空き家活用の話14

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弁護士・税理士の鳥光でございます。

 

東京近郊のベッドタウンを散策すると、空き家になっていると思しき家屋を時折見かけます。
(職業柄、勘が鋭くなっています笑)

 

明らかに樹木が覆い茂っていて一切管理されていない状態の家屋もあれば、親族や近所の方が手入れをしていてきれいな状態が保たれている家屋もあります。

 

そして、あくまでも客観的なデータ調査等はしていない、主観的な話ではあるのですが、ここ最近、東京近郊のベッドタウンにある空き家が処分され、新たな家が建てられていく傾向にあると感じております。

 

私が昔から知っている、少なくとも10年以上は放置されていて、見るからに老朽化が進んで危険な状態であった家屋も(しかも、近隣の方の話によれば、持ち主はすぐ近くにお住まいとのこと)、今年に入って大手の不動産業者が買い取り、解体されて更地になりました。

 

背景のひとつには、コロナ禍によってリモートワークが普及したことがあるのではないかと思っています。

 

コロナ禍の前は、職住近接など都心に住む価値観が優勢で、東京近郊のベッドタウンは廃れていく様相を呈していました。

 
私自身も数年前までは東京の中心に近い場所に住んでいましたし、実家のあるベッドタウンはバスの本数やゴミ回収の回数が減るなどしていました。

 

ところが、コロナ禍後は、フルリモートの業務形態を設ける企業なども現れ、通勤の負荷などが問題にならなくなったことから、多少都心から遠くても安くて良い住環境が得られるベッドタウンに住居を構えたいという方が増えたのではないかと思います。

 

実家の近所においても、つい最近、駐車場であった土地をデベロッパーが買い取り、小さく分割されて複数の分譲住宅が建設されたりしています。

 

少し前までは、ベッドタウンの家は、相続時にはいわゆる「負」動産になるという風潮がありましたが、思わぬところで(土地の)価値が上がり、価値のある財産になってきたのかもしれません。

空き家活用の話13

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弁護士・税理士の鳥光でございます。

 

今回は、空き家の管理や処分をする際に、現場レベルで問題となる、残置物についてお話しします。

 

残置物とは、家屋の中に残されている物の総称です。

 

代表的なものとしては、机やいす、ベッド、テレビ、冷蔵庫、タンスなどの家財道具や、着古した衣類などが挙げられます。

 

残置物が空き家管理や処分に及ぼす影響としては、次の2点が考えられます。

 


財産に関する資料や価値のある財産を調査する作業の負荷が上がる。

 


処分費用がかかる(残置物込みで現状有姿で売却した場合には、処分費用相当額の値引きがなされる)。

 

1については、通常の生活相応の量の家財道具であれば、あまり大きな問題にはなりません。

 
問題になるのは、何らかのご事情によって多量の物品や廃棄物が家屋内に溜め込まれてしまったまま(いわゆるゴミ屋敷状態)、持ち主がお亡くなりになられたというケースです。

 
このような場合、家屋内部の捜索に要する労力はとても大きなものになります。

 
また、物が倒れてきたり、粉塵を吸い込むといった危険性もあるので、これらを回避するための準備も大切です。

 
食品など、腐敗する可能性のあるもの(またはすでに腐敗しているもの)は、放置すると汚損が進んでしまうので、すぐに回収して処分する必要があります。

 
実際私は、ゴミの山の中から、お亡くなりになられた方の預貯金や現金を発見し、管理対象としたこともあります。

 

2については、管理をする人が自力で処分することができれば、費用は相当抑えられますが、現実には難しいこともあります。

 
実際には廃棄物回収の専門業者へ依頼することになると考えられますが、その場合は数十万円の費用がかかります。

 
空き家を改修して住んだり、貸したりする意思がなく、売却する場合には残置物を残したまま現状有姿で買い取ってもらうという方法もあります。

 
この場合、残置物の処理は買主側が行うことになるので、費用負担も買主になります。

 
売却価格は、残置物の処分費用を差し引いたものになりますので、土地の価値や家屋の再利用の可否などの諸条件によっては、売却価格はとても低くなる可能性があります。

 
私が管理していた空き家においても、家屋内には多量の残置物があり、土地の面積は小さく、家屋も取り壊すしかないほど老朽化していたため、東京近郊ではありましたが、売却価格は50万円程度となったケースもあります。
(それでも引き取ってもらえただけ助かりました)

