・ヘッドライト
・マスク
・軍手
・長袖長ズボン
・殺虫剤
・ゴミ袋
・貴重品を入れるための頑丈なビニールバッグ
・カメラ(スマホについているもの)
・ポケッタブルのバッグパック

 

基本的に、相続財産の家屋の中は暗いです。
ライトがないと捜索ができません。

 

ホコリが舞っていたり、カビが発生していることもあるため、マスクも必要です。

 

汚損している物や、危険物もあるため、軍手も必須です。

 

ケガや害虫被害を防ぐため、夏場でも長袖長ズボンを着用します。

 

殺虫剤も、訪れるたびにまいておいた方が良いです。
私は、購入した殺虫剤を、相続財産の家屋に置いています。

 

腐敗物等を廃棄するため、ゴミ袋を用意します。

 

通帳や現金、重要な書類など、汚損滅失を防ぐ必要がある物を持ち帰るため、頑丈なビニールバッグも用意します。

 

家財道具の情報を後で整理するためにも、家屋内部の様子をカメラで撮ります。
修繕が必要と考えられる破損個所がある場合は、その様子も撮っておけば、裁判所と相談する際にも役立ちます。

 

相続財産に関する資料は、想定以上に多くなることもありますので、折りたためるバッグパックも持っていきます。

相続財産管理人日誌14

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相続財産管理人弁護士としての活動日誌、第14回目は、裁判所との連絡についてです。

 

相続財産管理人に選任されると、通常選任の日から2か月後に、相続財産目録を作成し、被相続人の財産状況を報告しなければなりません。

 

もっとも、裁判所から示された指示に基づく報告のほかにも、随時連絡を取り合います。

 

特に選任されてすぐの時期は、急速に被相続人に関する情報が集まりますので、不明点が出た時には、即時に確認をする必要があります。

 

相続財産管理人が扱う財産は、すでにお亡くなりになっている方の財産であるため、事情がわからないものも多くあります。

 

そのため、扱いに迷う場合には、裁判所へ連絡し、処理について判断を仰ぐことも行います。

 

例えば、先日の記事でも紹介した、自宅の鍵の開扉、交換があります。

 

財産状況の調査や、不法侵入の防止のためという観点からは、保存行為と考えられ、権限外行為の許可審判を受ける必要はないとも考えられます。

 

他方、玄関の鍵という自宅建物の一部を破壊することを伴いますので、その意味では保存行為を超えているおそれもあります。

 

このような場合、裁判所へ確認し、権限外行為の許可の要否を尋ねます。

 

私のケースでは、保存行為となりました。

そのほか、被相続人の税金に関する通知が市役所等から届いた場合も、注意が必要です。

 

税金は課税時期が決まっておりますので、その時期によって相続債務なのか、相続開始後に発生した債務なのかが変わってきます。

 

相続債務は原則として、相続債権者に対する請求公告期間終了後に弁済(財産が少ない場合は配当)することになりますが、相続開始後の債務は、請求公告期間終了前でも、相続財産から支払います。

相続財産管理人日誌13

相続財産管理人日誌、第13回目です。

 

相続財産管理人弁護士としての日々の体験談を記していきます。

 

相続財産の中に自宅不動産が含まれ、かつ庭が存在する場合には、庭に入る門の施錠が必要になることがあります。

庭に第三者が入り込む可能性があるためです。

 

第三者といっても様々な方がいます。

不法に占有する人や、ごみ等を不法投棄する人が典型ですが、それ以外にもあり得ます。

 

都心ではあまりありませんが、地域のコミュニティのつながりが強い地域などでは、害意なく庭に入り込む方もいらっしゃいます。

中には、ご厚意で庭の掃除をしてくださっている方などもいらっしゃいます。

 

もちろん、それ自体は事実上は問題はありません。

もっとも、何か起きてしまっては、管理責任上の不備があったということにもなりかねません。

 

