相続で争われる部分

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相続担当の弁護士,鳥光(とりみつ)と申します。

 

相続というと,相続人が争うイメージをお持ちの方もたくさんいらっしゃるかもしれません。

 

では,具体的に相続のどのような場面で争いが発生するのでしょうか。

 

一般的には,遺産の分け方,つまり誰が,何を,どれだけ取得するかという部分で争われることが想定されると思います。

 

たしかに,この部分について争われることも多いです。

 

しかし,遺言がない場合は,法定相続分という法律で定められた拠り所がありますので,特別受益や寄与分が強く争われる場合でなければ,遺産の分け方についての話は割と進めやすいのです。

 

経験上,最も争われ,かつ時間も労力も要することが多い場面は,相続財産の内容の確定です。

 

相続財産の内容の確定は,遺産分割の前提となります。

 

相続財産に,何がどれだけ含まれるのかが確定していない限り,それを誰にどのように分けるかを話すことができないためです。

 

そして,相続財産の内容について,相続人間で争いが全くないというケースは非常に少ないです。

 

多くの場合,以下のような形で,相続財産の内容について争いが生じます。

 

・相続人の一人が,被相続人の財産の情報を頑なに明かさない

・被相続人の預貯金等の金額に納得がいかない(他の相続人が使い込んでいた疑いがある)

・生前,親が不動産を買ったと聞いたことがあるのに権利証が無く,誰かが隠している疑いがある,など

 

このような場合,相続財産の正確な調査をすることが必要となります。
(特に相続税の発生が考えられるケースでは,相続財産がわからないと申告と納税ができないという事態が生じます)

 

相続財産の調査の対象となるのは,ほとんどの場合,不動産と預貯金です。

 

調査は,簡単にできる場合から,かなり時間と労力を要する場合まで,さまざまなケースがあります。

 

弁護士として相続財産調査をするにあたっては,多くの場合,相続人であることを証明する資料として戸籍謄本類や法定相続情報の図を取り寄せることから始めます。

これがないと,行政機関や金融機関に情報を提供してもらうことができないためです。

 

不動産については,固定資産税の通知書の開示が受けられなくても,所在地がわかれば,固定資産評価証明や登記事項の入手は比較的容易にできます。

 

正確な所在がわからなくても,どの市町村にあるかがわかれば,少し時間と手間はかかりますが,調査は可能です。

 

預貯金については,通帳やキャッシュカードの情報を開示してもらえない場合,かなりの時間と手間がかかります。

 

手あたり次第に全ての金融機関を調査するのは現実的ではありません。

 

そこでまず,生前の親の話や,家にあったものなどの情報から,預貯金口座があったであろう金融機関のあたりを付けるところから始めなければなりません。

 

親の住所地の近くに支店がある金融機関なども調査の候補とすることが多いです。

 

その後は,ひたすら各金融機関に対し,預貯金口座の有無,残高証明(ここに口座情報も載ります),取引履歴の発行申請を行います。

 

郵送で受け付けてもらえる金融機関もありますが,そうでない場合には直接窓口まで出向く必要があります。

 

また,郵送で受け付けてもらえるとしても,遠方の金融機関でない限り,私は直接窓口まで行くことが多いです。

 

金融機関は人様のお金を扱う以上,調査の申請についてはとても厳格な審査をしますので,係員の方の面前で書類の内容や添付資料を確認してもらった方が手戻りリスクが少なくなるためです。

 

弊所は東京駅の八重洲側にあり,近辺には各種銀行等金融機関の本店,支店が集中しているため,窓口での問い合わせにも強みがあります。

 

また,弁護士を代理人として申請する場合には委任状が必要になりますが,この委任状についても記載内容を窓口で細かく確認しておけば,後に委任状を書き直すことになる可能性を減らすことができます。

 

預貯金等の調査は,金融機関によって手続きがかなり違いますので,ノウハウが必要となります。

相続放棄の判断基準

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東京近郊における相続に関する事案を中心に担当している,鳥光(とりみつ)と申します。

 

弁護士として相続関連のご相談を多数受ける中でも,相続放棄に関連する事案が増えています。

 

相続放棄は,一般的には,相続すると損をする場合になされることが多いです。

 

わかりやすい例では,亡くなった親御さんが預貯金も不動産も持っておらず,借金だけがあったという場合です。

特に東京近辺では,他の地域に比べ,ご自宅も賃貸であることがあるので,亡くなった方が不動産を所有していないというケースはままあります。

このような場合,相続してしまうと,何も財産が得られず,自分で借りたわけでもない借金だけを負わされてしまうので,放棄した方がよいということになります。

 

ところが,実際に相続放棄のご相談にいらっしゃる方の状況は少し違います。

 

親御さんの財産状況がほとんどわからない,というケースが一番多いのです。

 

疎遠になっていた親が亡くなったという通知が自治体などから入って,相続が起きたことを知ったような場合,そもそも親の財産のことはほとんどわかりません。

 

ただ,昔,親が多額のお金を借りていたらしいという話を聞いたということから,不安なので相続放棄をしてしまいたいというようなご相談が一番多いです。

 

相続に関する事案に共通して言えることですが,亡くなった方の財産を完全完璧に調べ上げることは非常に困難です。

 

それが疎遠になっていたり,財産に関する情報をほとんど教えていなかった親のことであればなおさらです。

 

本来的には,相続放棄をするかしないかの判断は,被相続人の財産を完全に調べ上げ,負債の方が大きいということがわかってから下すべきです。

 

しかし,相続放棄の申述は被相続人の死亡を知った日から3か月以内に行うのが原則であり,申述期限の延長も無制限に認められているわけではありません。

 

なにより,不安な状態を解消したいというのが,ご相談者の一番のご要望であることもあります。

 

そこで,実際にご相談を聞いてみて,被相続人が不動産などの財産を持っていた形跡がある(たとえば固定資産税の通知書があったなど)のであれば,時間の許す限り調べ,そうでなければ放棄を検討しましょうというお話をすることが多いです。