空き家活用の話8

今日も本ブログをご覧いただき、ありがとうございます。

 

弁護士・税理士の鳥光でございます。

 

所有者不明土地管理制度及び所有者不明建物管理制度にならび、管理不全土地管理制度及び管理不全建物管理制度も2023年(令和5年)4月1日より開始(施行)されました。

 

管理不全土地管理制度及び管理不全建物管理制度は、所有者による適切な管理が行われていないために、近隣に悪影響や危険を生じさせているまたは生じさせるおそれがある不動産について、裁判所が管理人を選任する制度です。

 

裁判所のWebサイトにも、管理不全土地(建物)管理命令の申立て等に関する書式が用意されています。

 

https://www.courts.go.jp/tokyo/saiban/vcmsFolder_1958/vcms_1958.html

 

申立てができるのは、利害関係人および地方公共団体の長等とされています。

 

なお、管理不全土地管理制度及び管理不全建物管理制度に基づく申立てがなされた場合、所有者の手続保障を図る観点から、原則として裁判所は土地・建物の所有者の陳述を聴かなければなりません。

 

管理人は、管理不全土地・建物の手入れや修繕等の保存行為及び管理不全土地・建物の性質を変えない範囲での賃貸等の利用行為、土地・建物の価値を高める改良行為について、裁判所の許可を得ずに行うことができます

 

土地・建物を処分する(処分行為)ときには、所有者不明土地管理制度及び所有者不明建物管理制度と同様、裁判所の許可を得ることが必要です。

 

特に、土地の売却や建物の取り壊しを行う場合には、裁判所が許可を出すための要件として、土地・建物の所有者の同意が必要とされています。

 

なお、先ほど、管理不全土地管理制度及び管理不全建物管理制度に基づく申立てがあった際は、裁判所は原則として所有者の陳述を聴かなければならいと説明しました。

 

その際、管理対象となる土地、建物に所有者が居住しており、管理人による管理行為を妨害することが明確に予想され、管理人による実効的な管理が期待できないような場合には、民事訴訟に基づく解決(所有権に基づく妨害排除請求や妨害予防請求などの物権的請求権の行使等)によって対応することが適切であると判断され、管理命令が発令されないということも考えられます。

空き家活用の話7

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所有者不明土地管理制度及び所有者不明建物管理制度が、2023年(令和5年)4月1日より開始(施行)されました。

 

所有者不明土地管理制度は所有者不明となっている不動産について裁判所が管理人を選任する制度です。

 

裁判所のWebサイトにも、所有者不明土地(建物)管理命令の申立て等に関する書式が用意されています。

 

https://www.courts.go.jp/tokyo/saiban/vcmsFolder_1958/vcms_1958.html

 

所有者不明土地管理制度は、従来の相続財産管理(清算)制度や、不在者財産管理制度と異なり、「不動産単位」で管理を行うことが可能です。

 

現行の制度では対象となる人(不在者や被相続人)の全財産を管理することになるのに対し、所有者不明土地管理制度は特定の不動産のみを管理することができます。

 

申立ては、利害関係人および地方公共団体の長等とされています。

 

裁判所が申立てに基づいて選任した管理人には、管理対象の不動産と当該不動産にある動産の管理権限が与えられます。

 
そして、管理人は、管理対象の不動産の管理だけでなく、裁判所の許可を得て不動産の売却、建物の取り壊しなどの処分もできます。

 
不動産を不法に占拠する者がいた場合の明け渡し請求なども行えます。

 

もっとも、管理人が選任されるまでの審査の基準は、相続財産管理人(清算人)の選任の申立てに比べると、厳格なものであろうことが想定されます。

 

裁判所が用意している申立書等の書式を見ても、所有者の調査状況等についての報告書等の添付が必要であることからも明らかです。

 

相続財産管理人(清算人)の選任のときとは異なり、理論上は土地建物の所有者が存在しています。

 

その土地建物について、所有者以外の者に売却や取壊しの権限を与えるというのは、所有者に対する大きな権利制限を伴うことから、管理人選任のための審査が厳格になるのは当然のことでもあります。

