相続財産調査の労力

相続財産調査は,遺産分割および相続税申告(相続税が課せられるか否かの調査含む)の両方で必要な手続きです。

 

相続財産調査は,相続人ご本人様でも行えます。

 

むしろ,未だ相続財産調査を相続人ご本人様に行っていただく方が主流かもしれません。

 

客観的な視点からは,相続人ご本人様が調査を行う方が,手間は少ないです。

 

金融資産の調査においても,不動産の評価についても,相続人ご本人様が行う方が代理人への委任等の作業を省けるので,手続きは少なくなります。

 

しかし,相続人ご本人様が相続財産調査を行う場合,主観的な部分において,壁となるものが2つあります。

 

1つは,相続財産調査の前工程である相続人調査です。

 

正確には,ご自身が相続人であることを公的に証明する資料である戸籍謄本類の収集です。

 

これがないと,金融機関等は相続財産調査の照会に応じてくれません。

 

ご自身や被相続人の死亡時の戸籍を取得することはそれほど難しくありませんが,被相続人の出生から死亡までの戸籍を収集することは簡単ではありません。

 

もう1つは,時間の確保です。

 

戸籍謄本類を取り寄せる市役所等は,基本的には平日日中しか開いていないことが多く,金融機関は平日の15時までしか窓口を開いていないことが多いです。

 

既に定年等によりお時間を確保しやすい状況の方であればまだしも,現役でお仕事をされている方がお仕事の合間に,あるいはお仕事を休んで市役所や金融機関に行くのはとても大変です。

 

このような壁にお悩みの方は,後に行う遺産分割の協議や相続税申告等含め,相続財産調査を専門家に依頼するのが良いと考えられます。

 

相続人調査はもちろん,金融機関の名称や不動産の所在地などについて,正確ではなくてもある程度の情報をいただければ調査は可能です。

東京で相続でお困りの方はこちらをご覧ください。

地銀,信用金庫の調査

涼しい日も増えて参りましたが,まだ時折30℃を超える日もあります。

 

熱中症にはご注意ください。

 

先日,仕事で静岡県浜松市の裁判所に行って参りました。

 

初めての場所であったことと,裁判所の期日が午前の早い時間に行われる予定であったことから,期日前日に浜松へ行き,現地を散策しました。

 

私は相続に関わる仕事の中でも,相続財産調査,特に金融資産の調査を行うことが多々あります。

 

相続財産調査を弁護士が行うことで,その後の遺産分割の進め方も同時並行で検討することができるため,遺産分割協議を早期に解決することが可能になることもあります。

 

そのため,仕事柄,現地の地銀や信用金庫を見ると,ついチェックしてしまいます。

 

 

 

弁護士法人心東京駅法律事務所がある東京の八重洲周辺は,全国の金融機関の支店が集中しております。

 

金融資産の調査を行う上で非常に便利なので,早く正確な調査ができます。

 

金融機関に対する財産の照会は,一般的には郵送で行うことが多いです。

 

しかし私は,可能な限り直接窓口に行くという方針を採っております。

 

直接窓口に行って,申請に必要な書類の書き方等を綿密に確認した方が,結果として手戻りを減らすことができ,迅速な調査につながるためです。

 

東京の八重洲付近にない金融機関については,出張などの機会に現地調査をし,密にコンタクトを取り,正確性と迅速性を確保しています。

相続財産の評価

暑い日が続いております。

 

東京は気温が高いだけでなく,アスファルトやコンクリートが熱を吸い,夜に放出する関係で,夜になっても気温が高いままです。

 

熱中症には十分にお気を付けください。

 

さて,遺産分割協議を行うにあたり,相続人間で具体的な分割の話をする前に行わなければならないことは,相続財産の確定です。

 

相続財産には「何」があり,それは「いくら」なのか,を確定させます。

 

今回は「いくら」の部分についてお話をさせていただきます。

 

預貯金や不動産,株式など,被相続人の財産がわかりましたら,これがいくらになるのか,評価額を調べる必要があります。

 

理由は,相続人間での遺産分割の公平性を確保するためです。

 

例えば,相続人が兄弟2人だけで,法定相続割合に従って2分の1ずつ相続財産を分けるとします。

 

その際,相続財産すべてを金銭に評価し,総額を明らかにしないと,それぞれの相続人が本当に法定相続割合に基づいて相続財産を取得できているかを客観的に判断することができません。

 

仮に兄が現金と預貯金,弟が土地と株式を取得するとした場合,土地と株式の金銭評価額が明らかになっており,兄が取得する現金預貯金と同額であれば,お互いに納得することができます。

 

具体的な評価について,預貯金は被相続人死亡時の残高がそのまま評価額になるので問題ありません。

 

株式,投資信託についても,被相続人死亡日の価格が評価額になります。

 

証券会社に依頼することで,当時の価格を記載した書面を発行してもらえます。

 

問題は不動産です。

 

不動産の評価額を表すものは,いくつもあります。

 

固定資産評価額,路線価,公示価格,不動産鑑定士による鑑定額,不動産業者による査定額などです。

 

