事業運営と消防用設備等4

弁護士・税理士の鳥光でございます。

 

本日も、本ブログをご覧いただきありがとうございます。

 

今回は、火災予防のための措置命令、立入検査、防火対象物に対する措置命令について説明します。

 

消防機関が法的権限に基づいて様々な措置や検査をすることができます。
その中でも重要なものとして、「火災予防のための措置命令」、「立入検査」、「防火対象物に対する措置命令」があります。

 

まず、火災予防のための措置命令は、消防機関が火災予防上危険と認められる行為をする者や、火災予防上危険と認められる物件、消火や避難などの消防活動の支障になると認められる物件の所有者等に対して、必要な改善措置を命じることができる制度です。
火災予防のための措置命令は、消防長、消防署長、消防吏員が発することができます。

 

次に立入検査は、消防機関が防火対象物の安全性を確保するために、建物内部の状況を確認する制度です。
個人住居への立入検査は、関係者の承諾を得た場合か、火災発生のおそれが著しく大きく、特に緊急の必要がある場合のみ可能です。
また、消防団員も立入検査は可能ですが、事前に消防対象物および期日または期間の指定が必要となります。

 

防火対象物に対する措置命令には2つの種類があります。
まず、防火対象物の位置、構造、設備、管理の状況が火災予防上危険であるような場合に、防火対象物の回収や除去などを命じるものです。
次に、上述の命令が履行されない場合には、防火対象物の使用禁止などを命じることができます。
防火対象物に対する措置命令は、消防長か消防署長が行うことができます。

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事業運営と消防用設備等3

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弁護士・税理士の鳥光でございます。

 

今回は、消防機関の種類と職員についてお話しします。

 

消防機関には、「消防本部(消防署)」と「消防団」に分けられます。
消防署は、消防本部の下部組織です。

 

まず、消防本部は、市町村が設置する消防機関です。
消防本部の長を消防庁、消防署の長を消防署長といいます。
消防本部や消防署の職員の中には、消防吏員(しょうぼうりいん)がいます。
消防吏員は、いわゆる消防士のことであり、地方公務員です。
消防長等は、火災予防に関する措置命令等の権限を持っています。
また、消防長、消防署長は、防火管理者が作成した消防計画の届出先にもなっています。

 

一方、消防団は非常勤の組織(一部常勤のこともあります)で、地域住民などの有志によって構成される消防機関です。
団員は消防団員と呼ばれ、普段は各自の本業である仕事をしながら、災害時や訓練、地域行事などで活動します。
消防長、消防署長、消防吏員と比べて、権限も制限されています。
例えば、火災予防のための措置命令や、防火対象物に対する措置命令の権限はなく、立入検査の際にも事前の消防対象物および期日または期間の指定が必要とされます。

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事業運営と消防用設備等2

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弁護士・税理士の鳥光でございます。

 

今回は、消火器を設置しなければならない防火対象物と、特定防火対象物について説明します。

 

消火器の設置義務については、防火対象物の種類や規模に応じて、設置基準が定められています。
特に「防火対象物」と「特定防火対象物」の区別は、消火器の設置義務を判断するうえで重要です。

 

まず防火対象物とは、火災が発生した場合に一定の被害が想定されるものであり、消防法施行令別表第1に定められています。
特定防火対象物は、防火対象物のうち、不特定多数の人が利用する施設や、避難に支援が必要な人が多く集まる施設を特に指定したものです。
たとえば、映画館、百貨店、旅館、飲食店、病院、老人ホーム、保育所などが該当します。
これらの施設では火災発生時のリスクが高いため、防火対象物の中でもより厳しい防火対策が求められます。

 

消火器の設置義務については、特定防火対象物であるかどうかによって設置基準が異なります(ただし、一部例外があります)。
たとえば、延べ面積が150㎡以上の特定防火対象物には、原則として消火器の設置が必要とされます。
これに対し、非特定防火対象物(たとえば一般の事務所や住宅など)では、基本的には300㎡以上の場合に設置義務が生じます(重要文化財、倉庫などの例外はあります)。