空き家活用の話12

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今回は、所有者不在・所有者不明の空き家に関して、法律的な観点のレベルではないのですが、問題意識のレベルで感じることについて述べます。

 

相続人が不存在になってしまった空き家や、所有者が不存在または連絡が取れない空き家を再び流通させることができる制度として、相続財産清算人や不在者財産管理人、所有者不明土地管理制度があります(所有者不明土地管理制度の場合、土地とその上の建物が対象)。

 

これらの制度においては、空き家やその敷地の活用の観点からは、現状2つのハードルが存在すると思っております。

 

1つめは、空き家やその敷地を買いたいだけの方は、申立権者になれないという点です。

 

空き家やその敷地から、何らかの侵害を受けている隣地所有者など、法的な請求権を有している方であれば申立ては可能と考えられますが、そうでない場合には現状として申立ては難しいといえます。

 

また、仮に空き家やその敷地を買いたい方が申立てをして、清算人や管理人が選任されたとしても、必ずしもその申立てた方に売り渡すことができるとは限りません。

 

不動産の売却は裁判所の許可を得る必要があるため、他により良い条件で買い受けるという方がいる場合、一般論としては、そちらに売り渡すことになってしまいます。

 

住宅地などの場合、空き家が存在している土地の隣地所有者が、当該土地の買受けを希望することがあります。

 

このような場合、実務上は、いったん専門業者の方に現状有姿、境界確定なし、契約不適合責任免除の条件で買い取ってもらい、この専門業者の方が諸問題を片付けた後で隣地所有者の方に買い取ってもらうという形になることもあります。


(ボロボロの空き家が存在し、塀なども壊れている土地建物の場合、専門業者でない方に契約不適合責任免除で売却するのは、現実的には難しいです)

 

2つめは、予納金が高額になる可能性があるという点です。

 

相続財産清算人選任の申立ての場合、被相続人の財産状況によっては、裁判所の裁量で予納金の減額がなされることもありますが、一律で100万円としている裁判所もあるともいわれています。

 

所有者不明土地管理制度の方の予納金は、相続財産清算人選任申立てに比べると低めになるとは聞いてはおりますが、まだ始まったばかりの制度ですので、相場が固まっていないというのが現状であると考えられます。

 

予納金を何らかの形で手当てすることで、申立人の負担を軽減するスキームを組むことができるのが望ましいと思っています。

 
思い付きのレベルですが、空き家やその敷地を買いたい方が、申立権者に予納金等を出資して相続財産清算人選任申立てをし、その後空き家やその敷地を買いたい方が当該不動産を買い受ける、というような仕組みがあったらな、と思います。

空き家活用の話11

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今年、土地所有法制が大きく変わりました。

 

相続土地国庫帰属制度、所有者不明土地管理制度、管理不全土地管理制度が施行され、すでに申立ても行われはじめています。

 

使い勝手の面では様々な意見が出されているところですが、まだ始まったばかりの制度ですので、これから少しずつブラッシュアップされていくのではないかと思います。

 

利用や管理が困難になってしまっていた土地や建物に対応する制度が生み出されたこと自体が、大きな一歩だと感じています。

 

これらの制度は、現時点においては、区分所有建物についてはカバーされていません。

 

マンションなどの区分所有建物においても、所有者が不明になっていたり、誰も済んでいない状態になっているものが増えています。

 

区分所有建物については、例えば共用部分の変更決議や建て替え決議など、戸建ての建物にはない特有の管理手続きが存在します。

 

そして、所有者と連絡が取れない区分所有建物が増えてしまうと、これらの手続きをとることができず、マンション全体の管理が滞ってしまうという問題があります。

 

また、放置され続けているなど、管理不全の専有部分が存在している場合にも、適切な管理を行えるようにする必要もあります。

 

所有者の所在がわからなかったり、所有者と連絡が取れない区分所有建物の管理については、現在法制審議会でも検討がなされているとのことですので、今後の展開に注目したいところです。

