相続税4

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弁護士・税理士の鳥光でございます。

 

今回は現金の評価についてです。

 

被相続人が死亡時点で所持していた現金も、相続財産として申告が必要です(現金の金額が、そのまま評価額になります)。

 

被相続人の現金については、大まかに3つのパターンがありますので、それぞれの対応方針を説明します。

 

 

1 被相続人が所持していた現金が、数万円程度であった場合

被相続人の財布等にのみ現金がある場合などは、このケースに該当することが多いです。

自宅の中に手許現金がある場合も、相続財産として計上します。

 

被相続人の生活の面倒を見ていた相続人が、小口の生活費を預かって管理していた場合にも、相続財産として計上します。

 

 

2 被相続人死亡直前に預貯金を引き出した場合

被相続人の死期が迫った際、死亡直後に発生する葬儀費等を賄うために、予め金銭を銀行等から引き出すことがあります。

 

主な使用目的が葬儀であることから、引き出す金額も数十万円~数百万円であることがあります。

 

これは、被相続人の現金として相続財産に含まれます。

 

葬儀費等に使用したとしても、相続開始時点での現金の金額を、相続税申告の際には計上します(葬儀費は、別途債務として控除できます)。

 

 

3 多額の現金がある場合

被相続人の中には、金銭を預貯金の形ではなく、現金で所持したいと考えている方もいます。

 

また、資産家であった被相続人などにおいては、金融機関と関係が悪くなり、多額の預貯金をすべて引き出して口座を解約してしまうこともあります。

 

このような場合、金庫などに数百万~数千万円の現金が存在するということがあります。

 

多額の現金が存在する場合には、相続税申告の際に、計算の根拠を説明する書面を添付することもあります(いわゆる33条の2書面)。

 

現金は秘匿性が高く、多額である場合は税務署の調査の対象となりやすいためです。

 

そのため、金融機関から引き出した金銭の合計額から、生活や事業等で使用したであろう金額を差し引き、相続開始時点での所持金額が合理的なものである旨の説明をします。

相続税3

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今回は、相続税申告準備における、預貯金の取り扱いについてです。

 

普通預金と、定期預金に分けて説明します。

 

まず、普通預金についてです。

 

普通預金は、相続開始時の残高が、そのまま相続財産の評価額となります。

 

普通預金の相続開始時の残高は、被相続人の通帳を見るか、相続開始時の残高証明書を取得して調べます。

 

もっとも、普通預金を調査する際は、通帳を参照した方が良いです。

 

通帳がない場合には、取引履歴を取得します。

 

その理由は、普通預金通帳には、相続開始時点の預貯金の金額のほか、債権、債務、過去の贈与の情報等が反映されていることがあるためです。

 

また、次回説明しますが、相続財産の中に現金が多く含まれる場合には、その出所を説明するために通帳の履歴を参照するが多くあります。

 

被相続人の預貯金の情報は、相続開始時点の預貯金額だけでなく、他の情報を調査するためにも有用なのです。

 

次に、定期預金についてです。

 

定期預金の残高も、通帳を見るか、残高証明書を取り寄せることで調査ができます。

 

しかし、定期預金には、普通預金には無い、考慮すべき要素があります。

 

それは、既経過利息です。

 

被相続人の生前に利息が支払われてから、次の利息が支払われるまでの間に被相続人が死亡した場合、死亡日までの間に発生していた利息(既経過利息)も相続財産になります。

 

既経過利息は、定期預金の残高証明書を取得した際に反映されていることもあります。

 

しかし、金融機関によっては、残高証明書とは別に既経過利息計算書というものの書面取得申請をしないと取得できないことがありますので、注意が必要です。

相続税2

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弁護士・税理士の鳥光でございます。

 

前回、相続税の基礎控除額のお話をしました。

 

相続財産の評価額が基礎控除額を超えるか否かは、相続税申告が必要であるか否かを判断するうえで、とても重要です。

 

もっとも、相続財産の評価は、単純ではないものもあります。

 

預貯金や現金は、金額がそのまま評価額になりますので、仮に相続財産の大半が預貯金・現金であれば、専門家でなくても評価は難しくありません。

 

