【相続放棄シリーズ】18 相続放棄と時効援用

暑い日が続きます。

 

熱中症の危険があることに加え,寝苦しい日もあることから体調を崩される方もいらっしゃるかもしれません。

 

ひと昔前は冷房が身体に悪いと言われていましたが,今では冷房をかけないと身体に悪いとさえいえそうです。

 

相続・債務整理を担当している弁護士の鳥光でございます。

 

相続放棄シリーズ第18回目となります。

 

今回は相続放棄と時効援用についてです。

 

1 どちらも相続債務を負担しないで済む

被相続人が債務を有したまま死亡すると,基本的にその債務は法定相続割合に基づいて相続人が負担することになります。

 

相続放棄をすると,その相続人は初めから相続人でなかったことになりますので,当然債務も相続せず,負担する必要はなくなります。

 

相続放棄は,相続人が個別に行う手続ですので,相続債務を負担する必要がなくなるのは,相続放棄をした相続人だけです。

 

時効援用は,相続債務の消滅時効が完成している場合に限られますが,やはり相続人が債務を負担する必要がなくなります。

 

法的には,相続債務を一旦相続するものの,時効援用により債務を消滅させることができるということになります。

 

初めから債務を相続していないことになる相続放棄とは,理論上は異なりますが,相続債務の支払い義務がなくなるという部分は共通しています。

 

2 実務上は様々な違いがある

相続放棄をする場合も,時効の援用をする場合も,被相続人の相続財産(債務)の調査をする必要はあります。

 

厳密には,相続放棄は,債務を有しているおそれがあることが判明した段階でも行ってしまうことも多いです(たとえば,遺品の中から,少し古い消費者金融からの請求書が出てきたなど)。

 

しっかり相続債務を調査する場合は,債権者に対して,被相続人の取引履歴を提示してもらうよう依頼し,かつ依頼する人が相続人であることを示す書類(被相続人死亡の記載のある除籍,及び相続人の戸籍など)を提示する必要があることもあります。

 

もちろん,債権者に対する取引履歴の請求は弁護士が代理をすることもできますし,弁護士が職務上請求により戸籍謄本類を取得することもできます。

 

債務の調査には時間が掛かることもありますので,相続放棄を視野に入れている場合は,期限の延長手続を行っておくことも大切です。

 

相続債務の状況が判明したら,(他にも債務が存在しているおそれがないことが前提ですが)時効が完成している場合とそうでない場合とで対応が変わってきます。

 

時効が完成していて,預貯金等他の財産を取得することに問題がない場合は,債権者に対して消滅時効の援用を行います。

 

消滅時効の援用は,債権者に対して行われるものですので,弁護士が代理として行う場合は,債権者を相手方とする委任を受ける必要があります。

 

そして,相続人の代理人として,債権者に対して時効援用の通知文を送付するということが行われます。

 

時効が完成していない場合,相続放棄を行います。

 

感覚的にわかりにくい部分ですが,相続放棄は債権者に対してではなく,裁判所に対して行われる手続きです。

 

したがいまして,弁護士が代理で行う場合は,債権者を相手とする委任を受けるのではなく,あくまでも相続放棄の委任を受けた旨を裁判所に対して示すということになります。

 

相続放棄が完了した後,弁護士が債権者に対して相続放棄申述受理通知書を送付することがありますが,これは時効の援用とは異なり,あくまでも依頼者に代わって事実上相続放棄が完了したことを通知する,という形になります。

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【相続放棄シリーズ】17 相続債務があるが相続放棄は困難である場合

夏も本番になりました。

 

熱中症対策は十分にしなければなりません。

 

相続,債務整理を中心に担当しております,弁護士の鳥光と申します。

 

今回は相続放棄シリーズ17回目,相続放棄が(事実上)できない場合についてのお話です。

 

1 相続債務があるが,生活に必要な財産もある場合

典型的な例として,被相続人が消費者金融等に債務を有していると同時に,自宅を所有しており,相続人がそこに住み続ける場合がこれにあたります。

 

もちろん,相続放棄をして,(元)自宅から退去するという選択も,理論的には存在します。

 

