相続放棄の判断基準

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東京近郊における相続に関する事案を中心に担当している,鳥光(とりみつ)と申します。

 

弁護士として相続関連のご相談を多数受ける中でも,相続放棄に関連する事案が増えています。

 

相続放棄は,一般的には,相続すると損をする場合になされることが多いです。

 

わかりやすい例では,亡くなった親御さんが預貯金も不動産も持っておらず,借金だけがあったという場合です。

特に東京近辺では,他の地域に比べ,ご自宅も賃貸であることがあるので,亡くなった方が不動産を所有していないというケースはままあります。

このような場合,相続してしまうと,何も財産が得られず,自分で借りたわけでもない借金だけを負わされてしまうので,放棄した方がよいということになります。

 

ところが,実際に相続放棄のご相談にいらっしゃる方の状況は少し違います。

 

親御さんの財産状況がほとんどわからない,というケースが一番多いのです。

 

疎遠になっていた親が亡くなったという通知が自治体などから入って,相続が起きたことを知ったような場合,そもそも親の財産のことはほとんどわかりません。

 

ただ,昔,親が多額のお金を借りていたらしいという話を聞いたということから,不安なので相続放棄をしてしまいたいというようなご相談が一番多いです。

 

相続に関する事案に共通して言えることですが,亡くなった方の財産を完全完璧に調べ上げることは非常に困難です。

 

それが疎遠になっていたり,財産に関する情報をほとんど教えていなかった親のことであればなおさらです。

 

本来的には,相続放棄をするかしないかの判断は,被相続人の財産を完全に調べ上げ,負債の方が大きいということがわかってから下すべきです。

 

しかし,相続放棄の申述は被相続人の死亡を知った日から3か月以内に行うのが原則であり,申述期限の延長も無制限に認められているわけではありません。

 

なにより,不安な状態を解消したいというのが,ご相談者の一番のご要望であることもあります。

 

そこで,実際にご相談を聞いてみて,被相続人が不動産などの財産を持っていた形跡がある(たとえば固定資産税の通知書があったなど)のであれば,時間の許す限り調べ,そうでなければ放棄を検討しましょうというお話をすることが多いです。