事業運営と消防用設備等14

弁護士・税理士の鳥光でございます。

 

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今回は、消防用設備等の設置単位について説明いたします。

 

消防用設備等の設置単位とは、消防法に基づき、どの範囲や区画に対して、どのような消防用設備等を設置すべきかを定めた基準のことです。

 

まず、原則として、1棟の防火対象物を1単位と捉えます。
消防用設備等の設置義務は、防火対象物の種類や、延べ面積に応じて定められています。
例えば、同一敷地内に防火対象物である建物が複数ある場合には、1棟ごとに延べ面積を算定して、消防用設備等の要否を検討します。

 

1棟の建物であっても、開口部のない耐火構造の床または壁で区画されている場合には、区画された各部分を別の防火対象物とみなして消防用設備等を設置します。
例えば、物品販売場と事務所が、窓や出入り口、換気口のない、耐火構造の壁で仕切られているような場合が考えられます。

 

複合用途防火対象物においては、原則として用途部分ごとに1つの防火対象物とみなし、それぞれに消防用設備等を設置します。
例えば、1階が飲食店、2階が事務所、3階が共同住宅になっている建物の場合、それぞれ別々の設置基準が適用されます。

事業運営と消防用設備等13

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今回は、消防用設備等の内容について説明します。

 

消防用設備等とは、火災の予防・早期発見・初期消火・避難・延焼防止・消防活動の支援などを目的として、建築物や施設に設けられる各種の設備の総称です。
消防用設備等は、消防法に基づき、建物の用途や規模、収容人員に応じて設置が義務付けられております。
大きく分けて「消防の用に供する設備」、「消防用水」、「消火活動上必要な設備」に分類されます。
さらに、消防の用に供する設備は、「消火設備」「警報設備」「避難設備」に分けられます。

 

消火設備は、初期火災の段階で火を消し止めるための設備です。
消火器や屋内消火栓設備、スプリンクラー設備、泡消火設備、ハロゲン化物消火設備、二酸化炭素消火設備などがあります。

 

警報設備は、火災の発生をいち早く感知し、建物内外に知らせることで、迅速な避難や初期対応を可能にする役割を担います。
代表的なものとして、自動火災報知設備、非常警報設備、ガス漏れ火災警報設備が挙げられます。

 

避難設備は、火災時に建物内の人々が安全に避難できるようにするための設備です。
誘導灯、誘導標識、避難はしご、救助袋、滑り台などがあります。

 

消防用水は、防火水槽またはこれに代わる貯水池その他の用水のことをいいます。

 

消火活動上必要な設備は、消防隊が現場で迅速かつ安全に消火活動を行うための補助設備です。
排煙設備、連結送水管、非常用コンセント設備などがあります。

事業運営と消防用設備等12

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今回は、指定数量の10倍を超える危険物を取り扱う製造所等に設置する警報設備についてお話しします。

 

消防法において、指定数量の10倍を超える危険物を取り扱う製造所、貯蔵所、または取扱所(以下「製造所等」)には、火災発生時に迅速な対応を可能とするための警報設備の設置が義務付けられています(移動タンク貯蔵所を除く)。
危険物はその性質上、火災が発生すると急速に延焼したり、爆発的に燃焼したりするおそれがあります。
特に指定数量の10倍を超えるような大量の危険物を扱う施設では、万一の火災が近隣の施設や住民に甚大な被害を及ぼす可能性があるため、火災の早期発見・迅速な通報と避難誘導が不可欠です。
指定数量は、消防法第9条の4に基づき、危険物について、その危険性を勘案して政令で定められた量です。
例えば、ガソリンの場合は200リットルです。

 

設置が義務付けられる警報設備は、次のうちのいずれか1種類です。
製造所等の種類や、取り扱う危険物によっては、自動火災報知設備でなければならないこともあります。

 

① 自動火災報知設備

② 非常ベル装置

③ 拡声装置

④ 消防機関に放置できる電話

⑤ 警鐘

事業運営と消防用設備等11

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今回は、消防法に定められている危険物の種類について説明します。