不動産については、建物は原則として固定資産評価額となりますので、固定資産評価証明書を取り寄せて参照すれば、評価ができます(収益用マンションなどを持っている場合は、設備等の償却資産が固定資産評価証明書に反映されないこともあるので注意が必要です)。

 

土地の評価は、とても難解です。

 

まず、路線価地域であるか倍率地域であるかで、評価方法が異なります。

 

倍率地域にある場合、原則としては倍率表という表を用いて計算します。

 

路線価地域の場合、路線価と地積を乗じたうえで、各種の補正計算をします。

 

土地が旗竿状であったり、公道に面していないような場合の計算は、さらに複雑になります。

 

株式、投資信託等についても、相続税評価の際には、特有の計算が必要になります。

 

さらに見落としがちなのは、健康保険料等の還付金です。

 

これらは被相続人の債権であることから、相続財産になります。

 

被相続人の相続財産の評価額が、明らかに1000万円にも満たない見通しである場合は、それほど気にすることはありませんが、基礎控除額を超えるか否かが微妙なケースもあります。

 

このような場合、専門家によるシミュレーションを行うことをお勧めします。

相続税1

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弁護士の鳥光でございます。

 

渡しは税理士としても活動しております。

 

弁護士としては、相続をメインの分野のひとつとして活動しています。

 

そして、相続と、相続税とは、とても密接な関係にあります。

 

一定の評価額以上の相続財産が存在する場合、相続税申告が必要になります。

 

相続財産の取得の仕方により、相続税の金額が変わることもあります。

 

また、相続税申告期限までに遺産分割協議が終了しない場合、一旦未分割申告をするという措置が必要になります。

 

相続が発生した場合、相続税の申告・納税が必要であるか否かは、相続人にとってはとても重要なことです。

 

相続税申告・納税の要否を考えるうえで、一番初めに検討すべきことは、相続財産の評価額(正確には、ここから相続債務、葬儀費等を控除した金額)が、基礎控除額を超えているか否か、です。

 

相続財産の評価額が基礎控除を下回っていれば、相続税申告は不要です。

 
平成27年1月1日以降の基礎控除額は、次のとおりです。

 

3000万円+(600万円×法定相続人の数)

 

相続人が3名であれば、4800万円が基礎控除額となります。

 

基礎控除額は、平成26年12月31日以前は、次のとおりでした。

 

5000万円+(1000万円×法定相続人の数)

 

相続人が3名であれば、8000万円が基礎控除額となります。

 

平成26年12月31日以前に相続を経験されている方の中には、基礎控除額が変更されたことをご存じないこともありますので、注意が必要です。

 

前回の相続の際に相続税申告が必要なかったため、今回も必要ないであろう、と考えてしまうと、申告期限を渡過してしまう危険性があります。

 

これを防止するためには、相続が発生したら、一旦は相続税申告が必要か否かを、専門家に相談することをお勧めします。

相続財産管理人日誌27

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弁護士の鳥光でございます。

 

相続財産管理人についての27回目の記事となります。

 

今回は、被相続人の債務に関する調査についてです。

 

相続財産管理人の業務において、相続債務の調査方法は2つあります。

 

1つは、知れたる債権者に対するものです。

 

これは、被相続人の遺品などから判明する債務です。

 

例えば、被相続人の自宅の郵便ポストに、未払いの公共料金の請求書が入っている場合、請求元の電力会社やガス会社などに残債の金額を照会することで、債務の存在と債務額が判明します。

 

具体的な請求書がない場合でも、国税(被相続人の住所地を管轄する税務署)、住民税・固定資産税・都市計画税等(被相続人の住所地を管轄する市役所等)、国民健康保険・国民年金等(被相続人の住所地を管轄する市役所・年金事務所等)には照会を行い、滞納がないかは確認します。

 

併せて、逆に還付金の有無も確認し、有る場合には相続財産として回収します。

 

2つめは、相続債権者に対する請求の公告を行った際に、届け出によって判明する債務です。

 

被相続人の自宅等から発見した資料のみでは判明しない債務については、この方法によって調査をします。

 