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事業運営と消防用設備等1

弁護士・税理士の鳥光です。
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士業を含め、建物などを使って事業を営む際には、防火に関わる様々な対応が必要とされます。
私自身、防火管理者講習を受講したうえで、防火管理者となっています。

 

法律に基づいた、定期的な消防用設備等の点検も行われています。
今回からは、防火、消防に関する知識や実務について、法律を交えながら紹介していきます。

 

まず、消防法に登場する「防火対象物」、「消防対象物」、「関係者」、「関係のある場所」という用語についてです。

 

① 防火対象物
「防火対象物とは、山林又は舟車、船きょ若しくはふ頭に繋留された船舶、建築物その他の工作物若しくはこれらに属する物」と定義されています。
火災予防の観点から、特に防火上の配慮が必要とされる建物や施設を指します。
劇場や遊技場、病院、ホテル、百貨店など、多くの人が利用し火災時に被害が拡大する恐れのある施設が該当します。

 

② 消防対象物
「消防対象物とは、山林又は舟車、船きよ若しくはふ頭に繋留された船舶、建築物その他の工作物又は物件」と定義されています。
消火活動の対象となるものが広く含まれますので、建築物以外の「物件」(例えば、家具や機材など)という表現がなされています。

 

③ 関係者
「防火対象物又は消防対象物の所有者、管理者又は占有者」と定義されています。
消防法では、関係者に対して、設備の設置、点検、報告などの義務を課しています。

 

④ 関係のある場所
「防火対象物又は消防対象物のある場所」と定義されています。
消防計画や避難計画を作成する際には、関係のある場所がどの範囲に及ぶかを考慮に入れる必要があります。

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区分所有建物と財産管理14

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弁護士・税理士の鳥光でございます。

 

前回に引き続き、一軒家と比較した場合の、相続人不存在区分所有建物の管理、処分するうえで注意すべき特徴についてお伝えします。

 

一軒家と比較した場合の、区分所有建物の特徴は次のとおりです。

 

①老朽化しにくく価格の下落が緩やか
②基本的に境界の問題はない
③バルコニーや玄関扉の一部など共用部分への配慮が必要
④管理の開始時や売却時などに管理組合への手続きが必要
⑤総会決議等への参加が必要

 

個体差もあると思いますが、区分所有建物は一軒家と比べ、外部と接している部分が少なく、共用部分は管理されていることから、老朽化しにくい傾向にあると感じます。
庭がないものも多く、擁壁もないため、価格が下落する要素が少ないです。
基本的に境界確定の問題もありません。

 

一軒家と異なる点のひとつに、共用部分への対応があります。
バルコニーに残置物がある場合、他の住民の方へのご迷惑にならないよう、撤去します。
玄関扉に対して何らかの作業をする場合には、場合によっては管理組合との調整が必要になるため、事前に管理規約の確認も行います。

 

相続財産清算人に選任されたことについては、管理組合へ伝え、必要な届出書類も提出します。
このようにすることで、管理組合と連絡を取り合えるようになります。
区分所有建物を売却する際にも、管理組合への届出が必要となるため、事前に必要書類の確認をしておきます。

 

売却するまでの間に総会が開催される場合には、基本的には議決権の行使をします。
(相続人不存在となった空き家の存在が引き起こす問題のひとつに、総会決議が行えないことがあります)
議題の内容が、相続財産の一部処分や大きな変更が発生するものである場合、事前に裁判所に確認をしたり、許可を得ることも必要と考えられます。

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区分所有建物と財産管理13

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弁護士・税理士の鳥光です。

 

相続人不存在となった空き家には、大きく分けて一軒家と区分所有建物があります。

 

今回と次回に渡り、それぞれについての管理、処分するうえで注意すべき特徴を、経験に基づいてお伝えしていきます。

 

まず、一軒家についてです。

 

ここでは、家屋とその敷地が、どちらも被相続人の所有であったものと仮定します。

区分所有建物と比較した場合の、一軒家の特徴は次のとおりです。

 