 

消防法における危険物とは、火災発生の危険性が高く、取り扱いや貯蔵に際して特別な管理が必要な物質のことを指します。
消防法第2条第7項に基づき、危険物はその性質や燃焼特性に応じて、第1類から第6類までの6種類に分類されます。
指定数量を超える危険物を取り扱う場合には、届け出や許可、専用施設の設置、取扱者の資格などが義務付けられます。

 
危険物の分類は次のとおりです。

 

【第1類:酸化性固体】
酸化作用を持ち、他の可燃物と混合することで激しく燃焼する可能性があります。
塩素酸塩類や硝酸塩類などが該当します。

 

【第2類:可燃性固体】
比較的低温で発火しやすく、摩擦や衝撃によって着火することもある物質です。
赤リン、マグネシウム粉などが該当します。

 

【第3類:自然発火性物質および禁水性物質】
空気に触れると自然に発火する、または水と反応して可燃性ガスを発生させる物質です。
ナトリウム、カリウム、黄リンなどが該当します。

 

【第4類:引火性液体】
最も一般的に使用される危険物で、引火しやすい液体です。
ガソリン、灯油、軽油、アルコール類などが該当します。
引火点の違いにより、第一石油類、第二石油類などさらに細かく分類されます。

 

【第5類:自己反応性物質】
加熱や衝撃などにより、自己分解して燃焼する性質を持つ物質です。
ニトロ化合物、有機過酸化物などが該当します。

 

【第6類:酸化性液体】
酸素を放出して他の物質の燃焼を助ける性質を持つ液体です。
過酸化水素や硝酸などが該当します。

事業運営と消防用設備等10

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今回は、防炎規制と防炎防火対象物について説明します。

 

防炎規制とは、火災発生時の燃え広がりを抑制する目的で、カーテンやじゅうたん、展示用テント、布製のブラインド、どん帳、舞台において使用する幕、工事用のシートなどに防炎性能を求める制度です。

 
一定の要件を満たす防火対象物(防炎防火対象物)において使用される繊維製品等に対して適用されます。

 

防炎規制の対象となる物品は、火がついてもすぐに燃え広がらないなど、一定の燃焼試験に合格したものです。

 
防炎性能の基準をクリアした製品には「防炎表示」が付いています。

 

防炎防火対象物に該当するものは、次のとおりです。

 

①特定防火対象物(地下街を除く)

②高層建築物(高さが31メートルを超えるもの)

③映画スタジオ、テレビスタジオ

④工事中の建築物等

 

特定防火対象物でない共同住宅(マンションなど)であっても、高さが31メートルを超える場合には、防炎防火対象物になります。

 

映画スタジオやテレビスタジオが含まれるのは、暗幕や舞台において使用する幕、大道具用の合板など、燃え広がりやすい物があるためです。

 

また、工事中の建築物等が含まれるのは、工事用のシートの火災が多いためです。

事業運営と消防用設備等9

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今回は、前回少し触れた特定1階段等防火対象物について説明します。

 

特定1階段等防火対象物とは、特定用途部分が避難階以外の地階または3階以上にあり、その階から避難階または地上に出る屋内階段が1つしかない特定防火対象物のことです。

 

特定1階段等防火対象物は、火災発生時に迅速かつ安全な避難が困難となるおそれが高い建物であることから、消防法施行令第4条の2の2によって、特に厳格な防火管理が求められるとされています。

 

例えば、3階が不特定多数の者が出入りするカラオケ店であり、かつ避難に使用できる屋内階段が1つしか設けられていない建物が特定1階段等防火対象物に該当します。

 

このような建物は、火災発生時に階段室が煙や炎で使用不能になってしまうと、上階からの避難路がなくなってしまう可能性があります。

 

そのため、特定一階段等防火対象物には、通常の防火対象物以上に厳しい消防上の規制が適用されます。

 
例えば、延べ面積にかかわらず、消防用設備等を設置した際の検査が必要であることや、有資格者による消防用設備等の定期点検を行わなければならないことが義務付けられています。