そこで、庭の門にも、当該不動産が相続財産管理人の管理下に置かれたため関係者以外の立入りをご遠慮いただく旨を記した看板などを設置するとともに、チェーンロック等で施錠をしておくのが得策です。
(補足しますと、管理者の承諾なく入ることは、建造物侵入罪に該当する可能性もあります)

相続財産管理人日誌12

本ブログをご覧いただき、誠にありがとうございます。

 

弁護士法人心の鳥光でございます。

 

相続財産管理人日誌第12回目は、自宅建物の鍵についてです。

 

申立人から提供してもらえるなど、自宅の鍵が入手できる場合には、これを用いて自宅建物に出入りします。
合鍵が存在しているか否かについても、確認が必要です。
許可していない人が侵入することは防ぐ必要があるためです。

 

問題となるのは、自宅の鍵が存在していないケースです。
もともと相続人がいない方が、外出中などにお亡くなりになると、警察が捜査したうえで、市役所などがご遺体を処理し、遺留品を保管します。
相続人がいない場合、一定期間経過すると遺留品が処分されます。
このようにして、自宅の鍵が滅失することがあります。

 

私が管理した家屋にも、このケースがありました。
自宅建物に入れないと、相続財産管理人としての業務遂行は極めて困難なので、鍵の開扉及び鍵交換(自宅内部に鍵がない場合)をする必要があります。
鍵の開扉と鍵交換は、保存行為とされるため、権限外行為の許可を得る必要はないとされますが、私は念のため裁判所へ確認もしました。
家屋の一部破壊を伴うためです。

 

鍵の開扉と交換は、専門の業者の方へ依頼するのが一般的です。
まずは開扉だけを行ってもらい、玄関を開けたら家の中を捜索します。
自宅の鍵が見つかれば、鍵交換が不要となることが多いためです。
(合鍵を持っている人が存在する可能性があるという観点からは、鍵を交換してしまった方が安全であるという考えもあります。)

 

鍵の開扉と交換は、それなりに費用がかかりますので、被相続人の預金解約が済んでいない場合は、一時的に立て替えたうえで、後日被相続人の預金をもって清算する流れになります。

 

私が鍵開扉、交換に立ち会ったのは真夏であったため、蚊に刺されるのを防ぐため、業者の方と一緒に虫よけスプレーをまいていました。
そうしたところ、玄関近くの物陰に蜂の巣が隠れており、虫よけスプレーに刺激されて20匹くらいの蜂が一気に出てきたことがあります。
非常に危険なので、被相続人の自宅不動産を訪れる場合には、害虫の有無の確認はとても重要です。

相続財産管理人日誌11

相続財産管理人日誌、第11回目です。

 

相続財産管理人弁護士としての日々の体験談を記していきます。

 

今回は、被相続人が有していた自宅不動産の取り扱いです。

 

なお、相続財産管理人の選任申立てがなされる場合、被相続人は不動産を有していることが多いです(そもそも、不動産の清算のために申し立てられることが多いためです)。

 

まずは、自宅不動産について、現地調査を行います。

 
ここでは一軒家を想定します。

 
外側から観察できる事項だけでも、少なくとも次のことを調べます。

 

・雑草や樹木が多い茂っていないか、隣家や道路にはみ出していないか
・占有者がいないか
・害虫がいないか(蜂の巣の有無など)
・家屋が傷んでいないか(倒壊の危険性、屋根や壁の穴の有無など)

 

相続財産管理人になると、原則として1年以上相続財産を管理することになりますので、近隣の方への影響も考える必要があります。

 

雑草や樹木がはみ出している場合は剪定をする必要がありますし、害虫がいる場合は駆除する必要もあります。

 
家屋に倒壊の危険性がある場合、売却までの間、最低限の補修をしておく必要があります。

 

