9月に入りました。
徐々に暑さは和らいでいくと考えられるものの,まだまだ猛暑の日もあるかもしれませんので,熱中症対策は重要です。
被相続人の財産状況を理由に相続放棄を検討する際,相続財産を調査する必要があることがあります。
今回は,相続放棄シリーズ19回目,被相続人が個人で事業を営んでいた場合についてです。
法律上は,相続放棄は被相続人が自営業者であったか雇用されていたかは問題になりません。
もっとも,前提となる財産の調査は,前者の方が格段に労力を要する傾向にあります。
1 被相続人が個人事業主であった場合
法人の代表者ではなく,個人で自営業をされていた場合です。
業種や規模にもよりますが,財産状況が非常に複雑になる傾向にあります。
小売り業のように,在庫を有する業態の場合,多品種を扱っていると,在庫のカウントと評価額の計算だけでも膨大な作業になることがあります。
また,仕入先とお得意様がいくつもある場合,買掛金,売掛金のような金銭債権,金銭債務も多数存在します。
意外と盲点なのが,被相続人が医師であった場合です。
特に調剤も行っていた場合は,多品種の薬剤が存在することもあり,専門的な分野なので仕入先も区々だったりします。
税理士などが被相続人の顧問についていた場合は,会計書類の作成も委任を受けている場合が多いので,まずは顧問税理士の方に話をして,被相続人死亡時点での財産に関する資料を請求するところから始めます。
会計書類には,在庫の状況や,売掛金,買掛金のほか,手元現金や預貯金などの情報が載っているからです。
被相続人が自身で会計帳簿等を作成していた場合は,非常に困難になることがあります。
この場合は,被相続人の遺産整理を地道に行っていくほかありません。
2 被相続人が法人の代表者であり持分や株式を有していた場合
この場合は,相続人は,被相続人の会社の財産・負債を直接相続することはありません。
あくまでも会社の財産・負債は会社という法「人」に属しているためです。
代わりに,被相続人の持分・株式が相続財産となります。
持分・株式を評価する際には,法人の財産を調査する必要があり,この労力は被相続人が個人事業主であった場合と変わりません。
時折,代表者であった被相続人が,法人の連帯保証人になっているケースがあります。
このような場合,法人の負債が被相続人に降りかかってくることになりますので,法人の負債をしっかり調査する必要があります。
上記1,2いずれの場合であっても,しっかり調査を行うとなると非常に時間が掛かる可能性がありますので,予め相続放棄の期限の延期の手続を行っておくことが大切です。