空き家活用の話10

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ニュースサイトなどをチェックしていると、空き家に関する記事をよく見かけるようになりました。

 

京都では空き家などに課税するいわゆる空き家税の導入がなされることが決定したり、高級住宅地として有名な東京の世田谷区は全国の自治体の中で最も空き家が多いという話題が出てくるのは、空き家に対する関心の高まりを表しているのだと考えられます。

 

これらの空き家の中には、所有者がいるが居住・管理がされていないものと、相続人不在により所有者がいなくなってしまったものが混じっていると考えられます。

 

令和5年4月1日以降は、どちらのケースにおいても、法律上対応ができるようにはなりました。

 

空き家が増えることの問題は、主に2つあると考えております。

 

1つめは、倒壊や汚損、獣害・虫害、不法占有などによる、近隣住民からみた住環境の悪化です。

 

実際、近隣住民から住環境が悪化している旨の申入れを受けた自治体が、相続財産清算人(旧相続財産管理人)選任の申立てをするというケースもあります。

 

もう1つは、住宅地の供給不足です。

 

特に、ベッドタウンや住宅街など、比較的人口が多い地域で問題になります。

 

京都での空き家税の導入の背景には、住宅の供給不足という事情があったと言われています。

 

自治体が土地の有効活用のため、近隣住民からの申入れがなくても、率先して相続財産清算人(旧相続財産管理人)の選任申立てをしているというケースもあります。

 

世田谷区などは、基本的にはとても価値の高い土地であると考えられますので、空き家になったまま再利用できない状態が続いてしまうのは、社会的にも損失が大きいと考えられます。

 

今後、自治体主導の空き家対策が進んでいくことを望みます。

空き家活用の話9

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受け持っている相続財産管理人(令和5年4月1日以前に選任)としての事案が、一つ終了しました。

 

被相続人の財産を、原則的にはすべて売却換価し、預貯金にしたうえで、小切手化して国庫に引き継ぐという手続きをします。
(相続人がおらず、債権者への弁済、特別縁故者への財産分与後に財産が残る場合)

 

銀行での手続きには、予想外に時間を要することもあるので、スケジュールに余裕をもって手続きをします。

 

国庫に納める預貯金の中には、被相続人の自宅土地建物を売却した際の売却金も含まれています。

 

義務はないのですが、見届けたいという思いから、被相続人の自宅土地建物があった場所に行ってみました。

 

すでに解体が済み、更地となっていました。

 
一部擁壁が壊れていたため、その修理が始められていました。

 

おそらく、きれいに造成して生まれ変わった後、今後ご自宅を建てたいという方に譲渡されるのだと思います。

 

こうして、時が止まってしまった不動産が、また新たな世代に渡っていくというのは、いつ見ても良いものだと感じます。

 

個人的には、もう一歩先のことにもチャレンジしていきたいと思っております。

 

まだ具体的な計画等があるわけでなありませんが、空き家を解体せず、クリーニングやリフォームをして次の方に住んでもらうというモデルを作れないかと思っています。

 

または、DIYの技術を持っている方、DIYを趣味としている方に譲渡し、古い空き家のDIYをしながら生活することを楽しんでいただくというのも良いと考えております。

空き家活用の話8

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所有者不明土地管理制度及び所有者不明建物管理制度にならび、管理不全土地管理制度及び管理不全建物管理制度も2023年(令和5年)4月1日より開始(施行)されました。

 

管理不全土地管理制度及び管理不全建物管理制度は、所有者による適切な管理が行われていないために、近隣に悪影響や危険を生じさせているまたは生じさせるおそれがある不動産について、裁判所が管理人を選任する制度です。

 

裁判所のWebサイトにも、管理不全土地(建物)管理命令の申立て等に関する書式が用意されています。

 

https://www.courts.go.jp/tokyo/saiban/vcmsFolder_1958/vcms_1958.html

 

申立てができるのは、利害関係人および地方公共団体の長等とされています。

 

なお、管理不全土地管理制度及び管理不全建物管理制度に基づく申立てがなされた場合、所有者の手続保障を図る観点から、原則として裁判所は土地・建物の所有者の陳述を聴かなければなりません。

 