事業運営と消防用設備等8

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今回は、防火対象物点検資格者による防火対象物点検が必要な防火対象物についてお話しします。

 

防火対象物点検資格者による防火対象物点検は、消防法第8条の2の2に基づき、一定の条件に当てはまる防火対象物に対して実施が義務付けられています。
この制度は、建物の使用状況や防火管理の実施状況を専門的な立場から定期的に確認・評価し、火災リスクを低減することを目的としています。
点検は原則として年1回行われ、点検結果は所轄の消防長または消防所長に報告されます。

 

防火対象物点検の対象となる防火対象物は、以下の3つの条件に当てはまるものです。

 

①収容人数が300人以上の特定防火対象物(準地下街を除く)

②収容人数が30人以上の特定1階段等防火対象物(複合用途防火対象物、地下街、準地下街を除く)

③収容人数が10人以上の、自力避難困難者入所施設の用途部分が避難階以外にある特定1階段等防火対象物

 

特定1階段等防火対象物とは、特定用途部分が避難階以外の地階または3回以上にあり、その階から避難階または地上に出る屋内階段が1つしかない特定防火対象物です。

事業運営と消防用設備等7

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今回は、統括防火管理者が必要な防火対象物について説明します。

 

統括防火管理者とは、複数の事業者や管理者が同一建物内に入居しているような複合用途の建物(いわゆるテナントビルなど)において、全体の防火管理を統一的に行う責任者です。
消防法第8条の2によって、一定の条件を満たす防火対象物においては、統括防火管理者の選任が義務付けられています。

 

統括防火管理者の選任が必要となる防火対象物は、以下のような条件に該当する防火対象物で、建物内に複数の管理権原者(所有者や賃借人など)がいる場合です。

 

①高層建築物(31メートルを超えるもの)

②地階を除く回数が3以上で、収容人数が10人以上の自力避難困難者入所施設

③②以外の特定防火対象物で、地階を除く回数が3以上で、収容人数が30人以上のもの

④地階を除く回数が5以上で、収容人数が50人以上の非特定防火対象物

⑤消防長または消防署長が指定した地下街

⑥準地下街

 

統括防火管理者は、建物全体の消防計画を作成して消防長や消防署長に届け出るほか、防火対象物全体について防火管理上必要な業務を行います。

事業運営と消防用設備等6

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今回は、防火管理者と、防火管理者選任が必要な防火対象物についてお話しします。

 

防火管理者とは、一定の要件に該当する防火対象物において、火災の予防や初期対応体制の整備など管理する責任を持つ者です。
消防法第8条に基づいて、選任することが義務付けられています。
建物の用途や規模によって、防火管理者の選任が必要かどうかが決まります。

 

例えば、特定防火対象物のうち、自力避難困難者入所施設においては、収容人数10人以上の場合に防火管理者の選任が必要です。
自力避難困難者入所施設以外の特定防火対象物においては、収容人数30人以上の場合に防火管理者の選任が必要です。
非特定防火対象物においては、収容人数50人以上の場合に防火管理者の選任が必要です。

 

同一の敷地内に、管理権限者(建物の所有者や会社の代表取締役など)が同じである防火対象物が複数ある場合、それらを1つの防火対象物とみなして、防火管理者の選任が必要か否かを判断します。

 

防火管理者になることができるのは、管理的、監督的地位にある者です。
さらに、消防機関などが実施する一定の講習を修了した者でなければなりません。

事業運営と消防用設備等5

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今回は、消防同意について説明します。

 

消防同意とは、建築物を新築、改築する際に、建築確認の手続きの中で、その建物が消防法令に適合しているかどうかを消防機関が事前に審査し、同意または不同意の判断を行う制度です。

 

具体的には、建築主事等が建築確認申請を受けた際、所轄の消防長または消防署長に対して図面等の内容を提示し、消防機関の意見を求めます。
消防機関はこれに対して、避難経路、消防用設備などが基準に適合しているかを確認し、同意または不同意の回答をします。
建物の規模や区域(防火地域・準防火地域以外)によっては、消防同意が必要ないこともあります。

