【相続放棄シリーズ】1 相続放棄にはご法度がある

3月に入り,暖かい日が増えてきました。

 

もっとも,この時期は例年花粉症に悩まされる時期であり,しかも今年はコロナウィルスの問題もあるので,外出には気を付けたいところです。

 

東京駅前にある弁護士法人心にて,相続案件を扱っている,鳥光でございます。

 

相続放棄に関する相談を受けることが非常に増えたことから,今後ブログにて相続放棄に関する情報を発信していこうと考えております。

 

今回は,第1弾として,相続放棄を検討している段階において,行ってはならないことをまとめます。

 

1 原則

相続財産の処分をしてはいけません。

これを行うと,相続放棄が認められなくなります(法定単純承認事由)。

 

2 処分って何?

もっとも,条文には「処分」としか書いておらず,具体的に何が処分にあたるかについては,未だ明確になっていません。

 

不動産の名義変更をして売り払ったり,預貯金の払い戻しを受けて自分のために費消することは,処分の典型にあたりますので,絶対に行ってはならないということはわかります。

 

しかし,(普通に考えればゴミのような)残置物を処分したり,亡くなった人の携帯電話の解約をしたり,公的な支給金を取得したり,被相続人の宛ての請求の支払い等についてはいかがでしょうか。

 

これらについては,通説,実務上は法定単純承認事由とならないケースもありますが,明確に条文や判例において認められているわけではないので,非常に悩ましいと言わざるを得ません。

 

ネット上には様々な情報が存在しています。

そのほとんどは正しい情報であると考えられますが,抽象的なものであるため,実際にご自身が行おうとしている行為が本当に法定単純承認事由に該当しないか否かは,個別具体的に当てはめを行って判断しなければならず,簡単には判断できないのです。

 

これは私見ですが,相続放棄はここ数年で急激に増えていることもあり,相続放棄制度に付随する上記問題について,法整備が追い付いていないのではないかと感じることもあります。

 

3 では,どうするか?

相続放棄の可能性があるならば,とにかく,余分なことをしないという意識を持つことが一番重要です。

極論すれば,被相続人がお亡くなりになったことを知った際,とりあえず何もしないのが一番安全です。

 

さらに言えば,被相続人がご存命のうちから,相続放棄制度について理解し,うっかり法定単純承認に該当しそうな行為を行ってしまわないように予備知識を入れておくことが大切です。

 

音信不通で疎遠な親族がいる場合にも同じことが言えます。

当該親族が亡くなると,突然相続人に対して借金や滞納家賃等の請求が来ることもあります。

そのような時に,相続放棄の知識がないと,焦って請求に応じてしまい,後戻りが困難になる可能性もあります。

 

しかし,現実には,相続放棄のご相談をいただいた時点において,すでに法定単純承認事由に該当するかもしれない行為を行ってしまっているケースの方が多いです。

 

そのような場合,事情を詳しくお聞かせいただき,法律構成の仕方によっては,相続放棄が認められるようにできる可能性もありますので,ぜひご相談ください。

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