管理人は、管理不全土地・建物の手入れや修繕等の保存行為及び管理不全土地・建物の性質を変えない範囲での賃貸等の利用行為、土地・建物の価値を高める改良行為について、裁判所の許可を得ずに行うことができます

 

土地・建物を処分する(処分行為)ときには、所有者不明土地管理制度及び所有者不明建物管理制度と同様、裁判所の許可を得ることが必要です。

 

特に、土地の売却や建物の取り壊しを行う場合には、裁判所が許可を出すための要件として、土地・建物の所有者の同意が必要とされています。

 

なお、先ほど、管理不全土地管理制度及び管理不全建物管理制度に基づく申立てがあった際は、裁判所は原則として所有者の陳述を聴かなければならいと説明しました。

 

その際、管理対象となる土地、建物に所有者が居住しており、管理人による管理行為を妨害することが明確に予想され、管理人による実効的な管理が期待できないような場合には、民事訴訟に基づく解決(所有権に基づく妨害排除請求や妨害予防請求などの物権的請求権の行使等)によって対応することが適切であると判断され、管理命令が発令されないということも考えられます。

空き家活用の話7

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所有者不明土地管理制度及び所有者不明建物管理制度が、2023年(令和5年)4月1日より開始(施行)されました。

 

所有者不明土地管理制度は所有者不明となっている不動産について裁判所が管理人を選任する制度です。

 

裁判所のWebサイトにも、所有者不明土地(建物)管理命令の申立て等に関する書式が用意されています。

 

https://www.courts.go.jp/tokyo/saiban/vcmsFolder_1958/vcms_1958.html

 

所有者不明土地管理制度は、従来の相続財産管理(清算)制度や、不在者財産管理制度と異なり、「不動産単位」で管理を行うことが可能です。

 

現行の制度では対象となる人(不在者や被相続人)の全財産を管理することになるのに対し、所有者不明土地管理制度は特定の不動産のみを管理することができます。

 

申立ては、利害関係人および地方公共団体の長等とされています。

 

裁判所が申立てに基づいて選任した管理人には、管理対象の不動産と当該不動産にある動産の管理権限が与えられます。

 
そして、管理人は、管理対象の不動産の管理だけでなく、裁判所の許可を得て不動産の売却、建物の取り壊しなどの処分もできます。

 
不動産を不法に占拠する者がいた場合の明け渡し請求なども行えます。

 

もっとも、管理人が選任されるまでの審査の基準は、相続財産管理人(清算人)の選任の申立てに比べると、厳格なものであろうことが想定されます。

 

裁判所が用意している申立書等の書式を見ても、所有者の調査状況等についての報告書等の添付が必要であることからも明らかです。

 

相続財産管理人(清算人)の選任のときとは異なり、理論上は土地建物の所有者が存在しています。

 

その土地建物について、所有者以外の者に売却や取壊しの権限を与えるというのは、所有者に対する大きな権利制限を伴うことから、管理人選任のための審査が厳格になるのは当然のことでもあります。

空き家活用の話6

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相続財産管理人制度に関わる、民法の一部を改正する法律が、令和5年4月1日に施行されました。

 

主要な変更点は、以下のとおりです。
特に官報公告の期間等については、大幅な変更が発生しますので、実務上の影響はかなりあると考えられます。

 

1 相続財産管理人の呼称が「相続財産清算人」に変更されます。

 

2 官報公告に関する規律に大きな変更があります。

 

現状では、以下の手続きを順次行う必要があり、権利関係の確定まで10か月以上要します。

 


家庭裁判所による相続財産管理人の選任公告

 


相続財産管理人による相続債権者、受遺者への請求申出の公告

 


相続財産管理人が家庭裁判所に申し立てて行う相続人捜索の公告

 

これが改正により、次のようになります。

 


相続人捜索の公告は家庭裁判所が職権で行う

 


相続財産清算人の選任公告と、相続人捜索の公告は同時に行う(最低6か月間)

 


相続財産清算人は、相続財産清算人選任公告と相続人捜索の公告後、相続債権者・受遺者への請求申出の公告を、最低2か月かつ相続財産清算人選任公告と相続人捜索の公告期間内に満了するように行う