相続財産管理人が選任されるケースのうち、被相続人が債務超過に陥っていた場合、債務の調査は特に重要になります。

 

債務超過ケースは、相続人がもともと不在ということは少なく、たいていは相続人が存在していたものの、全員が相続放棄をしています。

 

相続放棄に至る過程において、相続人は、被相続人宛ての貸金業者等からの請求書等を発見しています。

 

そのため、通常、一部の債務は判明します。

 

自宅不動産に抵当権が設定されていることもあるので、乙区を見ることで債権者がわかることもあります。

 

場合によっては、CICやJICCへ問い合わせ、債権者を調査することもあります。

相続財産管理人日誌26

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弁護士の鳥光でございます。

 

相続財産管理人業務に関する、26回目の記事となります。

 

今回は、建物売却までの間の火災保険加入についてです。

 

相続財産の中に、自宅建物が含まれている場合、売却換価までの間は、現状を維持する必要があります。

 

特に特別縁故者が存在する可能性がある場合、1年以上、自宅建物の換価をしないというケースもあります。

 

建物周辺に燃えやすい廃棄物があったり、乾燥する時期をまたいだりする場合、火災が生じる可能性も否めません。

 

火災が起き、近隣の住民の方などに被害が生じた場合、損害賠償責任が発生することも考えられます。

 

そこで、売却換価するまでの間、火災保険に加入するという対応をすることがあります。

 

被相続人の資産がそれなりにある場合で、かつ死亡からあまり時間が経っていない場合、もともと加入していた火災保険の期間が続いていることもあります。

 

この場合には、保険加入者の名義を相続財産管理人に変更するという手続きをとります。

 

被相続人が債務超過の状態であるなど、自宅不動産以外にめぼしい財産がない場合や、被相続人死亡から長期間が経過している場合、火災保険に加入していない(または保険期間が切れている)ことがあります。

 

この場合には、改めて相続財産管理人による火災保険加入が必要になることもあります。

 

なお、保険会社側としては、相続人不存在となっている空き家を対象とする火災保険は、極めて稀なケースです。

 

そのため、例外的な審査等が必要になることがありますので、保険会社等の窓口担当者の方へ、しっかりとした情報提供をすることが大切です。

相続財産管理人日誌25

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今回は、相続財産管理人の業務についての25回目の記事となります。

 

前回の空き家の売却に関連し、売却までの間の空き家の管理についてお話しします。

 

近年では、市町村等が空き家の管理のために相続財産管理人の選任を申立てるケースも増えており、この場合には自宅不動産が相続財産に含まれる形になります。

 

債務超過ケースでない場合、自宅不動産を売却するまでは、相続財産管理人の選任から1年以上かかることもあります。

 

この間、相続財産管理人は不動産が傷んだり、近隣の方に迷惑が掛からないように管理する必要があります。

 

特に春~夏にかけては、気温が上昇し、敷地内に雑草等が増えます。

 

虫が発生することもあります。

 

また、梅雨やゲリラ豪雨、台風などによって家屋にダメージが発生することもあります。

 

そのため、私は6月あたりからは、頻繁に不動産を訪れ、状況の確認をします。

 

特に気を付けていることは、虫の発生です。

 

具体的には、蜂と毛虫です。

 

いずれも、刺されたり触れたりすると、人体に悪影響があります。

 

近隣の方に迷惑がかかってはいけないので、発見したら駆除する必要があります。

 

調査中に自分が虫に襲われる可能性もあるため、たとえ夏であっても、長袖長ズボン、手袋、帽子を装着します(幸いコロナ禍の影響もあり、マスクもしているので、顔も覆えます)。

 

殺虫剤も持参していきますが、蜂が相手の場合は吹きかけません。

 

近くに蜂の巣があると、殺虫剤に刺激されて大群で襲われる可能性もあるためです。

 

蜂の巣があった場合は、門塀にその旨を示し、近隣の方に注意を促すとともに、専門業者等に連絡して駆除します。

相続財産管理人日誌24

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弁護士の鳥光でございます。

 

相続財産管理人の業務についての24回目の記事となります。

 