空き家活用の話6

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相続財産管理人制度に関わる、民法の一部を改正する法律が、令和5年4月1日に施行されました。

 

主要な変更点は、以下のとおりです。
特に官報公告の期間等については、大幅な変更が発生しますので、実務上の影響はかなりあると考えられます。

 

1 相続財産管理人の呼称が「相続財産清算人」に変更されます。

 

2 官報公告に関する規律に大きな変更があります。

 

現状では、以下の手続きを順次行う必要があり、権利関係の確定まで10か月以上要します。

 


家庭裁判所による相続財産管理人の選任公告

 


相続財産管理人による相続債権者、受遺者への請求申出の公告

 


相続財産管理人が家庭裁判所に申し立てて行う相続人捜索の公告

 

これが改正により、次のようになります。

 


相続人捜索の公告は家庭裁判所が職権で行う

 


相続財産清算人の選任公告と、相続人捜索の公告は同時に行う(最低6か月間)

 


相続財産清算人は、相続財産清算人選任公告と相続人捜索の公告後、相続債権者・受遺者への請求申出の公告を、最低2か月かつ相続財産清算人選任公告と相続人捜索の公告期間内に満了するように行う

 

上述の変更は、令和5年4月1日以後に相続財産清算人の選任審判が確定した事件に適用されます。

空き家活用の話5

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今回は空き家の持ち主の探し方について、大まかなお話をします。

 

空き家は不動産なので、所有者の情報を調査するためには、まずは登記(不動産全部事項証明書)を見ることから始めます。

 

登記に記載された名義人が、必ずしも現在の所有者であるとは限りませんが、所有者を調査するための出発点としては重要な情報となります。

 

登記の甲区には、所有者等に関する情報が記されています。

 

ここで参照すべき情報は、所有者の氏名と住所です。

 

もし所有者の住所が、空き家の場所とは異なる場合、住所地を訪問するか、手紙を送付するなどして、空き家に関する用件を伝えてみます。

 

登記に記載された所有者の住所が空き家の場所と同じであった場合や、所有者の住所が空き家の場所と異なる場合であっても所有者と連絡が取れない場合、近隣住民の方にヒアリングをすることもあります。

 

登記の原因が「相続」ではない場合(「売買」など)や、「相続」であっても数十年前のことである場合、近隣住民の方へのヒアリングにより、登記名義人が死亡していることが判明するということもあります。

 

この場合、相続人を調査することになります。

 

ただし、相続人を調査する場合には戸籍謄本の取得が必要となります。

 

通常、被相続人の直系親族または配偶者でないと、被相続人(お亡くなりになった人)の戸籍謄本を取得することはできません。

 

空き家の樹木が自身の土地に越境しているなど、何らかの法的な権利に基づく請求をする場合であれば、専門家に依頼することで相続人にコンタクトできることもあります。

空き家活用の話4

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今回は、空き家活用のお話しの4回目です。

 

先日、私が相続財産管理人として管理していた空き家の売却、引渡しをしました。

 

管理の対象であった空き家は、最後の住人がお亡くなりになってから10年以上手入れがされないままの状態でした。

 

塀が崩れていて周辺に被害を加える可能性がある、1階の窓が開いていたので不審者が侵入し住み着く可能性があるなど、近隣住民の方が不安を感じている空き家でした。

 

駅から遠くはないものの、敷地面積が狭く、家屋も非常に老朽化していたことに加え、家屋内も非常に汚損が進んでいたため、正直なところ好条件での売却は困難な空き家でした。

 

不動産業者様にご協力いただき、なんとか現状有姿で買い取ってくれる方を見つけることができました。

 

引渡しからしばらく経った後、管理していた空き家を見に行きました。

 

そうしたところ、すでに家屋は解体されていました。

 

これにより、倒壊や不審者による占有等の危険は解消し、近隣住民の方にもご安心いただくことができました。

 

最後の所有者がお亡くなりになり、誰も世話をすることができなくなってしまった空き家を生まれ変わらせることができるというのは、相続財産管理人の仕事の中でも、特にやりがいを感じる部分です。