しかし,新たな家を探すことは簡単なことではありませんし,自宅の価格に比べて債務額が低い場合,もったいない感じもします。

 

このような場合,相続放棄以外の解決手段がないか,検討します。

 

2 解決法は大きく分けて2つ

1つは,自宅を売却し,その売却金で債務を返済することです。

 

もっとも,この方法は,売却金の余りを得ることはできるものの,新たな住居を探して転居する負担は残ってしまいます(不動産の売却自体も簡単ではありません)。

 

2つめとして,任意整理,時効援用を行うという方法が考えられます。

 

まず,被相続人の方宛てに送られた請求書や,信用情報機関から取得した情報を元に,債権者と債務額を正確に調査します。

 

この時,返済期限から何年も経っていて,消滅時効が完成しているようでしたら,時効を援用することで債務をなくすことができます。

 

金銭債務は,相続人全員に法定相続割合で分割されているので,相続人それぞれが時効援用をする必要があります。

 

時効が完成していない場合,任意整理を行います。

 

放っておくと遅延損害金が膨れ上がるだけでなく,場合によっては訴訟を提起されたり,裁判所を通して支払督促がなされたりすることがあります。

 

任意整理によって和解契約を締結し,支払金額を固定したうえで分割払い等にすることが一般的ですが,この部分は通常の任意整理(ご存命の方の任意整理)と比較すると複雑になります。

 

上述の通り,消費者金融等に対する金銭債務は,相続人間で法定相続割合で分割されます。

 

そのため,和解契約は相続人それぞれが債権者に対して行う必要があり,支払いも個別に行うことが基本です。

 

もっとも,これは非常に手間がかかりますので,和解契約書の文面において,相続人それぞれが法定相続割合による債務を有していることを確認したうえで,相続人代表者を決めて,その人が債権者に対して全員分の支払いを行うとすることがあります。

あくまでも,代表者は債権者に対して全員分をまとめて支払うだけで,相続人全員の債務を負担するわけではありません。

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【相続放棄シリーズ】16 被相続人が賃貸住宅に住んでいた場合

7月に入り,とても湿度の高い日が増えてきました。

 

食中毒等に気を付け,体調管理に気を配りたいところです。

 

相続・債務整理を担当している弁護士の鳥光でございます。

 

相続放棄シリーズ第16回目となる今回は,被相続人が賃貸住宅に住んでいた場合についてです。

 

1 民間の賃貸住宅の場合

いわゆる,被相続人が大家さんからアパートやマンション(場合によっては一軒家)を借りて,賃料を払っていた場合です。

 

この場合,被相続人が亡くなると,まずは相続人が賃借人の地位を相続します。

 

そのため,原則としては,解約等により賃貸借契約がなくなるまでの間,相続人には賃料等を支払う義務があります。

 

また,被相続人が賃料等を滞納していた場合,未払賃料や遅延損害金等を支払う義務も生じます。

 

そして,相続人が相続放棄をすると,初めから相続人でなかったことになりますので,賃借人としての地位も,賃料等の支払い義務も,初めからなかったことになります。

 

賃貸人から,解約して欲しい旨の話が来た場合は注意が必要です。

 

解約という言葉の法的意味が問題となります。

 

賃貸人と相続人との間での合意により賃貸借契約を修了させるものである場合,合意解除となるので,相続財産の処分(法定単純承認事由)にあたる可能性が出てきます。

 

そのため,賃料の不払いなどを理由とした,法定解除(賃貸人側の一方的な意思表示で賃貸借契約を修了させるもの)としてもらう必要があります。

 

被相続人と同居していた相続人が,引き続きその賃貸物件に住む場合は,一旦賃貸人と被相続人との間の賃貸借契約を法定解除してもらい,改めて(元)相続人と賃貸借契約をする必要があります。

 

2 資力要件等がある公営住宅の場合

都営住宅など,家賃が低額である公営の住宅は,入居の際に収入や資力の要件を設けている場合があります。

 

ある一定の収入,資力を下回る場合にのみ,入居が許可されるというものです。

 

このような条件が設けられた公営住宅に居住する権利は,被相続人の一身専属権であり,相続の対象にならないとされます。

 

