空き家活用の話8

今日も本ブログをご覧いただき、ありがとうございます。

 

弁護士・税理士の鳥光でございます。

 

所有者不明土地管理制度及び所有者不明建物管理制度にならび、管理不全土地管理制度及び管理不全建物管理制度も2023年(令和5年)4月1日より開始(施行)されました。

 

管理不全土地管理制度及び管理不全建物管理制度は、所有者による適切な管理が行われていないために、近隣に悪影響や危険を生じさせているまたは生じさせるおそれがある不動産について、裁判所が管理人を選任する制度です。

 

裁判所のWebサイトにも、管理不全土地(建物)管理命令の申立て等に関する書式が用意されています。

 

https://www.courts.go.jp/tokyo/saiban/vcmsFolder_1958/vcms_1958.html

 

申立てができるのは、利害関係人および地方公共団体の長等とされています。

 

なお、管理不全土地管理制度及び管理不全建物管理制度に基づく申立てがなされた場合、所有者の手続保障を図る観点から、原則として裁判所は土地・建物の所有者の陳述を聴かなければなりません。

 

管理人は、管理不全土地・建物の手入れや修繕等の保存行為及び管理不全土地・建物の性質を変えない範囲での賃貸等の利用行為、土地・建物の価値を高める改良行為について、裁判所の許可を得ずに行うことができます

 

土地・建物を処分する(処分行為)ときには、所有者不明土地管理制度及び所有者不明建物管理制度と同様、裁判所の許可を得ることが必要です。

 

特に、土地の売却や建物の取り壊しを行う場合には、裁判所が許可を出すための要件として、土地・建物の所有者の同意が必要とされています。

 

なお、先ほど、管理不全土地管理制度及び管理不全建物管理制度に基づく申立てがあった際は、裁判所は原則として所有者の陳述を聴かなければならいと説明しました。

 

その際、管理対象となる土地、建物に所有者が居住しており、管理人による管理行為を妨害することが明確に予想され、管理人による実効的な管理が期待できないような場合には、民事訴訟に基づく解決(所有権に基づく妨害排除請求や妨害予防請求などの物権的請求権の行使等)によって対応することが適切であると判断され、管理命令が発令されないということも考えられます。

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空き家活用の話7

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所有者不明土地管理制度及び所有者不明建物管理制度が、2023年(令和5年)4月1日より開始(施行)されました。

 

所有者不明土地管理制度は所有者不明となっている不動産について裁判所が管理人を選任する制度です。

 

裁判所のWebサイトにも、所有者不明土地(建物)管理命令の申立て等に関する書式が用意されています。

 

https://www.courts.go.jp/tokyo/saiban/vcmsFolder_1958/vcms_1958.html

 

所有者不明土地管理制度は、従来の相続財産管理(清算)制度や、不在者財産管理制度と異なり、「不動産単位」で管理を行うことが可能です。

 

現行の制度では対象となる人(不在者や被相続人)の全財産を管理することになるのに対し、所有者不明土地管理制度は特定の不動産のみを管理することができます。

 

申立ては、利害関係人および地方公共団体の長等とされています。

 

裁判所が申立てに基づいて選任した管理人には、管理対象の不動産と当該不動産にある動産の管理権限が与えられます。

 
そして、管理人は、管理対象の不動産の管理だけでなく、裁判所の許可を得て不動産の売却、建物の取り壊しなどの処分もできます。

 
不動産を不法に占拠する者がいた場合の明け渡し請求なども行えます。

 

もっとも、管理人が選任されるまでの審査の基準は、相続財産管理人(清算人)の選任の申立てに比べると、厳格なものであろうことが想定されます。

 

裁判所が用意している申立書等の書式を見ても、所有者の調査状況等についての報告書等の添付が必要であることからも明らかです。

 

相続財産管理人(清算人)の選任のときとは異なり、理論上は土地建物の所有者が存在しています。

 