 

ある程度発達している地域に限られるかもしれませんが、近年、自治体が空き家管理のために相続財産管理人の選任を申立てるケースも増えています。

 

私が相続財産管理人として選任されたのも、そのような申立てに基づくものです。

空き家活用の話3

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空き家の売却を考える場合、法律面においても、多くの観点での検討が必要になります。

 

とても重要な検討事項のひとつが、契約不適合責任の扱いです。

 

契約不適合責任とは、あらかじめ目的物に対して取り決めた種類や品質、数量に関して、契約内容に適合しない引き渡しをおこなった場合につき、売主側で負担する責任のことをいいます。

 
契約不適合責任は、2020年4月施行の改正後民法で定められた制度です。

 

空き家の場合、一般的な一戸建て住宅の売却とは事情が異なり、現在の所有者が土地や建物に関する事情を把握していないことも多くあります。

 

特に元の持ち主が高齢者として何年も生活していたという経緯があったりすると、家屋内部が荒れ放題で、物で溢れかえっていることもあります。

 

現在の所有者が捜索をすることも難しく、家の構造や、隣接地との境界に関する書類なども、発見が困難な状態になっていることもあります。

 

さらに、長年放置されていた空き家の場合、老朽化が進み危険な状態になっている、育った樹木が越境している、ということもあります。

 

相続人ではなく、相続財産管理人が空き家を管理、処分する場合は、より事情を把握しにくい状況になります。

 

そこで、契約不適合責任を免責する条項を付して売却することもあります。

 

契約不適合責任を免責する場合、売却価格はどうしても下がる傾向にありますが、放置を続けていてもメリットはあまりありませんので、売れるうちに処分する方が良いと考えられます。

 

また、契約不適合責任を免責する条件での売買は、買主側がリスクを負担することになります。

 

そのため、現状有姿で空き家を買い取るノウハウ等を有している専門業者へ売却することも多く行われています。

空き家活用の話2

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前回に続き、空き家活用について説明していきます。

 

いままで、ある土地・建物の所有者が理論上不存在ではなかったとしても、複雑な相続が発生するなど所有者の調査が困難であったり、所有者と連絡が取れない場合、原則としてその土地・建物の売却をし、他の方が利活用するということができませんでした。

 

所有者が不存在である土地・建物以上に、所有者が存在している土地・建物の処分は困難になることがあるのです。

 

所有者が存在しているがゆえに、当該所有者の売却等の意思表示が得られなければ、土地・建物の所有権を移転することができないためです。

 

令和5年4月1日施行となる、土地・建物に特化した財産管理制度のひとつに、所有者不明土地・建物の管理制度というものがあります。

 

これは、調査を尽くしても、所有者やその所在を知ることができない土地・建物について、利害関係人が地方裁判所に申し立てることによって、その土地・建物の管理を行う管理人の選任がなされるという制度です。

 

裁判所の許可を得ることで、管理人は、土地・建物の売却をすることができるとされているため、空き家の利活用に直接つながっていきます。

 

相続財産管理人の選任手続きと似ていますが、所有者が存在していてもよいこと、管理の対象が土地・建物に限定できるという点で異なります。

 

具体的な運用はこれからであるため、どのような事実と疎明資料があれば「調査を尽くしても、所有者やその所在を知ることができない」とされるか、および、どのような者が「利害関係者」にあたるか、については今後の実務の積み重ねによって確立されていくかと思います。

空き家活用の話1

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社会一般、そして法律の世界においても、昨今空き家に関する話題をよく目にするようになりました。

 

人口減少による土地・家屋の需要減、資源再利用の風潮、都市部への人口集中を経てのリモートワーク環境の浸透などにより、空き家の活用に対する関心が活発化してきているのだと感じます。

 

空き家の属性にもいろいろあり、それに伴って分類の仕方も様々です。

 

ひとつの分類の仕方として、所有者が存在する空き家と、所有者不存在の空き家に分けるというものがあります。

 