①家屋は古くて価値は低いことが多い(解体費がかかることも)
②隣地や道路との境界確定書を発見できないことがある
③庭がある場合には草木の手入れや害虫対策が必要
④宅地擁壁が老朽化していると売却価格が大きく下がることがある
⑤隣接している私道の所有権(共有持分権)がないか調査が必要

 

感覚的には、一軒家の方が価値が下がりやすい傾向にあると思われます。
特に、家屋が空き家になってから長期間が経過していると、屋根や壁、塀などが傷ついていて、再利用が困難です。
そのため、現実的には家屋の解体を前提とした、いわゆる古屋付き土地として売却することもあります。
更地にするための費用を織り込んだ売却価格となるため、土地自体の価格よりも低価格での売却になります。

 
盛り土がされていて、宅地擁壁がある場合には、より注意が必要です。
築年数が古い一軒家の場合、擁壁が崩れていることや、技術要件を満たさない擁壁であることがあります。
擁壁の修理や補強には大きな費用がかかることから、その費用を見込んだ売却価格はかなり低くなります。

 

一軒家を売却する場合、境界の確定は重要な要素となります。
家屋内部を捜索しても、隣地や道路との間の境界確定書が発見できないことがあります。
このような場合には、境界未確定のまま、価格を下げて売却することも考えます。

 

売却するまでの間の管理も、一軒家の方が労力を要する印象があります。
近年の一軒家の場合、敷地内の土の部分はすべてコンクリートでおおわれていることも多いですが、古くからある一軒家の場合は土が露出していることが多いです。
春夏を過ぎるたびに草木が覆い茂り、そこに蜂なども棲みつきます。
少なくとも売却するまでの間は、剪定や害虫駆除も必要です。

 

一軒家に隣接している道路が私道でないか、および私道である場合には所有している部分がないか(共有持分がないか)も確認しておく必要があります。
私道が相続財産に含まれていることに気付かないまま一軒家を売却し、その後相続財産清算人業務を終えてしまうと、私道が相続人不存在のままとなってしまうためです。

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区分所有建物と財産管理12

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弁護士・税理士の鳥光でございます。

 

先日、区分所有建物の自主管理に長年携わり、現場が抱える問題を詳しく知る方とお話をする機会がありました。

 

区分所有建物は、人口の急増に対応するために作られはじめ、現在2つの老い(建物の老朽化と、住民の高齢化)を迎えていること、現行の制度のもとでマンションを維持管理することは困難になりつつあることなどを聞きました。

 

このような話は、専門書や区分所有建物に関する記事などで読むことはありましたが、実際に現場で問題に直面している方から聞くのとでは、現実味が全く異なります。

 

本当に集会で決議をすることができないという事態が発生していることや、集会場で管理費の金額を巡って住民同士の激しい争いに発展する場合があること、マンション管理に関する相談や問題解決の依頼ができる先が少ないことなど、書物からだけでは得られないことをたくさん学ばせていただきました。

 

また、現状として、区分所有法などマンション管理に関する法規に詳しい人や、マンション管理業務に詳しい人はある程度いるが、相続人不存在などによって管理不全に陥っている区分所有建物への対応に詳しい専門家は、現状として比較的少ないということも知りました。

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区分所有建物と財産管理11

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弁護士・税理士の鳥光です。

 

今回は、NHKのクローズアップ現代で名付けられた「遺品部屋」についてです。

 

遺品部屋とは、居住者がお亡くなりになり、相続人がいない(相続人全員が相続放棄をした場合含む)ために、残置物がそのままになっている集合住宅のこととされています。

 

区分所有建物がこのような状態になってしまうと、管理費・修繕積立金の回収ができなくなります。
その結果、他の区分所有者に支払いを求める管理費・修繕積立金を値上げせざるを得なくなるということもあります。
遺品部屋が増えると、マンションの維持管理自体が困難になっていきます。

 