 

この制度は、消防機関が建物の設計段階から関与することを可能とし、火災時における安全性を事前に確保するという予防的な機能を果たしています。
後から是正することが難しい構造的な欠陥や、避難に支障を来す設計を未然に防ぐことが可能となります。

 

消防長、消防署長は、建築主事から消防同意の申請を受けた場合、原則として3日以内(建物の規模や敷地によっては7日以内)に同意または不同意を通知します。

事業運営と消防用設備等4

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今回は、火災予防のための措置命令、立入検査、防火対象物に対する措置命令について説明します。

 

消防機関が法的権限に基づいて様々な措置や検査をすることができます。
その中でも重要なものとして、「火災予防のための措置命令」、「立入検査」、「防火対象物に対する措置命令」があります。

 

まず、火災予防のための措置命令は、消防機関が火災予防上危険と認められる行為をする者や、火災予防上危険と認められる物件、消火や避難などの消防活動の支障になると認められる物件の所有者等に対して、必要な改善措置を命じることができる制度です。
火災予防のための措置命令は、消防長、消防署長、消防吏員が発することができます。

 

次に立入検査は、消防機関が防火対象物の安全性を確保するために、建物内部の状況を確認する制度です。
個人住居への立入検査は、関係者の承諾を得た場合か、火災発生のおそれが著しく大きく、特に緊急の必要がある場合のみ可能です。
また、消防団員も立入検査は可能ですが、事前に消防対象物および期日または期間の指定が必要となります。

 

防火対象物に対する措置命令には2つの種類があります。
まず、防火対象物の位置、構造、設備、管理の状況が火災予防上危険であるような場合に、防火対象物の回収や除去などを命じるものです。
次に、上述の命令が履行されない場合には、防火対象物の使用禁止などを命じることができます。
防火対象物に対する措置命令は、消防長か消防署長が行うことができます。

事業運営と消防用設備等3

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今回は、消防機関の種類と職員についてお話しします。

 

消防機関には、「消防本部(消防署)」と「消防団」に分けられます。
消防署は、消防本部の下部組織です。

 

まず、消防本部は、市町村が設置する消防機関です。
消防本部の長を消防庁、消防署の長を消防署長といいます。
消防本部や消防署の職員の中には、消防吏員(しょうぼうりいん)がいます。
消防吏員は、いわゆる消防士のことであり、地方公務員です。
消防長等は、火災予防に関する措置命令等の権限を持っています。
また、消防長、消防署長は、防火管理者が作成した消防計画の届出先にもなっています。

 

一方、消防団は非常勤の組織(一部常勤のこともあります)で、地域住民などの有志によって構成される消防機関です。
団員は消防団員と呼ばれ、普段は各自の本業である仕事をしながら、災害時や訓練、地域行事などで活動します。
消防長、消防署長、消防吏員と比べて、権限も制限されています。
例えば、火災予防のための措置命令や、防火対象物に対する措置命令の権限はなく、立入検査の際にも事前の消防対象物および期日または期間の指定が必要とされます。

事業運営と消防用設備等2

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弁護士・税理士の鳥光でございます。

 

今回は、消火器を設置しなければならない防火対象物と、特定防火対象物について説明します。

 

消火器の設置義務については、防火対象物の種類や規模に応じて、設置基準が定められています。
特に「防火対象物」と「特定防火対象物」の区別は、消火器の設置義務を判断するうえで重要です。

 

まず防火対象物とは、火災が発生した場合に一定の被害が想定されるものであり、消防法施行令別表第1に定められています。
特定防火対象物は、防火対象物のうち、不特定多数の人が利用する施設や、避難に支援が必要な人が多く集まる施設を特に指定したものです。
たとえば、映画館、百貨店、旅館、飲食店、病院、老人ホーム、保育所などが該当します。
これらの施設では火災発生時のリスクが高いため、防火対象物の中でもより厳しい防火対策が求められます。

 