所有者が存在する空き家は、さらに所有者が判明していて連絡が取れる空き家と、所有者が判明しない(調査が非常に大変)または所有者と連絡が取れない空き家に分けられます。

 

空き家の活用・再利用、または空き家を解体して宅地を再利用するという目的を達成するにあたり、最も対応が難しいのが、所有者が判明しない(調査が非常に大変)または所有者と連絡が取れない空き家です。

 

所有者不存在の空き家、すなわち所有者が死亡し相続人不存在となった空き家は、費用負担はあるものの、相続財産管理人の選任さえされれば前に進み、いずれ空き家の処分、清算がなされます。

 

所有者が判明していて連絡が取れる空き家は、所有者の意思に左右されるところはもちろんありますが、提示価格を上げる等により売却が進む可能性を上げることができます。

 

所有者が判明しない(調査が非常に大変)または所有者と連絡が取れない場合、相続財産管理人の選任はできず、かつ売却の交渉もできません。

 

この状態の空き家の活用は、事実上不可能に近いものでした。

 

しかし、所有者不明土地・建物を管理する制度が創設され、令和5年4月1日に施行されることになりました。

 

次回、この内容について触れたいと考えております

相続税10

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今回は、相続税申告における、未成年者控除について説明します。

 

未成年者控除とは、相続人が未成年者である場合に、その未成年者の相続税額から一定の額を控除できるという制度です。

 

未成年者が成人に達するまでの養育費や教育費等を考慮し、税負担を軽減するという趣旨により設けられた制度です。

 

障害者控除と同じく、課税価格ではなく、相続税額から控除できるという点がポイントで、未成年者の年齢によっては、大きな相続税の軽減効果があります。

 

相続税額から控除される額は、18歳から相続開始時の年齢(1年未満の端数は切り捨て)を差し引いた数値に10万円を乗じた金額です。

 

未成年者控除が受けられる人は、次のすべてに当てはまる人です。

 


相続財産を取得した人が法定相続人であること(相続放棄があった場合には、その放棄がなかったものとした場合の相続人)

 


相続開始日に未成年者であること

 


無制限納税義務者であること。

 

そして、未成年者の相続税額が未成年者控除額より少ない場合には、控除不足額が生じます。
その場合には、不足額は、扶養義務者の相続税額から控除して納付することができます。

相続税9

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相続税申告に関する、今回のテーマは、相続人に障害者がいる場合についてです。

 

相続人が障害者である場合、障害者控除が適用されることがあります。

 

障害者控除とは、相続人が85歳未満で障害者のときは、その障害者が満85歳になるまでの年数1年につき、10万円(特別障害者の場合20万円)で計算した額を相続税の額から控除できると言う制度です。

 
年数の計算にあたっては、1年未満の期間がある場合は、切り上げて1年として計算します。

 

相続財産の評価額からではなく、相続税の額から控除できるという点がポイントであり、大きな相続税の軽減効果があります。

 

障害者控除をうけることができるのは、以下のすべてに当てはまる人です。

 

1 相続財産を取得した時点で日本国内に住所があること

 

2 相続財産を取得した時点で障害者であること
上述のとおり、一般障害者と特別障害者で、控除額が変わります。
一般障害者は、身体障害者手帳上の障害等級3級~6級、精神障害者保健福祉手帳上の障害等級2級または3級、のいずれかです。
特別障害者は、身体障害者手帳上の障害等級が1級または2級、精神障害者保健福祉手帳上の障害等級が1級、のいずれかです。
相続税申告時に、疎明資料として、これらの手帳等の写しを税務署に提出します。

 

3 相続財産を取得した人が法定相続人であること

相続税8

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今回は、通常の遺産分割協議を行った場合の、相続税申告の際に用いる戸籍、法定相続情報一覧図についてです。

 

まず、戸籍についてです。

 

相続税は、相続が発生した場合に課される税ですので、被相続人が死亡したことを示すため、被相続人の死亡の記載のある戸籍が必要になります。

 

また、相続人を確定させる必要がありますので、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍と、相続人の戸籍が必要です。