今回は、空き家の処分の方針についてです。

 

相続人不在となった相続財産の内容は、ケースバイケースであり、全く同じものは存在しません。

 

もっとも、相続財産管理人が選任選任されるケースは、類型的には、不動産、特に空き家が存在していることが多いと思われます。

 

近年では、市町村が空き家問題対策のため、相続財産管理人選任の申立てをすることもあります。

 

空き家処分の方法、時期について、明確な決まりはありません。

 

基本的には、売却、換価し、売却金の中から管理費用等を控除して、最終的には国庫へ納めるという形になります。

 

売却時期については、特別縁故者が存在する可能性が見込まれる場合には、特別縁故者の申出期間が完了するまで、空き家を売却しないということもあります。

 

特別縁故者が家屋の取得を希望する場合があるためです。

 

売却の方法についても、様々な方針が考えられます。

 

いわゆるゴミ屋敷のように、汚損が酷く、空き屋以外の財産からは清掃費用が捻出できないような場合は、現状有姿で売却するということが考えられます。

 

当然売却価格は下がりますが、高額な清掃費用の負担がなくなるので、結論としては回収できる金額に大きな差は生じないという理論になります。

 

買い手についても、検討が必要です。

 

一般的には、より良い条件で売却するために、宅建業者の方に依頼して、広く買い手を募ります。

 

もっとも、住宅地にある空き屋については、隣地の方が購入を希望することが多々あります。

 

そのため、隣地の方にお声がけすることもあります(裁判所によっては、これを推奨していることもあります)。

相続財産管理人日誌23

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弁護士の鳥光です。

 

相続財産管理人の業務の23回目の記事は、相続財産管理人選任申立て時の財産調査についてです。

 

被相続人の自宅に入ることができるなど、ある程度被相続人の財産に関する情報の調査ができる場合、最低限、現金、預貯金、(ある場合)不動産、負債の情報を裏付ける資料を探します。

 

現金については、まず財布があれば、その中身を見ます。

 

卓上金庫などがある場合、空けることができるのであれば、現金がないか確認します。

 

預貯金については、通帳、カードを探し、被相続人が口座を有している可能性のある銀行を割り出します。

 

残高については、申立時のものが取得できれば良いに越したことはありませんが、あまり重要ではありません。

 

通帳の最終記帳日が古い場合は、金融機関によっては、相続財産管理人でないと記帳できないということもあります。

 

不動産については、権利証等があれば良いですが、無い場合には住所から地番を調査し、登記を取得することができます。

 

負債については、被相続人の家に貸金業者等からの請求書がないか調べます。

 

ある程度預貯金がある場合、滞納状態にならずに銀行引き落としになっていることもあります。

 

CIC、JICCの調査まで行えれば良いですが、相続人が不在の場合には困難であると考えられます。

 

また、水道光熱費、通信費に関する情報もあれば、取得しておきます。

 

そのほか、自動車を持っていることが明らかである場合、車検証や購入時の契約書などを探します。

相続財産管理人日誌22

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弁護士の鳥光でございます。

 

22回目の相続財産管理人の業務の記事は、相続財産管理人選任申立てについてです。

 

相続財産管理人は、被相続人の利害関係人により、管轄の家庭裁判所に対して、相続財産管理人選任申立てを行うことによって選任されます。

 

申立ての際には、申立書のほか、戸籍謄本類や、被相続人の財産・負債の一覧表(目録)を提出します。

 

被相続人の財産・負債については、判明している限りで問題ありませんが、できるだけ詳細に調査、一覧化した方が、相続財産管理人選任後の処理が円滑に進みます。

 

私が申立代理人となる場合には、依頼者の方から、お持ちの資料等を(差し支えない範囲で)すべてご提供いただき、可能な限り財産・負債状況を整理してから申立てを行います。

 

この方が、相続財産管理人が選任された後、最終的な解決までの時間を短縮できる可能性が高まるためです。

 

もっとも、相続財産管理人選任申立てをする頃には、被相続人が死亡してから長い時間が経過してしまい、財産に関する情報が散逸していることもあります。

 