 

上述の変更は、令和5年4月1日以後に相続財産清算人の選任審判が確定した事件に適用されます。

空き家活用の話5

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今回は空き家の持ち主の探し方について、大まかなお話をします。

 

空き家は不動産なので、所有者の情報を調査するためには、まずは登記(不動産全部事項証明書)を見ることから始めます。

 

登記に記載された名義人が、必ずしも現在の所有者であるとは限りませんが、所有者を調査するための出発点としては重要な情報となります。

 

登記の甲区には、所有者等に関する情報が記されています。

 

ここで参照すべき情報は、所有者の氏名と住所です。

 

もし所有者の住所が、空き家の場所とは異なる場合、住所地を訪問するか、手紙を送付するなどして、空き家に関する用件を伝えてみます。

 

登記に記載された所有者の住所が空き家の場所と同じであった場合や、所有者の住所が空き家の場所と異なる場合であっても所有者と連絡が取れない場合、近隣住民の方にヒアリングをすることもあります。

 

登記の原因が「相続」ではない場合(「売買」など)や、「相続」であっても数十年前のことである場合、近隣住民の方へのヒアリングにより、登記名義人が死亡していることが判明するということもあります。

 

この場合、相続人を調査することになります。

 

ただし、相続人を調査する場合には戸籍謄本の取得が必要となります。

 

通常、被相続人の直系親族または配偶者でないと、被相続人(お亡くなりになった人)の戸籍謄本を取得することはできません。

 

空き家の樹木が自身の土地に越境しているなど、何らかの法的な権利に基づく請求をする場合であれば、専門家に依頼することで相続人にコンタクトできることもあります。

空き家活用の話4

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今回は、空き家活用のお話しの4回目です。

 

先日、私が相続財産管理人として管理していた空き家の売却、引渡しをしました。

 

管理の対象であった空き家は、最後の住人がお亡くなりになってから10年以上手入れがされないままの状態でした。

 

塀が崩れていて周辺に被害を加える可能性がある、1階の窓が開いていたので不審者が侵入し住み着く可能性があるなど、近隣住民の方が不安を感じている空き家でした。

 

駅から遠くはないものの、敷地面積が狭く、家屋も非常に老朽化していたことに加え、家屋内も非常に汚損が進んでいたため、正直なところ好条件での売却は困難な空き家でした。

 

不動産業者様にご協力いただき、なんとか現状有姿で買い取ってくれる方を見つけることができました。

 

引渡しからしばらく経った後、管理していた空き家を見に行きました。

 

そうしたところ、すでに家屋は解体されていました。

 

これにより、倒壊や不審者による占有等の危険は解消し、近隣住民の方にもご安心いただくことができました。

 

最後の所有者がお亡くなりになり、誰も世話をすることができなくなってしまった空き家を生まれ変わらせることができるというのは、相続財産管理人の仕事の中でも、特にやりがいを感じる部分です。

 

ある程度発達している地域に限られるかもしれませんが、近年、自治体が空き家管理のために相続財産管理人の選任を申立てるケースも増えています。

 

私が相続財産管理人として選任されたのも、そのような申立てに基づくものです。

空き家活用の話3

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空き家の売却を考える場合、法律面においても、多くの観点での検討が必要になります。

 

とても重要な検討事項のひとつが、契約不適合責任の扱いです。

 

契約不適合責任とは、あらかじめ目的物に対して取り決めた種類や品質、数量に関して、契約内容に適合しない引き渡しをおこなった場合につき、売主側で負担する責任のことをいいます。

 
契約不適合責任は、2020年4月施行の改正後民法で定められた制度です。

 

空き家の場合、一般的な一戸建て住宅の売却とは事情が異なり、現在の所有者が土地や建物に関する事情を把握していないことも多くあります。

 

特に元の持ち主が高齢者として何年も生活していたという経緯があったりすると、家屋内部が荒れ放題で、物で溢れかえっていることもあります。

 

現在の所有者が捜索をすることも難しく、家の構造や、隣接地との境界に関する書類なども、発見が困難な状態になっていることもあります。

 

さらに、長年放置されていた空き家の場合、老朽化が進み危険な状態になっている、育った樹木が越境している、ということもあります。

 