現状、遺品部屋の問題を根本的に解決する方法は、相続財産清算人の選任申立てとなります。
相続財産清算人が、被相続人の財産から管理費・修繕積立金等を支払い、遺品部屋となった区分所有建物を売却して流通に戻します。
場合によっては、区分所有建物の売却金から、管理費・修繕積立金を支払うこともあります。

 

もっとも、相続財産清算人選任申立てにおける管理組合の金銭的、労力的負担は相当大きいです。

 

まず前提として、相続人の調査を行い、連絡を取る必要があります。
多数の戸籍謄本を集め、相続人に書面を送付しなければなりません。
弁護士を探し、この作業を依頼をするだけでも、相当の労力と費用を要します。

 

相続人が相続放棄をしている場合には、相続放棄申述受理通知書の写しの提供を求めたり、家庭裁判所に相続放棄申述受理状況の照会をするなどの作業も必要となります。

 

そのうえで、家庭裁判所に相続財産清算人選任申立てを行います。
相続財産清算人選任申立てには、弁護士費用だけでなく、一般的には100万円程度の予納金を裁判所に納める必要があります。

 

相続財産がある程度ある場合には、相続財産の清算業務が完了した後に、予納金が返金されますが、申立てから返金までには1年以上要することが多いです。

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区分所有建物と財産管理10

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弁護士・税理士の鳥光でございます。

 

今回は、相続人不存在のために空き家となった区分所有建物の、残置物の管理についてです。

 

区分所有建物に住んでいた被相続人の残置物が、バルコニーや廊下にもある場合には、早急に処分をするか、建物内部に収容する必要があります。

 

戸建て住宅と異なり、区分所有建物の場合、バルコニーや廊下は共用部分であるためです。

 

廊下が共用部分であるということは感覚的にも理解しやすいと思いますが、バルコニーも共用部分であるという点も理解しておく必要があります。

 

バルコニーは、区分所有建物の所有者や居住者しか使えないという権利(専用使用権)が設定されていますが、一方で他の住人の避難経路にもなっています。
隣との境が、薄く強度の低い壁で仕切られてるのはそのためです。
そのため、通常は避難の妨げになる物を置くことが禁止されています。

 

廊下やバルコニーに残置物が存在している場合の対処法としても、相続財産清算人選任申立ては有効であると考えられます。

 

なお、私が管理した区分所有建物は、たまたま申立人の方が被相続人の成年後見人であったため、被相続人が施設に入るタイミングで生前に残置物は処分されていました。

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区分所有建物と財産管理9

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弁護士・税理士の鳥光です。

 

今回は、相続財産清算人選任の申立てを行うことができる方についてです。

 

民法952条第1項によれば、「利害関係人又は検察官の請求によって」相続財産清算人は選任されます。

 

また、所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法第42条第1項により、「国の行政機関の長又は地方公共団体の長」も「所有者不明土地につき、その適切な管理のため特に必要があると認めるときは」相続財産清算人の選任申立てができます。

 

民法952条第1項の「利害関係人」には、事務管理者、成年後見人であった者、相続債権者、特別縁故者であると主張する者などが挙げられます。

 

区分所有建物が相続人不存在となり、滞納されていた管理費・修繕積立金の回収が必要な場合には、管理組合は利害関係人となるため、相続財産清算人選任申立てができます。

 

現在、マンションには2つの老い、すなわちマンションの築年数が大きくなり、かつ居住者(組合員)が高齢化が進んでいます。

 

居住者の高齢化により、相続が発生する可能性が高まります。
もし区分所有建物が相続人不存在となってしまうと、相続財産清算人が選任されるまで管理をすることができなくなってしまいます。

 

すでに都市部においては、空き家となっている区分所有建物が多くなっています。
そのすべてが相続人不存在というわけではありませんが、一部は相続人不存在になっていると考えられます。
ちなみに私が管理した区分所有建物は、もともと推定相続人がいない方がお亡くなりなったことにより相続人不存在となりました。

 

今後、管理組合による相続財産清算人選任申立てがしやすいような政策も必要になるかもしれません。

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