公営住宅の存在意義は,民間においては住宅の確保が困難な低所得者に対し,公共の福祉の観点から低額な住居を提供することにあります。

 

つまり,公営住宅を使用する人の経済的な属性に応じて付与される権利なので,相続人といえども被相続人とは属性が異なる以上,当然に承継するものではないということになります(相続人が被相続人と同等の経済的属性であれば,改めて使用権が認められるということはあり得ます)。

 

そのため,被相続人の死亡と同時に公営住宅の使用権はなくなり,民間の賃貸住宅のように,契約の解除等の問題はありません。

 

一方,自治体によって,配偶者や子が届け出をすることで入居承継を認めている場合があります。

 

この場合,あくまでも相続人の地位としてではなく,配偶者,子固有の権利として入居承継資格が与えられていると考えることができるため,相続放棄をしても入居承継ができることになります。

 

自治体によって扱いが異なりますので,実務上は個別具体的に窓口で確認する必要があります。

 

弁護士法人心では,四日市に新しく事務所を設立しました。

四日市周辺で相続問題にお悩みの方は,ぜひ一度ご連絡ください。

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【相続放棄シリーズ】15 自己破産を検討している場合

今年の梅雨は,かなり雨が降っています。

 

特に西日本では水害に遭われた方も多くいらっしゃるかと思います。

 

一刻も早く復旧できることを祈ります。

 

相続と債務整理を担当している弁護士の鳥光と申します。

 

今回は相続放棄シリーズ15回目です。

 

自己破産手続と相続放棄との関係についてです。

 

1 自己破産手続について

自己破産(・免責)は,債務の弁済(支払い)が不能となったことを要件に,保有する財産で弁済できる範囲で債権者へ債務を弁済し,残った債務は免責される(一部例外の債務もあります)という手続です。

 

破産の申立時に財産を有していない場合には,申立と同時に免責となることもあります。

 

破産を申し立てる際は,債権者の一覧と,それぞれの債権者に対していくらの債務があるのかを明らかにする必要があります。

 

債務を有している被相続人が亡くなった場合,法定相続割合に従って債務を相続しますので,当該債務の債権者と債務額も,破産申立の対象となります。

 

2 自己破産手続開始後の相続放棄

自己破産の申立ての準備をする過程で,被相続人に債務があり,その債務が自分に降りかかていることを知ることがあります(債務調査のため,さまざまな債権者に対して債権の届け出をしてもらうためです)。

 

自己破産手続が開始されていても,相続放棄自体はこれとは別の手続であるため,相続放棄の申述を行うことは問題なくできます。

 

ただし,破産法により,相続放棄の効果に制限がかかります。

 

限定承認(相続によって得た積極財産の限度で,相続債務を弁済することを条件とする相続)としての効果しか生じないこととなります。

 

理由は,債権者の保護のためです。

もし換価価値のある相続財産が存在していた場合,これらを放棄してしまうと債権者への配当原資が減ってしまうからです。

 

もっとも,相続放棄をする場合というのは,多くは被相続人に財産がなく,負債のみがあるというケースです。

 

このような場合,限定承認の効果を持たせる必要がありません。

 

そのため,この場合には,破産管財人が,相続放棄の効力を認める旨を家庭裁判所へ申述することで,相続放棄として扱われることになります。

 

いずれにしても,破産手続を行っている際に相続放棄をする場合は,申立代理人にしっかりとその旨を伝え,相続放棄申述受理通知書を受取ったら,写しを提供しましょう。

 

 

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相続放棄と債務整理

今年の梅雨は,本当によく雨が降ります。

 

夏場の水不足の心配は減りそうですね。

 

小職は,相続に加え,債務整理も担当しております。

 

そこで今回は,相続放棄と債務整理との関係についてお話いたします。

 

1 共通点

相続放棄と債務整理は,どちらも債務をなくすという効果があります。

 

たとえば,複数の債務をお持ちの方が任意整理を行う場合,これらの債務の中に時効となっているものがあれば時効援用によりその債務を消滅させ,相続債務が含まれている場合には相続放棄によってその債務をゼロにします(正確には初めから相続人でなかったことにすることで,相続債務が元々存在していなかったことにします)。