相続人ではなく、相続財産管理人が空き家を管理、処分する場合は、より事情を把握しにくい状況になります。

 

そこで、契約不適合責任を免責する条項を付して売却することもあります。

 

契約不適合責任を免責する場合、売却価格はどうしても下がる傾向にありますが、放置を続けていてもメリットはあまりありませんので、売れるうちに処分する方が良いと考えられます。

 

また、契約不適合責任を免責する条件での売買は、買主側がリスクを負担することになります。

 

そのため、現状有姿で空き家を買い取るノウハウ等を有している専門業者へ売却することも多く行われています。

空き家活用の話2

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前回に続き、空き家活用について説明していきます。

 

いままで、ある土地・建物の所有者が理論上不存在ではなかったとしても、複雑な相続が発生するなど所有者の調査が困難であったり、所有者と連絡が取れない場合、原則としてその土地・建物の売却をし、他の方が利活用するということができませんでした。

 

所有者が不存在である土地・建物以上に、所有者が存在している土地・建物の処分は困難になることがあるのです。

 

所有者が存在しているがゆえに、当該所有者の売却等の意思表示が得られなければ、土地・建物の所有権を移転することができないためです。

 

令和5年4月1日施行となる、土地・建物に特化した財産管理制度のひとつに、所有者不明土地・建物の管理制度というものがあります。

 

これは、調査を尽くしても、所有者やその所在を知ることができない土地・建物について、利害関係人が地方裁判所に申し立てることによって、その土地・建物の管理を行う管理人の選任がなされるという制度です。

 

裁判所の許可を得ることで、管理人は、土地・建物の売却をすることができるとされているため、空き家の利活用に直接つながっていきます。

 

相続財産管理人の選任手続きと似ていますが、所有者が存在していてもよいこと、管理の対象が土地・建物に限定できるという点で異なります。

 

具体的な運用はこれからであるため、どのような事実と疎明資料があれば「調査を尽くしても、所有者やその所在を知ることができない」とされるか、および、どのような者が「利害関係者」にあたるか、については今後の実務の積み重ねによって確立されていくかと思います。

空き家活用の話1

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弁護士・税理士の鳥光でございます。

 

社会一般、そして法律の世界においても、昨今空き家に関する話題をよく目にするようになりました。

 

人口減少による土地・家屋の需要減、資源再利用の風潮、都市部への人口集中を経てのリモートワーク環境の浸透などにより、空き家の活用に対する関心が活発化してきているのだと感じます。

 

空き家の属性にもいろいろあり、それに伴って分類の仕方も様々です。

 

ひとつの分類の仕方として、所有者が存在する空き家と、所有者不存在の空き家に分けるというものがあります。

 

所有者が存在する空き家は、さらに所有者が判明していて連絡が取れる空き家と、所有者が判明しない(調査が非常に大変)または所有者と連絡が取れない空き家に分けられます。

 

空き家の活用・再利用、または空き家を解体して宅地を再利用するという目的を達成するにあたり、最も対応が難しいのが、所有者が判明しない(調査が非常に大変)または所有者と連絡が取れない空き家です。

 

所有者不存在の空き家、すなわち所有者が死亡し相続人不存在となった空き家は、費用負担はあるものの、相続財産管理人の選任さえされれば前に進み、いずれ空き家の処分、清算がなされます。

 

所有者が判明していて連絡が取れる空き家は、所有者の意思に左右されるところはもちろんありますが、提示価格を上げる等により売却が進む可能性を上げることができます。

 

所有者が判明しない(調査が非常に大変)または所有者と連絡が取れない場合、相続財産管理人の選任はできず、かつ売却の交渉もできません。

 

この状態の空き家の活用は、事実上不可能に近いものでした。

 

しかし、所有者不明土地・建物を管理する制度が創設され、令和5年4月1日に施行されることになりました。

 

次回、この内容について触れたいと考えております

相続税10

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弁護士・税理士の鳥光でございます。

 

今回は、相続税申告における、未成年者控除について説明します。

 

未成年者控除とは、相続人が未成年者である場合に、その未成年者の相続税額から一定の額を控除できるという制度です。

 