 

代襲相続が発生している場合には、被代襲者の死亡の記載のある戸籍も必要です。

 

被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍は、取得に時間と手間を要することがあるので、注意が必要です。

 

婚姻などによって新たな戸籍が作られた際、本籍地のある市町村が変わることがあります。

 

このような場合、各市町村に対して戸籍の請求をしなければなりません。

 

戸籍がある市町村が離れている場合には、郵送による請求を行うこともあります。

 

平成29年5月29日以降であれば、戸籍の束に代わり、法定相続情報一覧図というものも使えます。

 

法定相続情報一覧図とは、被相続人(亡くなられた方)の法律で定められた相続関係を一覧にした家系図のようなものです。

 

被相続人の相続人が誰であるかを、法務局の登記官が証明します。

 

一枚で戸籍の束の代わりになりますし、無料で複数枚取得できますので、相続税申告のほか、相続登記や金融機関における預金解約手続きなどを並行して進める際にも便利です。

 

もっとも、法定相続情報一覧図を取得する場合には、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍と、相続人全員の戸籍が必要になります。

相続税7

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今回は、相続税申告における遺産分割協議と遺言の取り扱いです。

 

遺産分割協議や遺言は、誰がどの相続財産を取得するかを記したものです。

 

これにより、それぞれの相続人や受贈者の相続税額が確定します。

 

また、小規模宅地等の特例や、配偶者控除は、遺産分割協議済であるか、または遺言があることが適用要件になっています。

 

そのため、これらの適用を受けようとする場合には、相続税申告書に、遺産分割協議書または遺言書の写しを添付します(遺産分割協議書の場合、相続人全員の印鑑証明書も必要です)。

 

遺産分割協議書を作成する場合、被相続人の財産を調査したうえで、どの相続人が、どの相続財産を取得するか、相続人間で協議したうえで、相続人全員の署名押印が必要となります。

 

各相続人が離れて住んでいる場合などには、遺産分割協議書の作成にも時間がかかることがあります。

 

相続税の申告期限は、被相続人の死亡を知った日から10か月ですので、遺産分割協議書の作成にかかる時間には注意が必要です。

 

遺産分割に争いがあり、相続税の申告期限までに遺産分割協議書の作成ができない場合には、一旦法定相続割合で分割したと仮定して申告をします(未分割申告)。

 

この場合、特例が適用されないため、遺産分割協議がまとまったら、修正申告や更生の請求を行うことになります。

 

もし、相続人間での話し合いだけでは遺産分割ができず、家庭裁判所において調停を行った場合には、遺産分割協議書の代わりに調停調書を用います。

相続税6

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今回は、相続税申告準備における土地の評価についてです。

 

土地の評価は、相続財産の評価の中でも、相当難解な部類に入ります。

 

相続税関連の書籍の中には、土地の評価に特化した書籍もあるくらいです。

 

そのため、ここでは土地の評価の概要について説明します。

 

相続税の申告の際の土地の評価は、大きく分けて、路線価による評価と、倍率による評価があります。

 

まず、国税庁が公開している、評価対象の土地を含む路線価図を参照し、評価対象の土地が路線価が設定されている地域に存在するのか、倍率地域に存在するのかを調べます。

 

路線価が設定されている場合、路線価(1㎡あたりの単価)に、評価対象の土地の面積を乗じて算出した金額が、評価額の基礎となります。

 

この金額に、土地の計上に応じて、間口狭小補正、奥行価格補正、不整形地補正などを施し、評価していきます。

 

また、土地を貸し付けている場合には、路線価図に記載された借地権割合を控除します。

 

倍率地域の場合、固定資産評価額に対して、倍率表に記載された倍率を乗じた金額が評価額になります。

単純に掛け合わせる数字(倍率)が記載されている場合は、簡単に計算ができますが、宅地比準方式という計算方法が記載されていることがあります。

 

これは、対象の土地の1㎡あたりの近傍宅地価格を計算の基礎とするものです。

 