遺産分割においては,どの評価額を使うかは決まっておりません。

 

極端なことをいえば,相続人間で合意が取れれば,いくらでも構わないのです(遺産分割における評価額と,相続税評価額は別物です)。

 

しかしながら,不動産の代償分割においては,評価額は争いのポイントとなり得ます。

 

不動産の代償分割とは,相続人の一部が不動産を取得する代わりに,他の相続人に対して金銭の支払い等を行う分割方式です。

 

例えば,相続人が子3人,相続財産が評価額3000万円の土地のみである場合を考えます。

 

法定相続割合に従えば,相続人一人あたりの相続分は金額に換算して1000万円ずつとなります。

 

このとき,相続人の1人が土地全部を取得し,その相続人が他の2人の相続人にそれぞれ1000万円ずつ支払う(これを代償金と呼ぶことがあります)ことで,全員が1000万円ずつ取得したことと同じになります。

 

これが代償分割です。

 

このケースにおいては,土地全部を取得する相続人としては,評価額をできるだけ下げたいという気持ちが働くのが人情です。

 

仮に評価額が2400万円であれば,他の相続人に対して800万円ずつしか支払わなくて済むからです。

 

逆に,代償金を受け取る相続人は,当然評価額を高くしたいと考えます。

 

この折り合いがつかず,調停になることさえあります。

 

経験上,一般的に相続人間で納得しやすい評価額は,都心部であれば市場価格に近い価格,地方の小規模な市町村で買い手が募りにくい場合は相続税評価額や固定資産評価額です。

 

市場価格に近い価格とは,複数の不動産業者へ査定をお願いして出していただいた価格の平均値などです。

 

簡易的には,固定資産評価額を0.7で除するということでも市場価格に近い価格を算出できます。

 

調停になった場合,折り合いがつかないときには不動産鑑定士に鑑定を依頼することもありますが,費用が高額になるので,できるだけ避けたいところではあります。

 

遺産分割は勝ち負けではなく,互譲による調整で進めていくものです。

 

遺産の評価額においては,お互いが何とか認めることのできる中間的価格を,合理的な裏付けを以て示していくということが大切です。

 

弁護士法人心東京駅法律事務所の集合写真が新しくなりました。

 

弁護士法人心東京駅法律事務所ウェブサイト

遺言作成の第一歩は財産整理

アクセスいただきありがとうございます。

 

東京近郊を中心とした相続案件を担当している鳥光(とりみつ)と申します。

 

高齢化に伴い,遺言を作成されることをご希望のお客様が増えてきました。

 

(余談ですが,遺言という漢字の読み仮名は,一般的には「ゆいごん」,法律家の業界では「いごん」です)

 

遺言を作ることを考える場合,何から始めればよいでしょうか。

 

遺言とは,端的にいえば「誰」に,「何」を相続させるまたは遺贈するかを記したものです。

 

つまり,「誰」と「何」を確定させなければなりません。

 

このうち,通常は,「誰」の部分は,決めやすいことが多いです。

 

ご相談にお越しいただいた時点で決まっていることもあります。

 

一方,「何」の部分につきましては,調査,整理が必要となることが多いです。

 

もちろん,ご自身の資産を完全に把握され,財産目録を作って管理されている方もいらっしゃいます。

 

しかし,多くの場合,不動産や預貯金,株式などについて,だいたいの部分は把握されていても,正確な番地や,口座情報等まで一目見てわかるという状態にはなっていません。

 

遺言書には,相続または遺贈する財産を正確に記載しなければなりません。

 

そこで,弊所では,固定資産税通知書や,金融機関の通帳,証券会社のレポート等,財産の整理に有用な資料をお持ちいただき,遺言書に記載すべき情報を割り出すということをさせていただいております。

 

遺言作成の第一歩は,財産整理からです。

 

遺言を作りたいけど,財産整理にお悩みであるという方は,ぜひご相談ください。

財産が少ないほど争われるのはなぜか

今回もブログをご覧いただき,ありがとうございます。

 

東京近郊の相続事案を中心に取り扱っている,弁護士の鳥光(とりみつ)と申します。

 

相続は,財産が少ないほど争いになるというお話をよく耳にします。

 

裁判所の統計においても,遺産分割調停が申立てられるケースの半数以上は,相続財産が1億円に満たない場合です。

 

では,財産が少ない場合において,具体的にはどのような争いになるのでしょうか。

 

相続財産が少ない場合,不動産がないか,あったとしても少額のものです。

 

そうすると,相続財産は預貯金等の金融資産が中心となります。

 

預貯金が少ない場合,「もっとあったはず」という思惑が相続人の頭に浮かぶことがあります。

 

特に,相続人の中に被相続人と同居していた人がいると,その相続人に使い込まれたのではないかという疑いに発展します。

 

また,被相続人と同居していた相続人は,他の相続人から見ると,被相続人の財産に関する情報を掴みやすい地位にいます。

 

そのため,他にも預貯金があるのではないか,同居していた相続人が通帳やカードを隠しているのではないか,という話になることもあります。

 