その土地建物について、所有者以外の者に売却や取壊しの権限を与えるというのは、所有者に対する大きな権利制限を伴うことから、管理人選任のための審査が厳格になるのは当然のことでもあります。

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空き家活用の話6

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相続財産管理人制度に関わる、民法の一部を改正する法律が、令和5年4月1日に施行されました。

 

主要な変更点は、以下のとおりです。
特に官報公告の期間等については、大幅な変更が発生しますので、実務上の影響はかなりあると考えられます。

 

1 相続財産管理人の呼称が「相続財産清算人」に変更されます。

 

2 官報公告に関する規律に大きな変更があります。

 

現状では、以下の手続きを順次行う必要があり、権利関係の確定まで10か月以上要します。

 


家庭裁判所による相続財産管理人の選任公告

 


相続財産管理人による相続債権者、受遺者への請求申出の公告

 


相続財産管理人が家庭裁判所に申し立てて行う相続人捜索の公告

 

これが改正により、次のようになります。

 


相続人捜索の公告は家庭裁判所が職権で行う

 


相続財産清算人の選任公告と、相続人捜索の公告は同時に行う(最低6か月間)

 


相続財産清算人は、相続財産清算人選任公告と相続人捜索の公告後、相続債権者・受遺者への請求申出の公告を、最低2か月かつ相続財産清算人選任公告と相続人捜索の公告期間内に満了するように行う

 

上述の変更は、令和5年4月1日以後に相続財産清算人の選任審判が確定した事件に適用されます。

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空き家活用の話5

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今回は空き家の持ち主の探し方について、大まかなお話をします。

 

空き家は不動産なので、所有者の情報を調査するためには、まずは登記(不動産全部事項証明書)を見ることから始めます。

 

登記に記載された名義人が、必ずしも現在の所有者であるとは限りませんが、所有者を調査するための出発点としては重要な情報となります。

 

登記の甲区には、所有者等に関する情報が記されています。

 

ここで参照すべき情報は、所有者の氏名と住所です。

 

もし所有者の住所が、空き家の場所とは異なる場合、住所地を訪問するか、手紙を送付するなどして、空き家に関する用件を伝えてみます。

 

登記に記載された所有者の住所が空き家の場所と同じであった場合や、所有者の住所が空き家の場所と異なる場合であっても所有者と連絡が取れない場合、近隣住民の方にヒアリングをすることもあります。

 

登記の原因が「相続」ではない場合(「売買」など)や、「相続」であっても数十年前のことである場合、近隣住民の方へのヒアリングにより、登記名義人が死亡していることが判明するということもあります。

 

この場合、相続人を調査することになります。

 

ただし、相続人を調査する場合には戸籍謄本の取得が必要となります。

 

通常、被相続人の直系親族または配偶者でないと、被相続人(お亡くなりになった人)の戸籍謄本を取得することはできません。

 

空き家の樹木が自身の土地に越境しているなど、何らかの法的な権利に基づく請求をする場合であれば、専門家に依頼することで相続人にコンタクトできることもあります。

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空き家活用の話4

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今回は、空き家活用のお話しの4回目です。

 

先日、私が相続財産管理人として管理していた空き家の売却、引渡しをしました。

 

管理の対象であった空き家は、最後の住人がお亡くなりになってから10年以上手入れがされないままの状態でした。

 

塀が崩れていて周辺に被害を加える可能性がある、1階の窓が開いていたので不審者が侵入し住み着く可能性があるなど、近隣住民の方が不安を感じている空き家でした。

 

駅から遠くはないものの、敷地面積が狭く、家屋も非常に老朽化していたことに加え、家屋内も非常に汚損が進んでいたため、正直なところ好条件での売却は困難な空き家でした。

 

不動産業者様にご協力いただき、なんとか現状有姿で買い取ってくれる方を見つけることができました。

 

引渡しからしばらく経った後、管理していた空き家を見に行きました。

 

そうしたところ、すでに家屋は解体されていました。

 