私が管理した家屋には、蜂の巣ができておりました。

 
自宅の鍵がなかったため、鍵交換作業中に蜂の巣があることが発覚し、刺激しないように慎重に鍵交換作業を行った経験があります。

 
その後すぐに申立人と相談したところ、駆除してもらうことができましたが、場合によっては相続財産管理人が害虫駆除業者等を手配して駆除することも考えられます。

 

自宅建物の内部に入ったら、まずは次のことを行います。

 

・老朽化状況の確認(特に床板が腐っていないか)
・腐敗物、害虫の存在の有無の確認
・電気、ガス、水道が止まっているか否かの確認
・間取りの確認
・施錠状況の確認
・相続財産に関わる資料の捜索

 

古い家の場合、床板が老朽化していることがあります。

 
歩行中に床が抜けてしまうと大怪我をする可能性がありますので、場合によっては補強が必要になります。

 
そうでなくても、床に何が落ちているかわからないため、安全靴やワークブーツなど、頑丈な靴を用意していった方が無難です。

 

腐敗物がある場合、臭いがひどいと管理作業に悪影響があります。

 
また、害虫が発生します。

 
これらは早急に処分します。

 
私が管理した家屋には、通電している冷蔵庫が存在していたことがありましたので、中身を処分し、ブレーカーを落としたうえで、冷蔵庫の周りに殺虫剤をまきました。

 

間取りを確認すると同時に、部屋の写真を撮っておきます。

 
これは、後で家財道具を処分する際の目録を作成するために役立ちます。

 

玄関以外の窓、勝手口等について、施錠されているかを確認します。

 
空き家は空き巣の被害に遭うことが多いためです。

 
窓ガラスの場合、雨戸があれば雨戸も閉じておくとガラスを割って侵入されるリスクを低減できます。

 

これらのことを行ったうえで、現金、預金通帳や請求書など、相続財産に関わる資料の捜索を行います。

相続財産管理人日誌10

本日も、本ブログをご覧いただき、誠にありがとうございます。

 

相続財産管理人日誌第10回目となる今回は、預貯金以外の金融資産についてです。

 

被相続人の預貯金を解約し、相続財産管理人口座へ移行することと、被相続人の株式や投資信託の売却換価・保険の解約返戻金等を受け取ることは、一見似ています。

 

しかし、相続財産管理人業務としては大きな違いがあります。

 

預貯金の解約は、相続財産管理人の権限内の行為であるので、裁判所の許可が必要ありません。

 

一方で、株式や投資信託の売却、保険の解約返戻金等の受け取りは、権限外行為となりますので、裁判所に申立てをしたうえで、許可を得る必要があります。

 

証券会社や保険会社も、権限外行為許可審判書の提示を求めてきますので、失念する可能性は高くないとは思いますが、預貯金の解約に比べてプロセスが増えることに注意が必要です。

 

株式や投資信託の売却金を受け取るにあたり、証券会社に口座を作らなければならないことがあります。

 

この口座に一度入金され、その後で相続財産管理人口座へ送金するという流れになります。

 

また、保険の解約をし、解約返戻金等を受け取る場合は、保険会社によっては死亡診断書のコピーの提示を求めてきます。

 

申立人がこれを提供できる場合は良いのですが、そうでない場合は非常に厄介です。

 

死亡診断書を作成した病院が分かる場合は、その病院にコピーの提供をお願いするということもあります。

 

しかし、その病院すらわからない場合、被相続人の最後の本籍地を管轄する法務局に対し、死亡届記載事項証明書というものの発行を受けるほかありません。

 

この死亡届記載事項証明書は、申請すれば発行を受けられるというものではなく、民間の保険を受け取る目的では、原則として発行してもらえません。

 

そのため、裁判所に状況を説明して上申したうえで、事務連絡というものを発行してもらい、これを法務局に示すという手続きが必要です。

 

法務局としても極めて例外的な手続きになりますので、これでも死亡届記載事項証明書が発行できないという場合、裁判所からの嘱託によって発行するということもあり得ます。

相続財産管理人日誌9

相続財産管理人日誌、第9回目です。

 