また、被相続人の自宅の鍵がなく、財産に関する情報の調査が困難であるということもあります。

 

特に、申立権者である利害関係人が、被相続人の親族でない場合(債権者や市町村など)には、このようなことが起きやすいです。

 

財産・負債の調査が難しい事情がある場合には、その旨を予め説明しておくと、円滑な初動対応ができるようになります。

相続財産管理人日誌21

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弁護士の鳥光でございます。

 

今回は、相続財産管理人の業務についての21回目の記事となります。

 

相続財産の調査や裁判所の手続きが一通り終わると、しばらくは、相続人とされる方が名乗り出るのを待つ等の期間があります。

 

その間も、財産の動き等がないかについては、注視が必要です。

 

不動産がある場合は、時折現場を確認し、必要な措置を行うべきです。

 

雑草などの植物が茂ってしまうと、近隣の方に迷惑がかかることがありますので、必要に応じて刈り取るなどの対応をします。

 

自宅など、建物がある場合、台風や地震などでダメージを受けることがあります。

 

破損個所がないか定期的に確認し、簡単な破損であればテープなどで補強する、大きな破損であれば業者を手配するなどの対応が必要です。

 

害虫の発生にも注意が必要です。

 

特に蜂や毛虫など、危険な虫が発生していないかを確認します。

 

私は、定期的に庭や家の中に殺虫剤を撒くようにしています。

 

もっとも、蜂がいることが明らかな場合については、殺虫剤をかけるとかえって危険であるため、専門の方に相談しています。

 

そのほか、玄関ドアや門などに、相続財産管理人の管理下にある旨の貼り紙等をしている場合は、汚損していれば取り替えます。

相続財産管理人日誌20

毎度本ブログをご覧いただき、ありがとうございます。

 

弁護士の鳥光でございます。

 

今回は、相続財産管理人の業務についての20回目の記事となります。

 

前回に引き続き、祭祀財産等についてお話しします。

 

被相続人の方が遺されたお墓、お仏壇、ご位牌、ご遺骨等は、祭祀財産という枠で扱われるため、通常の相続財産とは性質が異なります。

 

これらの財産の面倒を見る方がいらっしゃらない場合、被相続人と関係があったお寺さんなどと相談し、墓じまいをする、永代供養をしてもらうなどの措置が必要になります。

 

もっとも、本来的には、これらにかかる費用は、相続財産から当然に支払うものではありません。

 

しかし、現実的には、祭祀財産を放置するわけにもいきません。

 

そこで、実務上は家庭裁判所と協議をし、可能であるならば相続財産から永代供養費等を支出する許可をもらうということもなされます。

 

被相続人のご自宅等を捜索し、お墓のあるお寺さん等の資料を探します。

 

資料が見つかったら、そのお寺さん等に連絡を取ります。

 

そこで、墓じまいができるか、永代供養はできるか等の相談をし、できる場合には費用等も聞きます。

 

あまりに費用が高い場合、裁判所の許可がおりなかったり、そもそも相続財産からでは賄えなかったりするので注意が必要です。

 

具体的な段取りが決まりましたら、見積書等をもらい、事情説明と合わせて、裁判所に対して、費用支出のための権限外行為許可審判申立てをするという流れになります。

相続財産管理人日誌19

毎度本ブログをご覧いただき、ありがとうございます。

 

弁護士の鳥光でございます。

 

今回は、相続財産管理人の業務についての19回目の記事となります。

 

今回と次回に渡り、祭祀財産等についてお話しします。

 

相続財産管理人選任申立ての要件の一つに、相続人が不在であると考えられる場合というものがあります。

 

相続人が不在というのは、大まかに、法定相続人になり得る人がいないか、法定相続人がいたが全員相続放棄をした、という場合です。

 

法定相続人がいたケースにおいては、葬儀を済ませ、ご遺骨はお墓に安置されていることが多いです。

 

法定相続人がなり得る人がいないケースにおいては、孤独死などのことが多く、市町村等がご遺体の処理をされていることがあります。

 

このような場合、まずご遺骨の所在を確認しておく必要があります。

 

ご遺骨などの祭祀財産は、厳密には相続財産ではありません。

 