近傍宅地価格は、自治体によっては、固定資産評価証明書の発行の際に申請することで開示してくれます。

 

しかし、開示していない自治体もあります。

 

そのような場合には、自治体の担当部署へ電話連絡をし、近傍宅地価格をヒアリングすることもあります。

相続税5

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今回は、相続税申告準備における、建物の評価についてです。

 

被相続人が建物を所有していた場合、建物は相続財産となります。

 

建物の評価は、相続開始日の属する年度の固定資産評価額が基本となります。

 

固定資産評価額は、固定資産税納税通知書を参照するか、固定資産評価額証明書または名寄帳を取得することで調査可能です。

 

建物が、被相続人の自宅など、自用のものである場合には、固定資産評価額が相続税評価額となります。

 

建物が賃貸物件であり、実際に借家人がいる場合には、固定資産評価額をもとに以下の計算式によって評価額を計算します。

 

建物の固定資産税評価額 × (1 - 借家権割合 × 賃貸割合)

 

賃貸割合は入居率(正確には詳細な計算が必要です)、借家権割合は30%とされています。

 

貸家は、賃貸人側の権利の制約が大きいことから、評価額を下げることができます。

 

被相続人が賃貸物件を所有している場合には、もう一点考慮すべき事項があります。

 

特に一棟のマンションやアパートを所有している場合に多いのですが、付属の施設・設備の評価です。

 

駐車場や、マンションの設備については、固定資産評価証明書等には反映されないことがあります。

 

この場合には、被相続人の過去の確定申告書等を調査し、取得価額、償却額等を計算する必要があります。

相続税4

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弁護士・税理士の鳥光でございます。

 

今回は現金の評価についてです。

 

被相続人が死亡時点で所持していた現金も、相続財産として申告が必要です(現金の金額が、そのまま評価額になります)。

 

被相続人の現金については、大まかに3つのパターンがありますので、それぞれの対応方針を説明します。

 

 

1 被相続人が所持していた現金が、数万円程度であった場合

被相続人の財布等にのみ現金がある場合などは、このケースに該当することが多いです。

自宅の中に手許現金がある場合も、相続財産として計上します。

 

被相続人の生活の面倒を見ていた相続人が、小口の生活費を預かって管理していた場合にも、相続財産として計上します。

 

 

2 被相続人死亡直前に預貯金を引き出した場合

被相続人の死期が迫った際、死亡直後に発生する葬儀費等を賄うために、予め金銭を銀行等から引き出すことがあります。

 

主な使用目的が葬儀であることから、引き出す金額も数十万円~数百万円であることがあります。

 

これは、被相続人の現金として相続財産に含まれます。

 

葬儀費等に使用したとしても、相続開始時点での現金の金額を、相続税申告の際には計上します(葬儀費は、別途債務として控除できます)。

 

 

3 多額の現金がある場合

被相続人の中には、金銭を預貯金の形ではなく、現金で所持したいと考えている方もいます。

 

また、資産家であった被相続人などにおいては、金融機関と関係が悪くなり、多額の預貯金をすべて引き出して口座を解約してしまうこともあります。

 

このような場合、金庫などに数百万~数千万円の現金が存在するということがあります。

 

多額の現金が存在する場合には、相続税申告の際に、計算の根拠を説明する書面を添付することもあります(いわゆる33条の2書面)。

 

現金は秘匿性が高く、多額である場合は税務署の調査の対象となりやすいためです。

 

そのため、金融機関から引き出した金銭の合計額から、生活や事業等で使用したであろう金額を差し引き、相続開始時点での所持金額が合理的なものである旨の説明をします。

相続税3

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今回は、相続税申告準備における、預貯金の取り扱いについてです。

 

普通預金と、定期預金に分けて説明します。

 

まず、普通預金についてです。

 

普通預金は、相続開始時の残高が、そのまま相続財産の評価額となります。

 

普通預金の相続開始時の残高は、被相続人の通帳を見るか、相続開始時の残高証明書を取得して調べます。

 

もっとも、普通預金を調査する際は、通帳を参照した方が良いです。

 

