【受験シリーズ】9 厳選と繰り返し

令和3年も3月になりました。

 

年度末なので、とても忙しい方もいらっしゃるかと思います。

 

弁護士法人心の鳥光でございます。

 

受験シリーズの9回目です。

 

今回は、ロースクール等で、一通り全分野の講義が終了した後の、司法試験に向けた勉強法についてです。

 

1 司法試験の性質
司法試験は、筆記試験です。

 

筆記試験は、極論すれば、本番の場において、答案用紙に、採点者が〇をつける文字の列を書くことができれば受かります。

 

観点を変えると、いくら法律論を理解していても、いくら規範や定義を知っていても、本番において、答案用紙に書くべきことを書くことができなければ合格することはできません。

 

また、司法試験は時間が非常に限定されています。

 

必須科目は、1科目あたり2時間です。

 

2時間以内に事案を読んで理解し、答案構成をして、答案を書く必要があります。

 

通常、答案用紙5~8枚程度書くことが求められます。

 

つまり、正確さと速さの両方がなければ点数を取ることができません。

 

2 厳選と繰り返し
速く正確なアウトプットをするためには、身体に覚えさせるほかありません。

 

規範やフレーズを無意識有能化させる必要があります。

 

そのためには、何度も繰り返し書いたり読んだりする必要があります。

 

他方、司法試験本番までに勉強に費やすことができる時間は限られています。

 

そこで、何を繰り返し練習するか、厳選しなければなりません。

 

3 繰り返し練習の対象
最優先で練習するべき対象は、言葉の定義と、判例規範です。

 

これを出すべき場面で、速く正確に書くことができるかどうかで、点数は大幅に違ってきます。

 

たとえば、民事訴訟法は、言葉の定義を基本書や受験予備校の教材から抜き出して、ひたすら何度も読み書きします。

 

刑法や刑事訴訟法であれば、判例百選に掲載されている判例の規範を何度もノートに書き写したり、隙間時間で繰り返し読むことで、自然にアウトプットができるようになります。

【受験シリーズ】8 成功者のマネ

令和3年3月になりました。

 

弁護士法人心の鳥光でございます。

 

今回は受験シリーズの8回目です。

 

司法試験の勉強をするにあたって、私が実践していた考え方と勉強法について紹介いたします。

 

1 成功者のマネをすることが基本
司法試験に限らず、ビジネスの世界でも重要視されている鉄則として、「成功者のマネ」をするという考えがあります。

 

まずは、外観からわかる形のマネから入ります。

 

形をしっかりマネをすることを続けているうちに、その背景にある考え方を理解することができ、自分の能力も上がっていくという流れになります。

 

2 司法試験の勉強においての「マネ」
では、司法試験の勉強においては、実際には何をすればよいのでしょうか。

 

まず、司法試験における成功者とは、超上位合格者です。

 

具体的には、各分野において、一桁の順位の得点をとった人です。

 

超上位合格者の再現答案は、受験予備校が出版している過去問集に掲載されています。

 

私は、一通り司法試験の範囲の講義が終了した時点から、これら超上位合格者の再現答案をひたすら写経していた時期がありました。

 

朝から晩まで10時間くらい書き続けていました。

 

一見バカなやり方に見えるかもしれません。

 

私も初めは辛いだけでした。

 

ところが、1週間くらい続けると、超上位合格者の考え方が理解できてきます。

 

なぜ今回の事案においてこのような問題提起をするのか、なぜこのタイミングでこの規範を出すのか、なぜこの事実を指摘するのか、なぜこの順序で論証するのか、ということを身体で覚えることができるのです。

 

その結果、一回で合格することができました。

 

3 写経はほかの場面でも使える
私は民事訴訟法が非常に苦手でした。

 

民事訴訟法は、用語の定義を理解することが非常に重要な科目です。

 

そこで、基本書や、受験予備校の教材から、用語の定義をひたすら抜き出してノートに書き続けることをしました。

 