しかし、現実的には放置するわけにはいきませんので、相続財産管理人が最終的な措置をすることが多いです。

 

ご遺骨の所在が判明したら、預かっている人に連絡を取り、一旦引き取ることになります。

 

また、被相続人のご自宅に、ご先祖様やご親族様のお仏壇やご位牌があることもあります。

 

これらについても、ただちに無価値な動産として処分するわけにはいきませんので、措置を考える必要があります。

 

次回は、祭祀財産の処理について、説明します。

相続財産管理人日誌18

今回もブログをご覧いただき、ありがとうございます。

 

弁護士の鳥光です。

 

相続財産管理人日誌第18回目は、不動産の境界確認についてです。

 

被相続人が土地を有していた場合、最終的には売却換価するか、どうしても買い手がつかない場合には国庫に納めるという形になります。

 

そして、債務超過ケースでなく、特別縁故者が存在する可能性が考えられる場合には、売却換価等の処分をするまで、相続財産管理人選任時から1年以上の期間を要することもあります。

 

その間、被相続人の土地と隣接する土地にも動きが生じることがあります。

 

具体的には、隣接する土地が売買されることがあり、その際に境界確認の依頼がなされることがあります。

 

具体的には、隣接する土地の関係者が土地家屋調査士に境界調査と確定を依頼し、その土地家屋調査士から相続財産管理人に対して、境界確認の依頼がなされます。

 

基本的には、スケジュール調整をして、現地に立ち会って境界の位置を確認します。

 

境界確認は、相続財産管理人側にもメリットがあります。 

 

将来的に、被相続人の土地を売却する場合には、境界確認に関する資料が必要になります。

 

被相続人の不動産が古いものである場合、家屋内等を捜索しても、境界確認書を発見できないことがあります。

 

売却前に調査することもありますが、時間も手間もかかります。

 

そこで、前もって隣地側の負担で境界確認をし、境界確認書を取得しておくことで、被相続人の土地の売却が円滑に進められます。

相続財産管理人日誌17

今回は、相続財産管理人日誌、第17回目となります。

 

相続財産管理人弁護士としての日々の活動を記していきます。

 

相続財産管理人に選任されると、裁判所より、相続財産管理人選任官報公告がなされます。

 

相続人や受遺者がいる場合、これを見て相続財産管理人に連絡をするということがあります。

 

一方、相続財産管理人側でも、受遺者(遺言によって財産を遺贈された人)がいないか、確認をしま

す。

 

なお、法定相続人に関しましては、相続財産管理人選任申立ての際、戸籍上の相続人がすべて不在であること、または相続人になり得る人がすべて相続放棄済であることを、資料を以て疎明されていますので、よほどのことがない限り、別に存在するということはありません。

 

受遺者は、通常、自筆証書遺言か、公正証書遺言によって指定されます。

 

まず自筆証書遺言については、基本的には自宅を捜索する以外の方法はありません。

 

もし他の人が持っている場合には、官報を見て名乗り出てくれることを待つしかありません。

 

公正証書遺言の場合、あまり古いものでなければ、公証役場にて検索が可能です。

 

まず、行きやすい公証役場に連絡をし、予約を取ります。

 

そして、相続財産管理人選任審判書、自身の身分証明書を用意し、公証役場で手続きをすれば公正証書遺言の検索ができます。

 

なお、公正証書遺言の検索は無料で行うことができます。

相続財産管理人日誌16

本日も本ブログをご覧いただき、誠にありがとうございます。

 

相続財産管理人弁護士としての活動につきまして、第16回目のお題は、近隣の方とのコミュニケーションです。

 

相続財産管理人選任の申立てをした人が元相続人や親類の人である場合は、被相続人に関する情報を多く得られることが多いです。

 

逆に、申立人が元相続人や親類でない場合は、被相続人に関する情報があまり得られません。

 
具体的には、被相続人の債権者や、空き屋管理のために市町村等が相続財産管理人選任の申立てをした場合です。

 

そのような場合は、自宅訪問の際、近隣の住人の方へヒアリングをすることがあります。

 