 

また,債務整理のうち,債務を完全になくせる手続として破産・免責があります(一部例外となる債務もあります)。

 

概括的には,相続放棄は債務を一切引き継がない代わりに財産も一切得られないという効果があり,破産・免責は債務の支払い義務がなくなる代わりに財産もなくなるという効果があるので,
両者は似たような効果を持っています。

 

2 相違点

相続放棄は,裁判所に対して必要書類を提出して行われる手続きです。

 

弁護士が代理人となる場合も,あくまでも裁判所に対する代理権を有している形になります。

 

債務整理のうち,破産と再生は裁判所を通じた手続ですが,任意整理は債権者(金融機関,消費者金融,個人等)を相手にして行います。

 

そのため,代理人の代理権も,債権者に対するものとなります。

 

具体的には,弁護士が債務者の代わりに,債務者の財政状況を債権者に伝えるとともに,支払い総額や支払期間(分割回数)などの条件を交渉し,最終的に和解契約を締結するというものです(和解に至らないこともあります)。

 

この違いは,実務上は,相続放棄手続が完了した旨を債権者に対して連絡する際に現れます。

 

相続放棄において,債務者(債務者の相続人)の相続放棄手続が完了した際に,その旨を債権者に対して連絡します。

 

こうすることで,相続人が債務者でなくなったことを債権者に認識してもらって請求を止めることができるためです(債権者としても,回収不能という形で事件をクローズできるようになります)。

 

このとき,受任通知を求められることがあります。

 

債権者側から見ると,債務者に関する事項で弁護士から連絡が入る場合というのは,返済に関する交渉の場合がほどんどであるためです。

 

しかし,相続放棄の代理人弁護士は,あくまでも裁判所に対する代理権を有しているだけで,債権者との債務に関する交渉の代理権を有しているわけではありません。

 

そもそも,債権者を事件の相手方としているわけではないので,受任通知を送るという性質のものではないのです。

 

このことを説明し,相続放棄申述受理通知書の写しを提供する等することで,(元)相続人の方への請求を止めることができます。

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【相続放棄シリーズ】14 相続放棄は連鎖する

かなり暑い日も増えてきた半面,まだまだマスクが手放せない状況。

 

水分を多めに取り,熱中症対策をすることが大切であると感じます。

 

今回は,相続放棄シリーズ第14回目,相続放棄の連鎖についてです。

 

1 相続には順位がある

人が亡くなることで,相続が発生します。

 

被相続人が亡くなった時点で子がいた場合,子が相続人となります。

 

子がいない場合,直系尊属(父母,祖父母等)が相続人となります。

 

直系尊属もいない場合(実際には先に亡くなっていることが多いです),兄弟姉妹が相続人となります。

 

被相続人に配偶者がいる場合,常に相続人となります。

 

2 相続放棄をすると次の順位の相続人に相続権が移る

相続放棄が認められると,申述人は初めから相続人でなかったことになります。

 

つまり,相続に関する法律上は,初めからいなかったことになります。

 

被相続人の子が(全員)相続放棄をすると,被相続人には子がいないことになるため,次の順位である直系尊属が相続人となります。

 

そして,生存している直系尊属も相続放棄をすると,直系尊属もいなかったことになるため,さらに次の順位の兄弟姉妹が相続人になります。

 

3 相続人全員が相続放棄をしないと,大きな負担が生じることも

被相続人が資産を持たず,大きな負債を抱えたまま亡くなった場合などは,相続人全員が相続放棄をしないと,放棄をしなかった相続人が大きな負担を抱えることになります。

 

子が全員相続放棄をすると,被相続人の負債は直系尊属にまわってきます。

 

直系尊属が全員相続放棄をした,または直系尊属が既に全員死亡していた場合,被相続人の負債は兄弟姉妹にまわってきます。

 

さらに,兄弟姉妹が複数人いる場合,本来は負債が法定相続割合に基づいて分散されますが,一部の兄弟姉妹だけが相続放棄をすると,残りの兄弟姉妹に負債が集中します。

 