相続財産管理人弁護士としての日々の体験談を、秘密の漏洩にならない範囲で紹介していきます。

 

相続財産管理人口座を作成し、被相続人の預貯金の存在が判明したら、次は預貯金の解約と、相続財産管理人口座への送金を行います。

 

この手続きも非常に時間がかかるため、早めに着手した方が良いです。

 

基本的には、相続財産管理人選任審判書、相続財産管理人の身分証明書、相続財産管理人印鑑証明書と印鑑、相続財産管理人口座の情報が最低限必要になります。

 

かなり例外的な手続きとなりますので、可能な限りは、窓口で金融機関の担当者の指示を仰ぎながら書類等を書く方が得策です。

 

多くの金融機関は、相続財産管理人の代理人でも手続きを認めてくれます。

 

その場合の書類(委任状)についても、事前に記載事項を確認しておくとよいです。

 

ゆうちょ銀行に被相続人の預金がある場合、解約後の送金は、同じゆうちょ銀行の口座にしかできません。

 

相続財産管理人口座がゆうちょ銀行以外である場合は、次の2つの方法で預金を移動します。

 

ひとつは、一旦証券をもらい、現金化したうえで、相続財産管理人口座へ預け入れをするというものです。

 

被相続人の預金が多額である場合、一時的に多額の現金を持ち歩かなければならないため、精神的な負担は大きいですし、実際に危険性もあります。

 

もうひとつは、ゆうちょ銀行にも口座を作る方法です。

 

お金の流れがわからなくなってしまうと危険ですので、ゆうちょ銀行においても相続財産管理人名義の口座を作り、一度この口座に被相続人の預金を移した後で、元々有している相続財産管理人口座へ送金するとよいです。

相続財産管理人日誌8

本ブログをご覧いただき、誠にありがとうございます。

 

相続財産管理人日誌第8回目は、預貯金等の金融資産の調査についてです。

 

相続財産管理人選任申立書には、財産目録という添付書類があります。

 
そして、財産目録に記載された財産を疎明する資料(預金通帳の写しや、株式・投資信託のレポートなど)も添付されます。

 

申立人が被相続人の財産について詳しく調査している場合は、財産目録によって、網羅的に大方の相続財産を把握することができます。

 

一方、諸事情により、申立人が被相続人の財産の情報をあまり入手できない場合もあります。

 
被相続人の自宅の鍵がない場合や、債権者等の利害関係者が申立人となる場合です。

 

このときは、金融資産の情報がほとんどない状態で申立がなされます。

 

このような場合、相続財産管理人は、ゼロから金融資産の情報を調査しなければなりません。

 

具体的には、次のステップを踏んで調べます。

 

1 被相続人の所持品、家屋の調査
被相続人が所有していた物を調べます。

 
遺留品を預かっている人がいれば、その人から遺留品を受け取ります。

 
また、基本的には、被相続人の自宅を訪問し、捜索を行います。

 
具体的には、預金通帳や、証券会社のレポート、保険証券・保険レポート等を探します。

 
(なお、預金通帳など重要な物については、相続人のいない被相続人が孤独死などをされていると、警察から市役所等に預けられ、相続人不在として処分されていることもあります)

 
これらにより、被相続人が資産をを有していたであろう金融機関が判明しますので、当該金融機関に対して、しらみつぶしに照会を行うという手順になります。

 

2 預金通帳等が一切見つからない場合
遺留品や自宅を捜索しても、預金通帳等が見つからない場合は、とても大変です。

 
一般的に、銀行口座を一つも持っていないという人は非常に稀です。

 
そのため、一応の調査を行う必要があります。

 
この場合は、まずゆうちょ銀行とメガバンクから照会をかけます。

 
お歳を召していた方であれば、ゆうちょ銀行に口座を持っていることは多いです。

 
また、被相続人が地方にお住いであった場合、自宅近くにある地銀や農協、信用金庫も当たってみるとよいです。