相続財産管理人日誌7

今回は相続財産管理人日誌、第7回目です。

 

相続財産管理人弁護士としての体験談を紹介していきます。

 

前回、相続財産管理人用の口座開設の際に必要となる具体的な資料等について述べました。

 

今回は、口座開設の際に一緒に行ってしまうとよい手続きについて説明します。

 

相続財産管理人に選任された際、不動産登記や相続財産管理人口座開設と並行して、相続財産の調査を行います。

 
これは、相続財産管理人の業務の一つとして、相続財産目録を作成の上、裁判所へ提出する必要があるためです。

 
相続財産目録の提出時期は、通常、相続財産管理人選任の日から2か月後です。

 
相続財産調査には時間がかかることもあるので、かなり急ぐ必要があります。

 
なお、2か月では調査を終えられない事情がある場合、その旨を裁判所へ説明し、一旦は審判から2か月後の時点で判明している財産の報告をします。

 

申立人提供資料により、金融資産の具体的な情報が揃っている場合には、金融機関を訪れた際、その時点における残高を教えてもらうと、すぐに財産目録へ反映することができます。

 

申立人が元相続人や親族以外の者である場合など、申立人の金融資産に関する情報がない場合は、一旦、口座開設窓口において、被相続人の口座が存在していないか、質問してみます(銀行側から教えてくれることもあります)。

 
メガバンクなどの場合、被相続人が口座を持っていることも多いです。

 
その際、口座番号、支店名、残高を教えてもらうと、財産目録を早めに作ることができます。

 
私は、相続財産管理人口座開設をした銀行に、たまたま被相続人の口座があることが判明し、残高もそれなりにあることがわかったため、その後の管理費用の見通しを早期に立てることができました。

相続財産管理人日誌6

今回も本ブログをご覧いただき、誠にありがとうございます。

相続財産管理人弁護士の日誌、第6回目です。

 

前回、相続財産管理人に選任された後、相続財産管理人用の銀行口座を作成するというお話をしました。

 

その際に、通常金融機関から求められる資料につき、次の通り説明します。

 

1 相続財産管理人選任審判書原本
被相続人が死亡したこと、被相続人に相続人がいないこと、自身が裁判所から相続財産管理人として選任されたことを金融機関に示すために必要です。

 
相続財産管理人口座作成の際の書類に記載する住所や名称も、通常は審判書に書かれた通りにします。

 
なお、金融機関によっては、戸籍謄本類の提出を求めてくることがあります。

 
しかし、本来的には提出の必要はないと考えられます。

 
理由は、相続財産管理人選任申立ての段階で、すでに被相続人に関するすべての戸籍謄本類が裁判所に提出され、裁判所が審査をしたうえで、相続人が不在であることが確認されているためです。

 
そして、このプロセスを経なければ相続財産管理人の審判書は発行されませんので、審判書を以て、戸籍謄本類のチェックは不要であると説明がつきます。

 
もしも、それでも金融機関が応じない場合は、裁判所へ相談します。

 
それでも難しい場合、申立人から戸籍謄本類の写しが提供してもらえればそれで対応し、提供してもらえない場合の最終手段として、改めて戸籍謄本類を収集します。

 

2 身分証明書(弁護士会発行のカードのほか、運転免許証などが求められることもあります)
自身が、審判書に記載された相続財産管理人と相違ないことを証明するために用います。

 
通常、顔写真付きの身分証明書を用います。

 

3 裁判所が発行する印鑑証明書
家庭裁判所に申請することで、相続財産管理人用の印鑑証明書を発行してくれます。職印でも登録できます。

 

4 印鑑証明書に登録した印鑑

金融機関によって、当日口座が開設されて通帳等が発行されるところと、後日口座を開設し通帳を引き渡すところがあります。

 
スケジュール繰りには注意が必要です。

相続財産管理人日誌5

今回は相続財産管理人日誌、第5回目です。

 

相続財産管理人弁護士として体験したことを、秘密の漏洩にならない範囲で紹介していきます。

 

 

相続財産管理人は、選任されたらできるだけ早く、相続財産管理人用の銀行口座を作成します。

 