そのため,負債を負担するお気持ちがある場合は別として,先順位相続人が相続放棄をした場合には,次の順位の相続人も相続放棄をしない限り,被相続人の負債から逃れることはできないということになります。

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【相続放棄シリーズ】13 相続放棄の増加と備え

一旦は緊急事態宣言が解除され,街には人並みも戻ってきました。

 

もっとも,また感染者が増えている地域もあり,油断は禁物であると感じております。

 

弁護士の鳥光です。

 

今回もご覧いただき,ありがとうございます。

 

相続放棄シリーズ13回目は,相続放棄の動向と対策についてです。

 

1 相続放棄は増えている

相続放棄は,平成25年には約17万件あり,平成30年には21万件を超えています。

 

単純計算では毎年8000件程度増えていることになります。

 

現場の感覚としても,相続に関するご相談の中で,相続放棄をご希望でいらっしゃる方の割合は増えています。

 

データと現場感覚の両面において,相続放棄の需要は増えているといえます。

 

完全に私見ですが,背景には次のような要因があるのではないかと思います。

 

・単に高齢化社会が進んだことにより,相続の発生件数が増え,そのなかに一定の割合で相続放棄をすべきケースが含まれれていることから,相続放棄件数が増えた。

 

・バブル期は順調であったが,その後の不況で一家離散し,音信不通となっていた親が負債を抱えたまま亡くなった。

 

・相続に対する意識が変化した(相続は,せねばならないという考えから,相続関係は断ち切っても良いという考えへ変化)。

 

2 相続放棄は身近になりつつあり,備えも必要

人が亡くなることで相続は発生します。

 

相続放棄は,一旦相続が生じたのちに,遡及的に相続人でなかったことにすることで,相続の効果を消滅させるものです。

 

つまり,本来的に相続放棄は例外的な措置です。

 

そのため,普段生活の中で見聞きすることは少なく,専門家以外の方向けの書籍等もあまりないので,リテラシーの向上がなされていません。

 

一方で,相続放棄を行うべきケースは確実に増えていることから,かつてに比べて相続放棄は身近になっています。

 

相続放棄シリーズにて紹介させていただいております通り,相続放棄には気を付けなければならない点がたくさんあります。

 

裁判所に提出する相続放棄申述書を書くだけであれば,それほど大変ではありません。

 

しかし,相続放棄の期限の起算日の考え方や,法定単純承認事由に該当する行為(相続放棄をするにあたり,やってはならない行為),債権者への対応など,知らないと全く対応できません。

 

特に期限と法定単純承認事由に該当する行為については,手遅れになってしまうと専門家であってもリカバリーが不可能になります。

 

そのため,相続放棄は自分がすることもあり得るという認識でもって,概要レベルでもよいので知識の備えを持っておくことが重要です。

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【相続放棄シリーズ】12 相続放棄は生前に準備をすることが大切

東京駅八重洲口側周辺は,本当に人が少ないです。

 

いまだかつてゴールデンウイークにこのような光景を見たことはなく,緊急事態宣言の効果を強く感じます。

 

相続放棄シリーズ,第12回目は,生前の準備についてです。

 

1 相続放棄は,ご存命のうちから準備をすることがある

相続放棄というと,被相続人が亡くなった後になって多額の借金の存在が明らかになったり,音信不通だった被相続人が亡くなったことを債権者からの催促で知った,という場合にするものというイメージがあります。

たしかに,そのようなケースも多く存在します。

しかし,被相続人がご存命のうちから,被相続人とご家族とが話し合い,相続放棄をすることを決めておくというケースもあります。

 

被相続人が事業などを営んでいて,融資も受けていた(つまり銀行等から借金をしていた)が,重い病気などにより入院生活となってしまい,事業は事実上停止し負債だけが残ってしまったという場合です。

 

病気が進行し,医者から余命が短い旨を伝えられた際に,家族同士で話し合い,予め相続人となる方々が相続放棄の準備を開始します。

 

このような経緯で,被相続人がご存命のうちから,相続放棄の準備についてご相談に訪れる方もたくさんいらっしゃいました。

 