未成年者が成人に達するまでの養育費や教育費等を考慮し、税負担を軽減するという趣旨により設けられた制度です。

 

障害者控除と同じく、課税価格ではなく、相続税額から控除できるという点がポイントで、未成年者の年齢によっては、大きな相続税の軽減効果があります。

 

相続税額から控除される額は、18歳から相続開始時の年齢(1年未満の端数は切り捨て)を差し引いた数値に10万円を乗じた金額です。

 

未成年者控除が受けられる人は、次のすべてに当てはまる人です。

 


相続財産を取得した人が法定相続人であること(相続放棄があった場合には、その放棄がなかったものとした場合の相続人)

 


相続開始日に未成年者であること

 


無制限納税義務者であること。

 

そして、未成年者の相続税額が未成年者控除額より少ない場合には、控除不足額が生じます。
その場合には、不足額は、扶養義務者の相続税額から控除して納付することができます。

相続税9

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相続税申告に関する、今回のテーマは、相続人に障害者がいる場合についてです。

 

相続人が障害者である場合、障害者控除が適用されることがあります。

 

障害者控除とは、相続人が85歳未満で障害者のときは、その障害者が満85歳になるまでの年数1年につき、10万円(特別障害者の場合20万円)で計算した額を相続税の額から控除できると言う制度です。

 
年数の計算にあたっては、1年未満の期間がある場合は、切り上げて1年として計算します。

 

相続財産の評価額からではなく、相続税の額から控除できるという点がポイントであり、大きな相続税の軽減効果があります。

 

障害者控除をうけることができるのは、以下のすべてに当てはまる人です。

 

1 相続財産を取得した時点で日本国内に住所があること

 

2 相続財産を取得した時点で障害者であること
上述のとおり、一般障害者と特別障害者で、控除額が変わります。
一般障害者は、身体障害者手帳上の障害等級3級~6級、精神障害者保健福祉手帳上の障害等級2級または3級、のいずれかです。
特別障害者は、身体障害者手帳上の障害等級が1級または2級、精神障害者保健福祉手帳上の障害等級が1級、のいずれかです。
相続税申告時に、疎明資料として、これらの手帳等の写しを税務署に提出します。

 

3 相続財産を取得した人が法定相続人であること

相続税8

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弁護士・税理士の鳥光でございます。

 

今回は、通常の遺産分割協議を行った場合の、相続税申告の際に用いる戸籍、法定相続情報一覧図についてです。

 

まず、戸籍についてです。

 

相続税は、相続が発生した場合に課される税ですので、被相続人が死亡したことを示すため、被相続人の死亡の記載のある戸籍が必要になります。

 

また、相続人を確定させる必要がありますので、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍と、相続人の戸籍が必要です。

 

代襲相続が発生している場合には、被代襲者の死亡の記載のある戸籍も必要です。

 

被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍は、取得に時間と手間を要することがあるので、注意が必要です。

 

婚姻などによって新たな戸籍が作られた際、本籍地のある市町村が変わることがあります。

 

このような場合、各市町村に対して戸籍の請求をしなければなりません。

 

戸籍がある市町村が離れている場合には、郵送による請求を行うこともあります。

 

平成29年5月29日以降であれば、戸籍の束に代わり、法定相続情報一覧図というものも使えます。

 

法定相続情報一覧図とは、被相続人(亡くなられた方)の法律で定められた相続関係を一覧にした家系図のようなものです。

 

被相続人の相続人が誰であるかを、法務局の登記官が証明します。

 

一枚で戸籍の束の代わりになりますし、無料で複数枚取得できますので、相続税申告のほか、相続登記や金融機関における預金解約手続きなどを並行して進める際にも便利です。

 

もっとも、法定相続情報一覧図を取得する場合には、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍と、相続人全員の戸籍が必要になります。

相続税7

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弁護士・税理士の鳥光でございます。

 

今回は、相続税申告における遺産分割協議と遺言の取り扱いです。

 

遺産分割協議や遺言は、誰がどの相続財産を取得するかを記したものです。

 

これにより、それぞれの相続人や受贈者の相続税額が確定します。

 

また、小規模宅地等の特例や、配偶者控除は、遺産分割協議済であるか、または遺言があることが適用要件になっています。

 