消火器の設置義務については、特定防火対象物であるかどうかによって設置基準が異なります(ただし、一部例外があります)。
たとえば、延べ面積が150㎡以上の特定防火対象物には、原則として消火器の設置が必要とされます。
これに対し、非特定防火対象物(たとえば一般の事務所や住宅など)では、基本的には300㎡以上の場合に設置義務が生じます(重要文化財、倉庫などの例外はあります)。

事業運営と消防用設備等1

弁護士・税理士の鳥光です。
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士業を含め、建物などを使って事業を営む際には、防火に関わる様々な対応が必要とされます。
私自身、防火管理者講習を受講したうえで、防火管理者となっています。

 

法律に基づいた、定期的な消防用設備等の点検も行われています。
今回からは、防火、消防に関する知識や実務について、法律を交えながら紹介していきます。

 

まず、消防法に登場する「防火対象物」、「消防対象物」、「関係者」、「関係のある場所」という用語についてです。

 

① 防火対象物
「防火対象物とは、山林又は舟車、船きょ若しくはふ頭に繋留された船舶、建築物その他の工作物若しくはこれらに属する物」と定義されています。
火災予防の観点から、特に防火上の配慮が必要とされる建物や施設を指します。
劇場や遊技場、病院、ホテル、百貨店など、多くの人が利用し火災時に被害が拡大する恐れのある施設が該当します。

 

② 消防対象物
「消防対象物とは、山林又は舟車、船きよ若しくはふ頭に繋留された船舶、建築物その他の工作物又は物件」と定義されています。
消火活動の対象となるものが広く含まれますので、建築物以外の「物件」(例えば、家具や機材など)という表現がなされています。

 

③ 関係者
「防火対象物又は消防対象物の所有者、管理者又は占有者」と定義されています。
消防法では、関係者に対して、設備の設置、点検、報告などの義務を課しています。

 

④ 関係のある場所
「防火対象物又は消防対象物のある場所」と定義されています。
消防計画や避難計画を作成する際には、関係のある場所がどの範囲に及ぶかを考慮に入れる必要があります。

区分所有建物と財産管理14

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弁護士・税理士の鳥光でございます。

 

前回に引き続き、一軒家と比較した場合の、相続人不存在区分所有建物の管理、処分するうえで注意すべき特徴についてお伝えします。

 

一軒家と比較した場合の、区分所有建物の特徴は次のとおりです。

 

①老朽化しにくく価格の下落が緩やか
②基本的に境界の問題はない
③バルコニーや玄関扉の一部など共用部分への配慮が必要
④管理の開始時や売却時などに管理組合への手続きが必要
⑤総会決議等への参加が必要

 

個体差もあると思いますが、区分所有建物は一軒家と比べ、外部と接している部分が少なく、共用部分は管理されていることから、老朽化しにくい傾向にあると感じます。
庭がないものも多く、擁壁もないため、価格が下落する要素が少ないです。
基本的に境界確定の問題もありません。

 

一軒家と異なる点のひとつに、共用部分への対応があります。
バルコニーに残置物がある場合、他の住民の方へのご迷惑にならないよう、撤去します。
玄関扉に対して何らかの作業をする場合には、場合によっては管理組合との調整が必要になるため、事前に管理規約の確認も行います。

 

相続財産清算人に選任されたことについては、管理組合へ伝え、必要な届出書類も提出します。
このようにすることで、管理組合と連絡を取り合えるようになります。
区分所有建物を売却する際にも、管理組合への届出が必要となるため、事前に必要書類の確認をしておきます。

 

売却するまでの間に総会が開催される場合には、基本的には議決権の行使をします。
(相続人不存在となった空き家の存在が引き起こす問題のひとつに、総会決議が行えないことがあります)
議題の内容が、相続財産の一部処分や大きな変更が発生するものである場合、事前に裁判所に確認をしたり、許可を得ることも必要と考えられます。

区分所有建物と財産管理13

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相続人不存在となった空き家には、大きく分けて一軒家と区分所有建物があります。

 