2 相続放棄の生前準備

相続放棄の生前準備を行うケースにおいて,やるべきことはいくつもあります。

 

被相続人の状況に応じて,個別具体的な対応が必要ですが,一般的には次のことを行います。

 

・財産の把握,特に債務の内容(債権者と金額)と不動産所有状況の整理

 

・残置物になり得るもの(被相続人が亡くなったらゴミになり得るもの)の処分

 

・被相続人死亡後に行ってはならない行為(法定単純承認事由)の把握

 

・賃貸借契約がある場合は解約・解除

 

預貯金等がある場合,葬儀費の準備などのために生前贈与をすることもありますが,債権者との関係においては詐害行為になる可能性もあるので注意が必要です。

 

法定単純承認事由に該当する行為を予め知っておくことは,とても大切です。

 

知らずに法定単純承認事由に該当する行為を行ってしまうと,原則として相続放棄ができなくなります。

 

これを覆すのは容易ではありません。

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【相続放棄シリーズ】11 相続放棄は書類を裁判所に提出するだけでは終わらない

緊急事態宣言が延長されました。

 

生活も仕事も,なかなか元には戻れない状況が続きます。

 

弁護士として,法律の側面から,皆様のお悩みを解決するために尽力したい次第です。

 

さて,相続放棄シリーズ11回目は,裁判所へ相続放棄申述書を提出した後の話です。

 

1 相続放棄申述書を提出した時の効果

相続放棄の手続きは,相続放棄申述書とその付属書類を裁判所に提出することで開始されます。

 

同時に,相続放棄の申述期限の問題も解消されます(原則として,相続の開始を知った日から3か月以内に相続放棄申述書を提出すれば,期限内に相続放棄の手続を行ったことになります)。

 

相続放棄申述書を提出することで相続放棄が完了するのではなく,相続放棄の手続が開始されるのです。

 

具体的には,裁判所の中で,形式面,法律面双方から,相続放棄の要件を備えているか否かの検討,審議が開始されます。

 

2 相続放棄申述書提出後の,申述人側の手続き

相続放棄申述書を提出すると,裁判所から申述人(またはその代理人)に対し,連絡がなされたり,必要に応じて書面等の追加提出を求められます。

 

具体的には,次のようなものがあります。

 

(1)照会書兼回答書

裁判所から,照会書兼回答書(裁判所によって名称が異なる)が送られることがあります。

 

これは,申述人に相続放棄の意思があることを再確認するほか,事案に応じて裁判所が詳しく事情を把握したい事項についての質問が記載されたものです。

 

回答次第では,相続放棄を却下することもあり得ます。

 

送付の仕方は,裁判所により区々であり,同じ裁判所であっても部署や書記官により運用が異なることもあります。

 

送付は大きく分けて次の3つのパターンがあります。

 

1つめは,申述人本人に送るパターンです。

 

代理人が就いていない場合は当然ですが,代理人が就いていても本人に照会書兼回答書が送付されることがあります。

 

2つめは,代理人が就いている場合に,代理人宛てに送るパターンです。

 

代理人宛てに書面が郵送されてくることの外,FAXで送付されることや,電話で照会されることもあります。

 

3つめは,正確には送付ではないのですが,代理人が就いているときに限り,照会せずに相続放棄を認めるというパターンです。

(2)審問

審問とは,裁判所に行き,裁判官からの質問に回答する手続きです。

 

行われることは少ないですが,提出した書面だけでは相続放棄の要件を満たしているか否かの判断が難しい場合に行われることがあります。

 

相続放棄申述書を提出した後,裁判官が審判をすべき事案であると判断した場合,裁判所から呼び出しがかかります。

 

原則としては,申述先の裁判所へ行き,裁判所の中の部屋で審問を受けることになります。

 

申述先の裁判所が遠方であると,かなり負担になります。

 

(3)その他
書類の追加提出を求められる場合があります。

 

よくあるのが,兄弟姉妹相続の相続放棄において,第二順位の相続人である直系尊属が全て死亡していることを示す戸籍の追完を求められることです。

 

兄弟姉妹は,直系尊属が全て亡くなっていて,初めて相続人になるため,直系尊属が生存していると相続放棄を行う地位になく,相続放棄の要件を欠くことになります。

 