真実はどうあれ,一度このような疑念が生じてしまうと,被相続人が亡くなった時点での預貯金の額を示されても,遺産分割協議は全く前に進みません。

 

このような場合,疑うにしても根拠が必要ですので,遺産分割協議の前提として,まずは相続財産に関する情報を調査・整理する必要があります。

 

具体的には,被相続人の預貯金に関する残高証明,取引履歴を取得し,内容を精査します。

 

その結果,過去の取引に納得性があれば疑いは解消され,遺産分割協議を進めることができます,

 

逆に被相続人の生活に必要と考えられる金額を遥かに超える引出しがあれば,釈明を求める等により,遺産の配分を交渉するということもあります。
(正確には,仮に被相続人の生前に他の相続人が被相続人の許可なく預貯金を使い込んだ場合,不当利得という扱いになります)

 

遺産の分け方を議論する前提としての,相続財産の調査は,遺産分割協議を進めるうえで非常に大切なことです。

 

弁護士は,お仕事等でお忙しい相続人の方々に代わり,金融機関等に対し,相続財産調査をすることができます。

 

まずは相続財産調査についてご相談いただき,具体的に相続財産が判明してから,改めて遺産分割のお話に進めさせていただくという手順をとることもよくあります。

相続で争われる部分

ブログをご覧いただき,ありがとうございます。

 

相続担当の弁護士,鳥光(とりみつ)と申します。

 

相続というと,相続人が争うイメージをお持ちの方もたくさんいらっしゃるかもしれません。

 

では,具体的に相続のどのような場面で争いが発生するのでしょうか。

 

一般的には,遺産の分け方,つまり誰が,何を,どれだけ取得するかという部分で争われることが想定されると思います。

 

たしかに,この部分について争われることも多いです。

 

しかし,遺言がない場合は,法定相続分という法律で定められた拠り所がありますので,特別受益や寄与分が強く争われる場合でなければ,遺産の分け方についての話は割と進めやすいのです。

 

経験上,最も争われ,かつ時間も労力も要することが多い場面は,相続財産の内容の確定です。

 

相続財産の内容の確定は,遺産分割の前提となります。

 

相続財産に,何がどれだけ含まれるのかが確定していない限り,それを誰にどのように分けるかを話すことができないためです。

 

そして,相続財産の内容について,相続人間で争いが全くないというケースは非常に少ないです。

 

多くの場合,以下のような形で,相続財産の内容について争いが生じます。

 

・相続人の一人が,被相続人の財産の情報を頑なに明かさない

・被相続人の預貯金等の金額に納得がいかない(他の相続人が使い込んでいた疑いがある)

・生前,親が不動産を買ったと聞いたことがあるのに権利証が無く,誰かが隠している疑いがある,など

 

このような場合,相続財産の正確な調査をすることが必要となります。
(特に相続税の発生が考えられるケースでは,相続財産がわからないと申告と納税ができないという事態が生じます)

 

相続財産の調査の対象となるのは,ほとんどの場合,不動産と預貯金です。

 

調査は,簡単にできる場合から,かなり時間と労力を要する場合まで,さまざまなケースがあります。

 

弁護士として相続財産調査をするにあたっては,多くの場合,相続人であることを証明する資料として戸籍謄本類や法定相続情報の図を取り寄せることから始めます。

これがないと,行政機関や金融機関に情報を提供してもらうことができないためです。

 

不動産については,固定資産税の通知書の開示が受けられなくても,所在地がわかれば,固定資産評価証明や登記事項の入手は比較的容易にできます。

 

正確な所在がわからなくても,どの市町村にあるかがわかれば,少し時間と手間はかかりますが,調査は可能です。

 

預貯金については,通帳やキャッシュカードの情報を開示してもらえない場合,かなりの時間と手間がかかります。

 

手あたり次第に全ての金融機関を調査するのは現実的ではありません。

 

そこでまず,生前の親の話や,家にあったものなどの情報から,預貯金口座があったであろう金融機関のあたりを付けるところから始めなければなりません。

 

親の住所地の近くに支店がある金融機関なども調査の候補とすることが多いです。

 

その後は,ひたすら各金融機関に対し,預貯金口座の有無,残高証明(ここに口座情報も載ります),取引履歴の発行申請を行います。

 

郵送で受け付けてもらえる金融機関もありますが,そうでない場合には直接窓口まで出向く必要があります。

 

また,郵送で受け付けてもらえるとしても,遠方の金融機関でない限り,私は直接窓口まで行くことが多いです。

 

金融機関は人様のお金を扱う以上,調査の申請についてはとても厳格な審査をしますので,係員の方の面前で書類の内容や添付資料を確認してもらった方が手戻りリスクが少なくなるためです。

 

弊所は東京駅の八重洲側にあり,近辺には各種銀行等金融機関の本店,支店が集中しているため,窓口での問い合わせにも強みがあります。

 

また,弁護士を代理人として申請する場合には委任状が必要になりますが,この委任状についても記載内容を窓口で細かく確認しておけば,後に委任状を書き直すことになる可能性を減らすことができます。

 

預貯金等の調査は,金融機関によって手続きがかなり違いますので,ノウハウが必要となります。