空き家活用の話17

今回も本ブログをご覧いただき、誠にありがとうございます。

 

弁護士・税理士の鳥光でございます。

 

NHKのウェブサイトに、「遺品部屋」という名称で、空き家となった集合住宅の部屋についての特集が掲載されていました。

 

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231024/k10014235141000.html

(リンクは公開時点のもの。リンク切れの際はご容赦ください。)

 

ご高齢で直系尊属がすでにおらず、かつ配偶者や子供がいない(または先にお亡くなりになられている)場合、兄弟姉妹がいれば兄弟姉妹が相続人になります。

 

取り上げられているケースは、マンションやアパートなどの集合住宅に独居していた高齢者の方がお亡くなりになられたというものです。

 

もっとも、ご高齢の方の場合には兄弟姉妹の方もお亡くなりになられていることもあり、兄弟姉妹の子(いわゆる甥や姪)が相続人になることが多くあります。

 

甥や姪になると、お亡くなりになられた方とは疎遠であることも多いです。

 
集合住宅の管理者等が弁護士等を通じて連絡をするまで、甥や姪は、叔父や叔母にあたる被相続人がお亡くなりになられたこと自体を知らないということもあります。

 

そして、集合住宅の部屋以外にはめぼしい財産もなく、逆に多量の残置物(いわゆるゴミ)があったり、管理費の滞納が多額にのぼっているということさえあります。
(ご生前の段階から事理弁識能力を失って管理費が払えていなかったり、お亡くなりになられた後、長期間が経過することで管理費の滞納額が増えます)

 

このような状況であると、相続人としては、よほど時間にもお金にも余裕がある場合を除き、相続放棄をせざるを得ないというのが現状であるかと考えられます。

 

相続人は相続放棄により(相続財産を現に占有していない限り)一切の責任を免れますが、遺品部屋は物理的には残り続けます。

 

このままでは遺品部屋の中の残置物処分も、遺品部屋の売却も、管理費の回収もできないため、管理者等や他の住民の方が困ってしまいます。

 

どうにかするには、利害関係人(本件であれば管理費の債権者である管理者等も該当します)が相続財産清算人の選任申立てをしなければなりませんが、これには専門知識に加え、100万円程度の予納金が必要となります。

 

これは、決して小さいとはいえない負担です。

 

個人的には、この部分を何とか手当てする仕組みがあればという思いがあります。 

今回のケースとは異なりますが、賃貸住宅においては、住民がお亡くなりになられた際、残置物の処分権限は賃貸人に移り、撤去が可能となる旨の条項を含めた契約書モデルなども存在します。

 

これによって、賃貸物件が塩漬けになることを防ぎ、再び他の方に貸すことができるようになります。 

今回のようなケースにおいては、思い付きのレベルではありますが、例えば集合住宅の持ち主がお亡くなりになり、かつ相続人不在(もともと不在または相続人が全員相続放棄をした)の場合には、相続財産清算人選任申立ての弁護士費用及び予納金をカバーするという内容の管理者向け保険商品があればと思う次第です。