これは、被相続人名義の預金を移行して管理したり、不動産等を売却した際の売却金を保管する目的で作成します。

 

名義は通常「亡(被相続人の名前)相続財産管理人(管理人の名前)」として作成します。

 

この口座で被相続人に関する金銭を一元管理します。

 

相続財産の管理に必要な金銭を、この口座から引き出して使用することもできます(場合によっては裁判所の許可が要ります)。

 

逆に、仮に自分の事業用の口座や、個人の口座を使用してしまうと、お金の出入りが複雑になり、管理できなくなる可能性があります。

 

場合によっては横領にもなりかねないので、確実に相続財産管理人専用の口座を作成し、一元管理する必要があります。

 

相続財産管理人口座の開設は、金融機関の方から見ると、かなり特殊な手続きです。

 

感覚的には破産管財人口座よりも少ないと思いますので、もはやイレギュラー対応の領域になってくるとも思えます。

 

これに加え、コロナウィルスの影響により、窓口が予約制になっていたりなど、相続財産管理人口座開設にはとても時間を要する可能性がありますので、早めに手続きに着手した方が良いです。

相続財産管理人日誌4

今日もブログをご覧いただき、誠にありがとうございます。

 

弁護士の鳥光でございます。

 

今回は相続財産管理人日誌第4回目となります。

 

 

相続財産管理人が選任されると、裁判所から、相続財産管理人が選任された旨の官報公告がなされます。

 

これによって、被相続人の相続財産について、相続財産管理人が就いたことが、世間一般の方が知ることができるようになります。

 

ところで、相続財産管理人に選任されると、不動産業者の方からお声がかかるようになります。 

 

理由は次の通りです。

 

相続財産管理人の最終目的は、相続財産の清算です。

 

特に、不動産は、売却換価することになります。

 

相続債務が存在し、預貯金等で返済ができない場合は、不動産を売却した金銭でもって弁済を行います。

 

不動産業者の方としては、この売却換価処分について、仲介を行うことにメリットがあります。

 

不動産の売買において、媒介をすることで、手数料が発生します。

 

媒介をするためには、買い手を探したり、境界問題の有無や法令上の制限を調査したり、売買契約書を作ったり、重要事項説明書の作成及び面前での説明をしたりなど、とても多くのことを行わなければなりません。

 

売主や買主の代わりにこれらをやってもらうのですから、正当な対価としての手数料を受け取ることができます。

 

相続財産管理人は、相続人または特別縁故者が現れた場合及び不動産に買い手がつかなかった場合を除き、通常であれば相続財産に含まれる不動産を確実に売却します。

 

そのため、不動産業者の方から見れば、Win-Winの関係になれます。

 

相続財産管理人の業務を行う弁護士としては、普段から相談しやすい不動産業者の方がいると、とても心強いところです。

相続財産管理人日誌3

本ブログをご覧いただき、ありがとうございます。

 

相続財産管理人日誌の、第3回目です。

 

 

相続財産管理人に選任されると、初期の段階で申立人との面談を行うことが多いです。

 

申立人本人が申立てをしている場合は、(当然ですが)申立人とお話をします。

 

申立人に代理人がいる場合、代理人と一緒にお話をするということもあります。

 

私が相続財産管理人選任申立ての代理人をしたときは、申立人本人と一緒に相続財産管理人のもとを訪れてお話をしました。

 

コロナウィルスのこともあるので、zoomなどのリモート会議システムを使って面談をするというケースも増えているようです。

 

被相続人の財産に関する資料があれば、面談の際に申立人から相続財産管理人へ引き渡すことも多いです。

 

主なものとしては、自宅・自動車の鍵や、預貯金通帳、現金などがあります。

 

これらを引き渡してもらえると、鍵の開錠作業や、金融機関に対する預貯金照会をせずに済むことがあり、相続財産管理人としてはとても助かります。

 

面談後、自宅土地建物がある場合で、申立人が当該土地建物に詳しい(申立人が被相続人の子であり、同居していた時期があるなど)ときは、申立人と一緒に自宅土地建物へ行くこともあります。