私は、実際にこれを行ったことで、被相続人が自動車を保有していたことや、その所在地を知ることができました。

 

また、町内会長の連絡先を教えてもらえたことで、町会費の滞納があることも調査することができました。

 
そのほか、様々な資料のご提供もいただくことができたので、近隣の方との関係を良好に保つことはとても大切だと感じました。

 

近隣の方へいきなり声をかけると怖がられる可能性もありますので、相続財産管理人選任審判書のコピーや、弁護士の身分証明書等を手元に用意し、身分を明らかにしながらお話をするとスムーズにヒアリングができます。

相続財産管理人日誌15

今回は、相続財産管理人日誌、第15回目となります。

 

相続財産管理人弁護士としての、日々の体験談を記していきます。

 

相続財産の中に自宅建物がある場合、早いタイミングで捜索を行うことになります。

 

一番の目的は、相続財産に関する情報の調査です。

 

現金や通帳、株式・投資信託に関するレポート、保険証券、自動車の鍵や車検証、高価な動産(金のインゴットなど)、貸金業者との間の金銭消費貸借契約書、公共料金の請求書などを探します。

 

これらを手掛かりとして、財産目録の作成を開始します。

 

同時に、必要であれば清掃をします。

 

腐敗物がある場合は、処分が必要です。

 

私が捜索した家屋には、通電した冷蔵庫があったため、中身を処分しました。

 

また、水回り等には、殺虫剤を散布しておきます。

 

通電している場合は、万一の火災発生を防ぐため、ブレーカーを落とします。

 

電気をつけた方が捜索は楽ですが、ホコリ等に火が付くと非常に危険であるため、安全を優先します。

 

家屋を捜索する際、私は次の装備を持っていきます。

 

・ヘッドライト
・マスク
・軍手
・長袖長ズボン
・殺虫剤
・ゴミ袋
・貴重品を入れるための頑丈なビニールバッグ
・カメラ(スマホについているもの)
・ポケッタブルのバッグパック

 

基本的に、相続財産の家屋の中は暗いです。
ライトがないと捜索ができません。

 

ホコリが舞っていたり、カビが発生していることもあるため、マスクも必要です。

 

汚損している物や、危険物もあるため、軍手も必須です。

 

ケガや害虫被害を防ぐため、夏場でも長袖長ズボンを着用します。

 

殺虫剤も、訪れるたびにまいておいた方が良いです。
私は、購入した殺虫剤を、相続財産の家屋に置いています。

 

腐敗物等を廃棄するため、ゴミ袋を用意します。

 

通帳や現金、重要な書類など、汚損滅失を防ぐ必要がある物を持ち帰るため、頑丈なビニールバッグも用意します。

 

家財道具の情報を後で整理するためにも、家屋内部の様子をカメラで撮ります。
修繕が必要と考えられる破損個所がある場合は、その様子も撮っておけば、裁判所と相談する際にも役立ちます。

 

相続財産に関する資料は、想定以上に多くなることもありますので、折りたためるバッグパックも持っていきます。

相続財産管理人日誌14

本ブログをご覧いただき、誠にありがとうございます。

 

相続財産管理人弁護士としての活動日誌、第14回目は、裁判所との連絡についてです。

 

相続財産管理人に選任されると、通常選任の日から2か月後に、相続財産目録を作成し、被相続人の財産状況を報告しなければなりません。

 

もっとも、裁判所から示された指示に基づく報告のほかにも、随時連絡を取り合います。

 

特に選任されてすぐの時期は、急速に被相続人に関する情報が集まりますので、不明点が出た時には、即時に確認をする必要があります。

 

相続財産管理人が扱う財産は、すでにお亡くなりになっている方の財産であるため、事情がわからないものも多くあります。

 

そのため、扱いに迷う場合には、裁判所へ連絡し、処理について判断を仰ぐことも行います。

 

例えば、先日の記事でも紹介した、自宅の鍵の開扉、交換があります。

 

財産状況の調査や、不法侵入の防止のためという観点からは、保存行為と考えられ、権限外行為の許可審判を受ける必要はないとも考えられます。

 