これを行うことで、模試や本番でも、定義をスラスラと書くことができるようになり、A評価で合格することができました。

【相続放棄シリーズ】23 公営住宅

弁護士法人心の鳥光でございます。

 

令和3年2月です。

 

コロナウイルスも相変わらず猛威を振るっております。

 

緊急事態宣言により、収束することを心から願っております。

 

今回は、被相続人が公営住宅に住んでいた場合の扱いについてです。

 

1 通常の賃貸借契約

被相続人が民間のアパートやマンション等を借りて住んでいた場合、被相続人には賃借権があります。

 

賃借権は、借りている不動産を使用収益する権利であり、非常に強力で価値のある権利です。

 

そのため、相続人が被相続人の賃貸借契約を合意解除することは、法定単純承認事由に該当する可能性が残ります。

 

(賃料の滞納を理由に、賃貸人から一方的な意思表示で行える法定解除をしてもらうという手はあります。)

 

2 公営住宅

民間のアパートやマンションに対し、公営の住宅の場合、居住する権利の性質が異なります。

 

公営住宅は誰でも居住できるわけではなく、一定の要件(収入等)を満たさなければ居住できません。

 

つまり、居住する人の個別の属性に応じて付与される権利であり、一身専属権のような性質があります。

 

そのため、公営住宅に居住する権利は、相続の対象にはなりません。

 

このように判断した裁判例もあります。

 

3 同居親族がいる場合

公営住宅において、被相続人と同居していた親族がいる場合、一定の要件のもとで継続使用ができることがあります。

 

この場合、公営住宅に居住する権利は、あくまでも同居親族固有の権利と考えられるため、相続によって居住権を得たことにはならないと考えられます。

【相続放棄シリーズ】22 相続財産管理人

2月になりました。

 

一年のうちで一番寒い時期であると同時に、三寒四温ともいわれ、寒暖差が激しいので健康管理には気を付けましょう。

 

弁護士法人心の鳥光でございます。

 

今回は、相続人全員が相続放棄をし、相続人不在となった場合についてです。

 

1 相続人全員が相続放棄をした場合

相続放棄には順位があります。

 

単純化すれば、子→直系尊属(両親、祖父母等)→兄弟姉妹の順となります。

 

子や兄弟姉妹が被相続人より先に亡くなっていた場合、その代襲相続人に相続されます。

 

先順位相続人が相続放棄をし、順に後順位相続人も相続放棄をすると、最終的には相続人が不在になります。

 

このようになると、被相続人の財産は、相続人不在となります。

 

2 管理責任

相続人全員が相続放棄をしたとしても、元の相続人には、被相続人の財産に関する管理責任が残ります。

 

この管理責任の内容は、明確にはなっていないのですが、少なくとも相続財産管理人へ引き渡すまで、棄損、滅失をしないようにする責任があると考えられます。

 

被相続人の財産が、預貯金のみであったり、少額の現金など小さな動産のみである場合はほどんと問題ありません。

 

問題となるのは、被相続人の財産に不動産や自動車が含まれる場合です。

 

特に建物が存在している場合、老朽化によって隣接地等に被害が生じる可能性があります。

 

法的に損害賠償責任を負うか否かとは別に、何かしらの連絡が入り、トラブルにはなる可能性があります。

 

そのため、保存行為として、補修等を行っていかなければならなくなります。

 

未来永劫補修を行うことは、とても大きな負担になります。

 

他方、建物の取り壊しは法定単純承認事由になるため、行うことができません。

 

そこで、相続財産管理人選任の申立てを行うという選択肢が出てきます。

 

3 相続財産管理人

相続財産管理人は、相続人が不在となった相続財産を管理する役割の人です。

 

利害関係人が裁判所へ申し立てることで、選任されます。

 

行うことは、大まかに、相続財産の調査、債権者の調査、相続財産の換価、債権者への配当です。

 

処分することができなかった相続財産は、国庫に帰属されます。