一旦は緊急事態宣言が解除され,街には人並みも戻ってきました。
もっとも,また感染者が増えている地域もあり,油断は禁物であると感じております。
弁護士の鳥光です。
今回もご覧いただき,ありがとうございます。
相続放棄シリーズ13回目は,相続放棄の動向と対策についてです。
1 相続放棄は増えている
相続放棄は,平成25年には約17万件あり,平成30年には21万件を超えています。
単純計算では毎年8000件程度増えていることになります。
現場の感覚としても,相続に関するご相談の中で,相続放棄をご希望でいらっしゃる方の割合は増えています。
データと現場感覚の両面において,相続放棄の需要は増えているといえます。
完全に私見ですが,背景には次のような要因があるのではないかと思います。
・単に高齢化社会が進んだことにより,相続の発生件数が増え,そのなかに一定の割合で相続放棄をすべきケースが含まれれていることから,相続放棄件数が増えた。
・バブル期は順調であったが,その後の不況で一家離散し,音信不通となっていた親が負債を抱えたまま亡くなった。
・相続に対する意識が変化した(相続は,せねばならないという考えから,相続関係は断ち切っても良いという考えへ変化)。
2 相続放棄は身近になりつつあり,備えも必要
人が亡くなることで相続は発生します。
相続放棄は,一旦相続が生じたのちに,遡及的に相続人でなかったことにすることで,相続の効果を消滅させるものです。
つまり,本来的に相続放棄は例外的な措置です。
そのため,普段生活の中で見聞きすることは少なく,専門家以外の方向けの書籍等もあまりないので,リテラシーの向上がなされていません。
一方で,相続放棄を行うべきケースは確実に増えていることから,かつてに比べて相続放棄は身近になっています。
相続放棄シリーズにて紹介させていただいております通り,相続放棄には気を付けなければならない点がたくさんあります。
裁判所に提出する相続放棄申述書を書くだけであれば,それほど大変ではありません。
しかし,相続放棄の期限の起算日の考え方や,法定単純承認事由に該当する行為(相続放棄をするにあたり,やってはならない行為),債権者への対応など,知らないと全く対応できません。
特に期限と法定単純承認事由に該当する行為については,手遅れになってしまうと専門家であってもリカバリーが不可能になります。
そのため,相続放棄は自分がすることもあり得るという認識でもって,概要レベルでもよいので知識の備えを持っておくことが重要です。