今回と次回に渡り、それぞれについての管理、処分するうえで注意すべき特徴を、経験に基づいてお伝えしていきます。

 

まず、一軒家についてです。

 

ここでは、家屋とその敷地が、どちらも被相続人の所有であったものと仮定します。

区分所有建物と比較した場合の、一軒家の特徴は次のとおりです。

 

①家屋は古くて価値は低いことが多い(解体費がかかることも)
②隣地や道路との境界確定書を発見できないことがある
③庭がある場合には草木の手入れや害虫対策が必要
④宅地擁壁が老朽化していると売却価格が大きく下がることがある
⑤隣接している私道の所有権(共有持分権)がないか調査が必要

 

感覚的には、一軒家の方が価値が下がりやすい傾向にあると思われます。
特に、家屋が空き家になってから長期間が経過していると、屋根や壁、塀などが傷ついていて、再利用が困難です。
そのため、現実的には家屋の解体を前提とした、いわゆる古屋付き土地として売却することもあります。
更地にするための費用を織り込んだ売却価格となるため、土地自体の価格よりも低価格での売却になります。

 
盛り土がされていて、宅地擁壁がある場合には、より注意が必要です。
築年数が古い一軒家の場合、擁壁が崩れていることや、技術要件を満たさない擁壁であることがあります。
擁壁の修理や補強には大きな費用がかかることから、その費用を見込んだ売却価格はかなり低くなります。

 

一軒家を売却する場合、境界の確定は重要な要素となります。
家屋内部を捜索しても、隣地や道路との間の境界確定書が発見できないことがあります。
このような場合には、境界未確定のまま、価格を下げて売却することも考えます。

 

売却するまでの間の管理も、一軒家の方が労力を要する印象があります。
近年の一軒家の場合、敷地内の土の部分はすべてコンクリートでおおわれていることも多いですが、古くからある一軒家の場合は土が露出していることが多いです。
春夏を過ぎるたびに草木が覆い茂り、そこに蜂なども棲みつきます。
少なくとも売却するまでの間は、剪定や害虫駆除も必要です。

 

一軒家に隣接している道路が私道でないか、および私道である場合には所有している部分がないか(共有持分がないか)も確認しておく必要があります。
私道が相続財産に含まれていることに気付かないまま一軒家を売却し、その後相続財産清算人業務を終えてしまうと、私道が相続人不存在のままとなってしまうためです。

区分所有建物と財産管理12

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先日、区分所有建物の自主管理に長年携わり、現場が抱える問題を詳しく知る方とお話をする機会がありました。

 

区分所有建物は、人口の急増に対応するために作られはじめ、現在2つの老い(建物の老朽化と、住民の高齢化)を迎えていること、現行の制度のもとでマンションを維持管理することは困難になりつつあることなどを聞きました。

 

このような話は、専門書や区分所有建物に関する記事などで読むことはありましたが、実際に現場で問題に直面している方から聞くのとでは、現実味が全く異なります。

 

本当に集会で決議をすることができないという事態が発生していることや、集会場で管理費の金額を巡って住民同士の激しい争いに発展する場合があること、マンション管理に関する相談や問題解決の依頼ができる先が少ないことなど、書物からだけでは得られないことをたくさん学ばせていただきました。

 

また、現状として、区分所有法などマンション管理に関する法規に詳しい人や、マンション管理業務に詳しい人はある程度いるが、相続人不存在などによって管理不全に陥っている区分所有建物への対応に詳しい専門家は、現状として比較的少ないということも知りました。

区分所有建物と財産管理11

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今回は、NHKのクローズアップ現代で名付けられた「遺品部屋」についてです。

 

遺品部屋とは、居住者がお亡くなりになり、相続人がいない(相続人全員が相続放棄をした場合含む)ために、残置物がそのままになっている集合住宅のこととされています。

 

区分所有建物がこのような状態になってしまうと、管理費・修繕積立金の回収ができなくなります。
その結果、他の区分所有者に支払いを求める管理費・修繕積立金を値上げせざるを得なくなるということもあります。
遺品部屋が増えると、マンションの維持管理自体が困難になっていきます。