通帳がない場合には、取引履歴を取得します。

 

その理由は、普通預金通帳には、相続開始時点の預貯金の金額のほか、債権、債務、過去の贈与の情報等が反映されていることがあるためです。

 

また、次回説明しますが、相続財産の中に現金が多く含まれる場合には、その出所を説明するために通帳の履歴を参照するが多くあります。

 

被相続人の預貯金の情報は、相続開始時点の預貯金額だけでなく、他の情報を調査するためにも有用なのです。

 

次に、定期預金についてです。

 

定期預金の残高も、通帳を見るか、残高証明書を取り寄せることで調査ができます。

 

しかし、定期預金には、普通預金には無い、考慮すべき要素があります。

 

それは、既経過利息です。

 

被相続人の生前に利息が支払われてから、次の利息が支払われるまでの間に被相続人が死亡した場合、死亡日までの間に発生していた利息(既経過利息)も相続財産になります。

 

既経過利息は、定期預金の残高証明書を取得した際に反映されていることもあります。

 

しかし、金融機関によっては、残高証明書とは別に既経過利息計算書というものの書面取得申請をしないと取得できないことがありますので、注意が必要です。

相続税2

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弁護士・税理士の鳥光でございます。

 

前回、相続税の基礎控除額のお話をしました。

 

相続財産の評価額が基礎控除額を超えるか否かは、相続税申告が必要であるか否かを判断するうえで、とても重要です。

 

もっとも、相続財産の評価は、単純ではないものもあります。

 

預貯金や現金は、金額がそのまま評価額になりますので、仮に相続財産の大半が預貯金・現金であれば、専門家でなくても評価は難しくありません。

 

不動産については、建物は原則として固定資産評価額となりますので、固定資産評価証明書を取り寄せて参照すれば、評価ができます(収益用マンションなどを持っている場合は、設備等の償却資産が固定資産評価証明書に反映されないこともあるので注意が必要です)。

 

土地の評価は、とても難解です。

 

まず、路線価地域であるか倍率地域であるかで、評価方法が異なります。

 

倍率地域にある場合、原則としては倍率表という表を用いて計算します。

 

路線価地域の場合、路線価と地積を乗じたうえで、各種の補正計算をします。

 

土地が旗竿状であったり、公道に面していないような場合の計算は、さらに複雑になります。

 

株式、投資信託等についても、相続税評価の際には、特有の計算が必要になります。

 

さらに見落としがちなのは、健康保険料等の還付金です。

 

これらは被相続人の債権であることから、相続財産になります。

 

被相続人の相続財産の評価額が、明らかに1000万円にも満たない見通しである場合は、それほど気にすることはありませんが、基礎控除額を超えるか否かが微妙なケースもあります。

 

このような場合、専門家によるシミュレーションを行うことをお勧めします。

相続税1

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弁護士の鳥光でございます。

 

渡しは税理士としても活動しております。

 

弁護士としては、相続をメインの分野のひとつとして活動しています。

 

そして、相続と、相続税とは、とても密接な関係にあります。

 

一定の評価額以上の相続財産が存在する場合、相続税申告が必要になります。

 

相続財産の取得の仕方により、相続税の金額が変わることもあります。

 

また、相続税申告期限までに遺産分割協議が終了しない場合、一旦未分割申告をするという措置が必要になります。

 

相続が発生した場合、相続税の申告・納税が必要であるか否かは、相続人にとってはとても重要なことです。

 

相続税申告・納税の要否を考えるうえで、一番初めに検討すべきことは、相続財産の評価額(正確には、ここから相続債務、葬儀費等を控除した金額)が、基礎控除額を超えているか否か、です。

 

相続財産の評価額が基礎控除を下回っていれば、相続税申告は不要です。

 
平成27年1月1日以降の基礎控除額は、次のとおりです。

 

3000万円+(600万円×法定相続人の数)

 

相続人が3名であれば、4800万円が基礎控除額となります。

 

基礎控除額は、平成26年12月31日以前は、次のとおりでした。

 