兄弟姉妹相続の相続放棄においては,兄弟姉妹の出生から死亡までの全ての戸籍を収集して提出しますが,その戸籍に中に親の死亡の記載がない場合や,その上の親の死亡が確認できない場合,提出を求められます。

3 相続放棄申述受理通知書が発行されたら

裁判所において,相続放棄の要件を満たすと認められた場合,相続放棄申述受理通知書という書面が発行され,送付されます。

 

基本的には,この書面を取得することができれば,相続放棄は完了したといえます。

 

相続放棄申述受理通知書があれば,対外的にも相続放棄を行ったことを示すことができますし,多くの場合,債権者に対して写しを提供することで請求を止められます。

 

もっとも,相続放棄を行ったことを示す書類には,相続放棄申述受理通知書のほかに,相続放棄申述受理証明書というものがあります。

 

これは,不動産の登記を行う場合等に,必要となることがあります。

 

申述先の裁判所に対し,相続放棄申述受理証明書の請求用紙と,手数料分の収入印紙を郵送することで取得することができます。

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【相続放棄シリーズ】10 相続放棄を早く行うメリット

コロナウィルスの影響で外出や経済活動の自粛を求められる中,台風並みの荒天や地震なども重なり,非常に厳しい時を過ごさざるを得ない状況です。

 

今は耐え時と捉え,できることをやっていくという意識で日々の業務に取り組んでおります。

 

弁護士法人心東京駅法律事務所にて相続を担当している,弁護士の鳥光でございます。

 

相続放棄シリーズも今回で10回目を迎えました。

 

今回は,相続放棄の効果について説明します。

 

1 相続人でなかったことになる

相続放棄は非常に強力な効果を持っています。

 

相続放棄をすると,初めから相続人ではなかったことになります。

 

もちろん,実の親子や兄弟であれば,生物としては血のつながりがありますが,法律上は相続人ではなかったことになります。

 

被相続人の遺産相続に関しては,相続債務のことも含め,全く無関係の存在となります。

 

2 相続放棄は個別に効力を生じる

裁判所に対して相続放棄申述手続きをし,相続放棄が認められると,裁判所から相続放棄申述受理通知書というものが発行されます。

 

相続放棄申述受理通知書には受理日付が記載されますので,この日を以て相続放棄をした旨を対外的にも示すことができます。

 

相続放棄の手続きは,各相続人が個別に行うことができます。

 

他の相続人と疎遠であったり,関係が悪かったりする場合でも,特に他の相続人に相続放棄をする旨を伝える必要はなく,相続人自身の判断で相続放棄手続を進められます(これに対して限定承認は相続人全員が行う必要があります)。

 

3 相続放棄は早めに行った方が良い

相続放棄を考えている場合,できるだけ早く行った方が良い理由が2つあります。

 

1つ目は,相続放棄の申述期限がとても短いことです。

 

相続の開始があったことを知った日から3か月しかありません。

 

相続放棄の申述を行うためには,戸籍謄本類等を収集しなければならないので,ギリギリになってから手続きの準備を始めると間に合わなくなる可能性もあります。

 

もう1つは,相続にまつわるトラブルから一早く脱却できることです。

 

相続放棄が完了すると,もはや相続人ではなくなりますので,相続に関わろうとも関わることができない立場になります。

 

相続に争いが生じ,問題のある相続人から,「この(価値のない)土地をお前が相続しろ」ですとか,「被相続人の借金はお前が背負え」とか言われたとしても,拒否するまでもなく,しようがないのです。

 

問題のある相続人は,相続放棄をすることを妨害してくることも考えられます。

 

そのため,思い立ったら迅速に相続放棄をしてしまうのも手です。

 

また,相続放棄をすれば,債権者から請求を受けることもなくなります。

 

請求を受けたとしても,相続放棄申述受理通知書の写し等を提供することで請求を止めることができます。

 

被相続人の債権者が分かっている場合,早々に相続放棄を行ったことを伝え,他の相続放棄をするつもりのない相続人へ請求してもらうことで,煩わしさから解放されます。

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