そのため、これらの適用を受けようとする場合には、相続税申告書に、遺産分割協議書または遺言書の写しを添付します(遺産分割協議書の場合、相続人全員の印鑑証明書も必要です)。

 

遺産分割協議書を作成する場合、被相続人の財産を調査したうえで、どの相続人が、どの相続財産を取得するか、相続人間で協議したうえで、相続人全員の署名押印が必要となります。

 

各相続人が離れて住んでいる場合などには、遺産分割協議書の作成にも時間がかかることがあります。

 

相続税の申告期限は、被相続人の死亡を知った日から10か月ですので、遺産分割協議書の作成にかかる時間には注意が必要です。

 

遺産分割に争いがあり、相続税の申告期限までに遺産分割協議書の作成ができない場合には、一旦法定相続割合で分割したと仮定して申告をします(未分割申告)。

 

この場合、特例が適用されないため、遺産分割協議がまとまったら、修正申告や更生の請求を行うことになります。

 

もし、相続人間での話し合いだけでは遺産分割ができず、家庭裁判所において調停を行った場合には、遺産分割協議書の代わりに調停調書を用います。

相続税6

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今回は、相続税申告準備における土地の評価についてです。

 

土地の評価は、相続財産の評価の中でも、相当難解な部類に入ります。

 

相続税関連の書籍の中には、土地の評価に特化した書籍もあるくらいです。

 

そのため、ここでは土地の評価の概要について説明します。

 

相続税の申告の際の土地の評価は、大きく分けて、路線価による評価と、倍率による評価があります。

 

まず、国税庁が公開している、評価対象の土地を含む路線価図を参照し、評価対象の土地が路線価が設定されている地域に存在するのか、倍率地域に存在するのかを調べます。

 

路線価が設定されている場合、路線価(1㎡あたりの単価)に、評価対象の土地の面積を乗じて算出した金額が、評価額の基礎となります。

 

この金額に、土地の計上に応じて、間口狭小補正、奥行価格補正、不整形地補正などを施し、評価していきます。

 

また、土地を貸し付けている場合には、路線価図に記載された借地権割合を控除します。

 

倍率地域の場合、固定資産評価額に対して、倍率表に記載された倍率を乗じた金額が評価額になります。

単純に掛け合わせる数字(倍率)が記載されている場合は、簡単に計算ができますが、宅地比準方式という計算方法が記載されていることがあります。

 

これは、対象の土地の1㎡あたりの近傍宅地価格を計算の基礎とするものです。

 

近傍宅地価格は、自治体によっては、固定資産評価証明書の発行の際に申請することで開示してくれます。

 

しかし、開示していない自治体もあります。

 

そのような場合には、自治体の担当部署へ電話連絡をし、近傍宅地価格をヒアリングすることもあります。

相続税5

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弁護士・税理士の鳥光でございます。

 

今回は、相続税申告準備における、建物の評価についてです。

 

被相続人が建物を所有していた場合、建物は相続財産となります。

 

建物の評価は、相続開始日の属する年度の固定資産評価額が基本となります。

 

固定資産評価額は、固定資産税納税通知書を参照するか、固定資産評価額証明書または名寄帳を取得することで調査可能です。

 

建物が、被相続人の自宅など、自用のものである場合には、固定資産評価額が相続税評価額となります。

 

建物が賃貸物件であり、実際に借家人がいる場合には、固定資産評価額をもとに以下の計算式によって評価額を計算します。

 

建物の固定資産税評価額 × (1 - 借家権割合 × 賃貸割合)

 

賃貸割合は入居率(正確には詳細な計算が必要です)、借家権割合は30%とされています。

 

貸家は、賃貸人側の権利の制約が大きいことから、評価額を下げることができます。

 

被相続人が賃貸物件を所有している場合には、もう一点考慮すべき事項があります。

 

特に一棟のマンションやアパートを所有している場合に多いのですが、付属の施設・設備の評価です。

 

駐車場や、マンションの設備については、固定資産評価証明書等には反映されないことがあります。

 

この場合には、被相続人の過去の確定申告書等を調査し、取得価額、償却額等を計算する必要があります。