相続財産管理人日誌2

相続財産管理人日誌第2回目です。

 

本ブログをご覧いただき、ありがとうございます。

 

相続財産管理人弁護士としての体験談を、秘密の漏洩にならない範囲で記していきます。

 

 

相続財産管理人に選任され、相続不動産の登記を行うことと並行して、相続財産管理人選任申立てを行った申立人との面談により、詳しい事情を伺いました。

 

今回は、やはり相続財産に関する情報はほとんど得られていないとのことでした。

 

これは特に申立人に非があるのではなく、類型上仕方のないことでした。

 

一方、申立人は立場上、相続財産以外については、様々な資料を取得、提供しやすい方でしたので、申立書の写し一式や、公的な書類を提供してもらうことができました。

 

実は、これは後ほどとても重要な意味を持ってきます。

 

特に、申立書一式に含まれる戸籍謄本類の写しは、被相続人の預貯金の解約・名義変更、金融資産の売却換価の際、必要となるケースがあります。

 
(相続財産管理人選任審判書を示すだけでよい場合が多いですが、保険会社等は、相続人が不存在であることを証明するのに足りる戸籍謄本類一式の写しを要求することがあります。)

 

もしも、改めて戸籍謄本類一式を集めるとなると、膨大な手間と費用がかかります。

 

相続財産管理人選任申立てのために必要な戸籍謄本類は、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍、すべての相続人の死亡記載戸籍(または相続放棄をしたことを示す書類)のほか、被相続人の父母の出生から死亡までの連続した戸籍です。

 

これらを改めて収集するのは、非常に大変です。

 

相続財産の換価処分にも大きな影響を与えます。

 

そのため、申立人から、相続財産管理人選任申立の際の書類一式をいただくことは、とても大切なのです。

相続財産管理人日誌1

今日もブログをご覧いただき、誠にありがとうございます。

 

私は弁護士業務の中でも、相続放棄にとても注力しております。

 

そんな中、先日相続財産管理人に選任され、業務を進めております。

 

相続放棄シリーズのスピンオフとして、相続財産管理人業務のことについても、これから記していこうと思います。

 

 

相続財産管理人に選任されたのは、少し前です。

 

家庭裁判所からご連絡をいただき、引き受けさせていただく旨の回答をしました。

 

その後、まず裁判所へ足を運び、事案概要の説明を受けます。

 

同時に、記録の閲覧も行います。

 

あまり具体的には記せませんが、今回は相続人全員が相続放棄をしたケースではなく、当初から相続人が不存在であるケースでした。

 

相続財産に関する情報が少ない類型ですので、相続財産調査が大きな課題になることが予想されました。

 

相続財産の中に自宅土地建物が存在していましたので、すぐに現地に行きました。

 

老朽化が進んでいる場合は補強等が必要になりますし、占有者が存在する可能性もあります。

 

実務上の問題として、害虫や害獣が住み着いていることもあり、業務を円滑に進めるためには、これらの駆除も必要になることがあります。
(実際、蜂に襲われました。これについては、別の記事で紹介します。)

 

一見したところでは、特に問題はなさそうでした。

 

特段傷んでいるところもなく、雑草等も少ない状態でした。

 

家庭裁判所より、相続財産管理人選任審判書を受け取ったら、すぐに登記を行います。

 

これは、亡くなった方の名義であった土地建物が、相続人不存在によって相続財産法人になったことを示すとともに、その管理人が誰であるかを公に示すことを目的とします。

 

これを行っておかないと、後日土地建物を売却換価することもできなくなります。

 

相続財産である土地建物を管轄する法務局(支局)へ行き、登記申請書と審判書等を用い、登記手続きを行います。

 

一般的な相続登記に比べると、必要な書類は少なく、かなり簡単に手続きを完了することができます。

 

もっとも、被相続人の登記上の住所の名称が変わっていた(物理的な住所は同じ)ため、市役所で住所表記が変更された証明書も取得して提出する必要がありました。

 

これにより、約2週間で登記が完了したので、変更後の登記(全部事項証明書)を取得し、裁判所へ報告しました。