これにより、倒壊や不審者による占有等の危険は解消し、近隣住民の方にもご安心いただくことができました。

 

最後の所有者がお亡くなりになり、誰も世話をすることができなくなってしまった空き家を生まれ変わらせることができるというのは、相続財産管理人の仕事の中でも、特にやりがいを感じる部分です。

 

ある程度発達している地域に限られるかもしれませんが、近年、自治体が空き家管理のために相続財産管理人の選任を申立てるケースも増えています。

 

私が相続財産管理人として選任されたのも、そのような申立てに基づくものです。

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空き家活用の話3

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空き家の売却を考える場合、法律面においても、多くの観点での検討が必要になります。

 

とても重要な検討事項のひとつが、契約不適合責任の扱いです。

 

契約不適合責任とは、あらかじめ目的物に対して取り決めた種類や品質、数量に関して、契約内容に適合しない引き渡しをおこなった場合につき、売主側で負担する責任のことをいいます。

 
契約不適合責任は、2020年4月施行の改正後民法で定められた制度です。

 

空き家の場合、一般的な一戸建て住宅の売却とは事情が異なり、現在の所有者が土地や建物に関する事情を把握していないことも多くあります。

 

特に元の持ち主が高齢者として何年も生活していたという経緯があったりすると、家屋内部が荒れ放題で、物で溢れかえっていることもあります。

 

現在の所有者が捜索をすることも難しく、家の構造や、隣接地との境界に関する書類なども、発見が困難な状態になっていることもあります。

 

さらに、長年放置されていた空き家の場合、老朽化が進み危険な状態になっている、育った樹木が越境している、ということもあります。

 

相続人ではなく、相続財産管理人が空き家を管理、処分する場合は、より事情を把握しにくい状況になります。

 

そこで、契約不適合責任を免責する条項を付して売却することもあります。

 

契約不適合責任を免責する場合、売却価格はどうしても下がる傾向にありますが、放置を続けていてもメリットはあまりありませんので、売れるうちに処分する方が良いと考えられます。

 

また、契約不適合責任を免責する条件での売買は、買主側がリスクを負担することになります。

 

そのため、現状有姿で空き家を買い取るノウハウ等を有している専門業者へ売却することも多く行われています。

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空き家活用の話2

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前回に続き、空き家活用について説明していきます。

 

いままで、ある土地・建物の所有者が理論上不存在ではなかったとしても、複雑な相続が発生するなど所有者の調査が困難であったり、所有者と連絡が取れない場合、原則としてその土地・建物の売却をし、他の方が利活用するということができませんでした。

 

所有者が不存在である土地・建物以上に、所有者が存在している土地・建物の処分は困難になることがあるのです。

 

所有者が存在しているがゆえに、当該所有者の売却等の意思表示が得られなければ、土地・建物の所有権を移転することができないためです。

 

令和5年4月1日施行となる、土地・建物に特化した財産管理制度のひとつに、所有者不明土地・建物の管理制度というものがあります。

 

これは、調査を尽くしても、所有者やその所在を知ることができない土地・建物について、利害関係人が地方裁判所に申し立てることによって、その土地・建物の管理を行う管理人の選任がなされるという制度です。

 

裁判所の許可を得ることで、管理人は、土地・建物の売却をすることができるとされているため、空き家の利活用に直接つながっていきます。

 

相続財産管理人の選任手続きと似ていますが、所有者が存在していてもよいこと、管理の対象が土地・建物に限定できるという点で異なります。

 

具体的な運用はこれからであるため、どのような事実と疎明資料があれば「調査を尽くしても、所有者やその所在を知ることができない」とされるか、および、どのような者が「利害関係者」にあたるか、については今後の実務の積み重ねによって確立されていくかと思います。

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空き家活用の話1

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弁護士・税理士の鳥光でございます。

 

社会一般、そして法律の世界においても、昨今空き家に関する話題をよく目にするようになりました。

 