 

現状、遺品部屋の問題を根本的に解決する方法は、相続財産清算人の選任申立てとなります。
相続財産清算人が、被相続人の財産から管理費・修繕積立金等を支払い、遺品部屋となった区分所有建物を売却して流通に戻します。
場合によっては、区分所有建物の売却金から、管理費・修繕積立金を支払うこともあります。

 

もっとも、相続財産清算人選任申立てにおける管理組合の金銭的、労力的負担は相当大きいです。

 

まず前提として、相続人の調査を行い、連絡を取る必要があります。
多数の戸籍謄本を集め、相続人に書面を送付しなければなりません。
弁護士を探し、この作業を依頼をするだけでも、相当の労力と費用を要します。

 

相続人が相続放棄をしている場合には、相続放棄申述受理通知書の写しの提供を求めたり、家庭裁判所に相続放棄申述受理状況の照会をするなどの作業も必要となります。

 

そのうえで、家庭裁判所に相続財産清算人選任申立てを行います。
相続財産清算人選任申立てには、弁護士費用だけでなく、一般的には100万円程度の予納金を裁判所に納める必要があります。

 

相続財産がある程度ある場合には、相続財産の清算業務が完了した後に、予納金が返金されますが、申立てから返金までには1年以上要することが多いです。

区分所有建物と財産管理10

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今回は、相続人不存在のために空き家となった区分所有建物の、残置物の管理についてです。

 

区分所有建物に住んでいた被相続人の残置物が、バルコニーや廊下にもある場合には、早急に処分をするか、建物内部に収容する必要があります。

 

戸建て住宅と異なり、区分所有建物の場合、バルコニーや廊下は共用部分であるためです。

 

廊下が共用部分であるということは感覚的にも理解しやすいと思いますが、バルコニーも共用部分であるという点も理解しておく必要があります。

 

バルコニーは、区分所有建物の所有者や居住者しか使えないという権利(専用使用権)が設定されていますが、一方で他の住人の避難経路にもなっています。
隣との境が、薄く強度の低い壁で仕切られてるのはそのためです。
そのため、通常は避難の妨げになる物を置くことが禁止されています。

 

廊下やバルコニーに残置物が存在している場合の対処法としても、相続財産清算人選任申立ては有効であると考えられます。

 

なお、私が管理した区分所有建物は、たまたま申立人の方が被相続人の成年後見人であったため、被相続人が施設に入るタイミングで生前に残置物は処分されていました。

区分所有建物と財産管理9

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今回は、相続財産清算人選任の申立てを行うことができる方についてです。

 

民法952条第1項によれば、「利害関係人又は検察官の請求によって」相続財産清算人は選任されます。

 

また、所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法第42条第1項により、「国の行政機関の長又は地方公共団体の長」も「所有者不明土地につき、その適切な管理のため特に必要があると認めるときは」相続財産清算人の選任申立てができます。

 

民法952条第1項の「利害関係人」には、事務管理者、成年後見人であった者、相続債権者、特別縁故者であると主張する者などが挙げられます。

 

区分所有建物が相続人不存在となり、滞納されていた管理費・修繕積立金の回収が必要な場合には、管理組合は利害関係人となるため、相続財産清算人選任申立てができます。

 

現在、マンションには2つの老い、すなわちマンションの築年数が大きくなり、かつ居住者(組合員)が高齢化が進んでいます。

 

居住者の高齢化により、相続が発生する可能性が高まります。
もし区分所有建物が相続人不存在となってしまうと、相続財産清算人が選任されるまで管理をすることができなくなってしまいます。

 

すでに都市部においては、空き家となっている区分所有建物が多くなっています。
そのすべてが相続人不存在というわけではありませんが、一部は相続人不存在になっていると考えられます。
ちなみに私が管理した区分所有建物は、もともと推定相続人がいない方がお亡くなりなったことにより相続人不存在となりました。

 

今後、管理組合による相続財産清算人選任申立てがしやすいような政策も必要になるかもしれません。