他方、玄関の鍵という自宅建物の一部を破壊することを伴いますので、その意味では保存行為を超えているおそれもあります。

 

このような場合、裁判所へ確認し、権限外行為の許可の要否を尋ねます。

 

私のケースでは、保存行為となりました。

そのほか、被相続人の税金に関する通知が市役所等から届いた場合も、注意が必要です。

 

税金は課税時期が決まっておりますので、その時期によって相続債務なのか、相続開始後に発生した債務なのかが変わってきます。

 

相続債務は原則として、相続債権者に対する請求公告期間終了後に弁済(財産が少ない場合は配当)することになりますが、相続開始後の債務は、請求公告期間終了前でも、相続財産から支払います。

相続財産管理人日誌13

相続財産管理人日誌、第13回目です。

 

相続財産管理人弁護士としての日々の体験談を記していきます。

 

相続財産の中に自宅不動産が含まれ、かつ庭が存在する場合には、庭に入る門の施錠が必要になることがあります。

庭に第三者が入り込む可能性があるためです。

 

第三者といっても様々な方がいます。

不法に占有する人や、ごみ等を不法投棄する人が典型ですが、それ以外にもあり得ます。

 

都心ではあまりありませんが、地域のコミュニティのつながりが強い地域などでは、害意なく庭に入り込む方もいらっしゃいます。

中には、ご厚意で庭の掃除をしてくださっている方などもいらっしゃいます。

 

もちろん、それ自体は事実上は問題はありません。

もっとも、何か起きてしまっては、管理責任上の不備があったということにもなりかねません。

 

そこで、庭の門にも、当該不動産が相続財産管理人の管理下に置かれたため関係者以外の立入りをご遠慮いただく旨を記した看板などを設置するとともに、チェーンロック等で施錠をしておくのが得策です。
(補足しますと、管理者の承諾なく入ることは、建造物侵入罪に該当する可能性もあります)

相続財産管理人日誌12

本ブログをご覧いただき、誠にありがとうございます。

 

弁護士法人心の鳥光でございます。

 

相続財産管理人日誌第12回目は、自宅建物の鍵についてです。

 

申立人から提供してもらえるなど、自宅の鍵が入手できる場合には、これを用いて自宅建物に出入りします。
合鍵が存在しているか否かについても、確認が必要です。
許可していない人が侵入することは防ぐ必要があるためです。

 

問題となるのは、自宅の鍵が存在していないケースです。
もともと相続人がいない方が、外出中などにお亡くなりになると、警察が捜査したうえで、市役所などがご遺体を処理し、遺留品を保管します。
相続人がいない場合、一定期間経過すると遺留品が処分されます。
このようにして、自宅の鍵が滅失することがあります。

 

私が管理した家屋にも、このケースがありました。
自宅建物に入れないと、相続財産管理人としての業務遂行は極めて困難なので、鍵の開扉及び鍵交換(自宅内部に鍵がない場合)をする必要があります。
鍵の開扉と鍵交換は、保存行為とされるため、権限外行為の許可を得る必要はないとされますが、私は念のため裁判所へ確認もしました。
家屋の一部破壊を伴うためです。

 

鍵の開扉と交換は、専門の業者の方へ依頼するのが一般的です。
まずは開扉だけを行ってもらい、玄関を開けたら家の中を捜索します。
自宅の鍵が見つかれば、鍵交換が不要となることが多いためです。
(合鍵を持っている人が存在する可能性があるという観点からは、鍵を交換してしまった方が安全であるという考えもあります。)

 

鍵の開扉と交換は、それなりに費用がかかりますので、被相続人の預金解約が済んでいない場合は、一時的に立て替えたうえで、後日被相続人の預金をもって清算する流れになります。

 

私が鍵開扉、交換に立ち会ったのは真夏であったため、蚊に刺されるのを防ぐため、業者の方と一緒に虫よけスプレーをまいていました。
そうしたところ、玄関近くの物陰に蜂の巣が隠れており、虫よけスプレーに刺激されて20匹くらいの蜂が一気に出てきたことがあります。
非常に危険なので、被相続人の自宅不動産を訪れる場合には、害虫の有無の確認はとても重要です。