人口減少による土地・家屋の需要減、資源再利用の風潮、都市部への人口集中を経てのリモートワーク環境の浸透などにより、空き家の活用に対する関心が活発化してきているのだと感じます。

 

空き家の属性にもいろいろあり、それに伴って分類の仕方も様々です。

 

ひとつの分類の仕方として、所有者が存在する空き家と、所有者不存在の空き家に分けるというものがあります。

 

所有者が存在する空き家は、さらに所有者が判明していて連絡が取れる空き家と、所有者が判明しない(調査が非常に大変)または所有者と連絡が取れない空き家に分けられます。

 

空き家の活用・再利用、または空き家を解体して宅地を再利用するという目的を達成するにあたり、最も対応が難しいのが、所有者が判明しない(調査が非常に大変)または所有者と連絡が取れない空き家です。

 

所有者不存在の空き家、すなわち所有者が死亡し相続人不存在となった空き家は、費用負担はあるものの、相続財産管理人の選任さえされれば前に進み、いずれ空き家の処分、清算がなされます。

 

所有者が判明していて連絡が取れる空き家は、所有者の意思に左右されるところはもちろんありますが、提示価格を上げる等により売却が進む可能性を上げることができます。

 

所有者が判明しない(調査が非常に大変)または所有者と連絡が取れない場合、相続財産管理人の選任はできず、かつ売却の交渉もできません。

 

この状態の空き家の活用は、事実上不可能に近いものでした。

 

しかし、所有者不明土地・建物を管理する制度が創設され、令和5年4月1日に施行されることになりました。

 

次回、この内容について触れたいと考えております

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相続税10

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今回は、相続税申告における、未成年者控除について説明します。

 

未成年者控除とは、相続人が未成年者である場合に、その未成年者の相続税額から一定の額を控除できるという制度です。

 

未成年者が成人に達するまでの養育費や教育費等を考慮し、税負担を軽減するという趣旨により設けられた制度です。

 

障害者控除と同じく、課税価格ではなく、相続税額から控除できるという点がポイントで、未成年者の年齢によっては、大きな相続税の軽減効果があります。

 

相続税額から控除される額は、18歳から相続開始時の年齢(1年未満の端数は切り捨て)を差し引いた数値に10万円を乗じた金額です。

 

未成年者控除が受けられる人は、次のすべてに当てはまる人です。

 


相続財産を取得した人が法定相続人であること(相続放棄があった場合には、その放棄がなかったものとした場合の相続人)

 


相続開始日に未成年者であること

 


無制限納税義務者であること。

 

そして、未成年者の相続税額が未成年者控除額より少ない場合には、控除不足額が生じます。
その場合には、不足額は、扶養義務者の相続税額から控除して納付することができます。

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相続税9

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相続税申告に関する、今回のテーマは、相続人に障害者がいる場合についてです。

 

相続人が障害者である場合、障害者控除が適用されることがあります。

 

障害者控除とは、相続人が85歳未満で障害者のときは、その障害者が満85歳になるまでの年数1年につき、10万円(特別障害者の場合20万円)で計算した額を相続税の額から控除できると言う制度です。

 
年数の計算にあたっては、1年未満の期間がある場合は、切り上げて1年として計算します。

 

相続財産の評価額からではなく、相続税の額から控除できるという点がポイントであり、大きな相続税の軽減効果があります。

 

障害者控除をうけることができるのは、以下のすべてに当てはまる人です。

 

1 相続財産を取得した時点で日本国内に住所があること

 

2 相続財産を取得した時点で障害者であること
上述のとおり、一般障害者と特別障害者で、控除額が変わります。
一般障害者は、身体障害者手帳上の障害等級3級~6級、精神障害者保健福祉手帳上の障害等級2級または3級、のいずれかです。
特別障害者は、身体障害者手帳上の障害等級が1級または2級、精神障害者保健福祉手帳上の障害等級が1級、のいずれかです。
相続税申告時に、疎明資料として、これらの手帳等の写しを税務署に提出します。

 

3 相続財産を取得した人が法定相続人であること

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