5000万円+(1000万円×法定相続人の数)

 

相続人が3名であれば、8000万円が基礎控除額となります。

 

平成26年12月31日以前に相続を経験されている方の中には、基礎控除額が変更されたことをご存じないこともありますので、注意が必要です。

 

前回の相続の際に相続税申告が必要なかったため、今回も必要ないであろう、と考えてしまうと、申告期限を渡過してしまう危険性があります。

 

これを防止するためには、相続が発生したら、一旦は相続税申告が必要か否かを、専門家に相談することをお勧めします。

相続財産管理人日誌27

今回も本ブログをご覧いただき、ありがとうございます。

 

弁護士の鳥光でございます。

 

相続財産管理人についての27回目の記事となります。

 

今回は、被相続人の債務に関する調査についてです。

 

相続財産管理人の業務において、相続債務の調査方法は2つあります。

 

1つは、知れたる債権者に対するものです。

 

これは、被相続人の遺品などから判明する債務です。

 

例えば、被相続人の自宅の郵便ポストに、未払いの公共料金の請求書が入っている場合、請求元の電力会社やガス会社などに残債の金額を照会することで、債務の存在と債務額が判明します。

 

具体的な請求書がない場合でも、国税(被相続人の住所地を管轄する税務署)、住民税・固定資産税・都市計画税等(被相続人の住所地を管轄する市役所等)、国民健康保険・国民年金等(被相続人の住所地を管轄する市役所・年金事務所等)には照会を行い、滞納がないかは確認します。

 

併せて、逆に還付金の有無も確認し、有る場合には相続財産として回収します。

 

2つめは、相続債権者に対する請求の公告を行った際に、届け出によって判明する債務です。

 

被相続人の自宅等から発見した資料のみでは判明しない債務については、この方法によって調査をします。

 

相続財産管理人が選任されるケースのうち、被相続人が債務超過に陥っていた場合、債務の調査は特に重要になります。

 

債務超過ケースは、相続人がもともと不在ということは少なく、たいていは相続人が存在していたものの、全員が相続放棄をしています。

 

相続放棄に至る過程において、相続人は、被相続人宛ての貸金業者等からの請求書等を発見しています。

 

そのため、通常、一部の債務は判明します。

 

自宅不動産に抵当権が設定されていることもあるので、乙区を見ることで債権者がわかることもあります。

 

場合によっては、CICやJICCへ問い合わせ、債権者を調査することもあります。

相続財産管理人日誌26

アクセスいただき、ありがとうございます。

 

弁護士の鳥光でございます。

 

相続財産管理人業務に関する、26回目の記事となります。

 

今回は、建物売却までの間の火災保険加入についてです。

 

相続財産の中に、自宅建物が含まれている場合、売却換価までの間は、現状を維持する必要があります。

 

特に特別縁故者が存在する可能性がある場合、1年以上、自宅建物の換価をしないというケースもあります。

 

建物周辺に燃えやすい廃棄物があったり、乾燥する時期をまたいだりする場合、火災が生じる可能性も否めません。

 

火災が起き、近隣の住民の方などに被害が生じた場合、損害賠償責任が発生することも考えられます。

 

そこで、売却換価するまでの間、火災保険に加入するという対応をすることがあります。

 

被相続人の資産がそれなりにある場合で、かつ死亡からあまり時間が経っていない場合、もともと加入していた火災保険の期間が続いていることもあります。

 

この場合には、保険加入者の名義を相続財産管理人に変更するという手続きをとります。

 

被相続人が債務超過の状態であるなど、自宅不動産以外にめぼしい財産がない場合や、被相続人死亡から長期間が経過している場合、火災保険に加入していない(または保険期間が切れている)ことがあります。

 

この場合には、改めて相続財産管理人による火災保険加入が必要になることもあります。

 

なお、保険会社側としては、相続人不存在となっている空き家を対象とする火災保険は、極めて稀なケースです。

 

そのため、例外的な審査等が必要になることがありますので、保険会社等の窓口担当者の方へ、しっかりとした情報提供をすることが大切です。